「それ、本当にやる意味ある？」と部門長に言われた社内改革、地方の中小企業がそれでもデジタル化に取り組む理由

関根俊直さん（写真・中央）
営業技術部門 営業課 課長 兼 管理部門 人事課 課長

菅野 渉さん（写真・右）
製造部門 部門長

鈴木さん（仮名）
管理部門 業務課 課長　

埼玉の素材メーカーがITツールを入れる

関根俊直さん（以下、関根）： セキネシール工業は私の祖父が創業した会社です。江戸時代末期に和紙の紙漉きとして創業した事業が、戦後には工業用途向けの素材メーカーとしてニーズに応じた素材を開発・生産してきました。現在の主力製品は、自動車などエンジン部分の機密性を高める「ガスケット材」です。私は2020年に家業に戻り、現在、第三創業期と位置付けて社内改革を進めております。

──皆さんがそれぞれ携わっている業務は？

関根： 私は営業と人事業務のかたわら2020年から社内のデジタル化を進めています。この1年半ほどで導入したITツールはSlack、Googleカレンダー、ジョブカンワークフロー、ジョブカン勤怠など。主に社内インフラを整えるツールです。

菅野渉さん（以下、菅野）： 私は2021年1月に営業の部門長から製造部門長に就任し、現在は製造含め工場全体を統括しています。社内のデジタル化に関しても関根さんと一緒に進めています。

鈴木さん（仮名）（以下、鈴木）： 管理部門で会社全体の総務・経理を担当しています。私は2020年に転職してきたばかりで、前職はIT系企業で大型ホストコンピュータの設計、開発・営業に長く携わっていました。セキネシールには地元の縁で入社し、前職でも数字は扱っていましたが総務や経理を担当するのは初めてなので一から勉強中です。

──デジタル化に着手しようと考えた経緯を教えてください。

関根： セキネシール工業は埼玉県小川町内に工場が3拠点あり、社員は本社と工場合わせて54人です。

前職はIT企業に勤務していたので、私にとってITツールを使うのは当たり前と感じていましたが……。家業に入社してまずワークスタイルに大きなギャップを感じました。申請書類は紙で提出するのが当たり前ですし、社員のスケジュールは各自手帳で管理しているためミーティングの日程調整をするにも一人一人に電話して予定を聞かないといけないという……。

自分の経験を活かして会社に貢献できることはないかと考え、小さなことから一つずつ変えていきました。例えば、支給PCをデスクトップからノートPCに変えるとか、社内のモニタをHDMIケーブルで繋いでプロジェクターとして使えるようにしたりするなど地道な活動です（笑）。

さらに全社横断的にデジタル化を推進するため、2020年8月に現在の社長に提案して「IT推進室」を立ち上げました。社内の各部署から7人のメンバーに兼務で加わってもらい、今年からは更なる加速のため「IT推進部門」に名称変更し、2021年8月からは私が部門長に任命されました。現在は「ITに作業を任せて、ヒトにはクリエイティブな仕事を」というテーマで社内に発信をしております。

菅野： 私もIT推進部門のメンバーの一人です。各自「ワークフロー」「勤怠」「IoT」のようにテーマを設定して推進していくのですが、正直私自身、そこまで乗り気ではなく「それ本当にやる意味あるの？」と関根さんに指摘したこともあります。「そんなにやりたいなら、まず俺を本気にさせてみろ」と返したこともありましたね（笑）。

関根： IT推進室の立ち上げ含め最初は半ば強引さもあったかもしれません。でも、デジタルの便利さを実感してくれれば改革は進むのではと考えました。

鈴木： 私も、入社してから前職とのギャップは感じていました。管理部門としてやるしかないなと。

補助金申請に間に合わせる形で導入