連載:第16回 慣習に囚われない 改革の舞台裏
経営と社員のギャップはこう埋める。老舗の飛躍を支える人事施策
1965年にランドセル作りから始まった革製品の老舗、株式会社土屋鞄製造所。職人の確かな仕事と高品質を土台にしたブランディングや情報発信で昨今注目を集めていますが、その内部には組織拡大に伴うマネジメントの課題がありました。それは「経営陣と社員の意識のギャップ」。その渦中に飛び込み、数々の人事施策を実行することで社内の意識統一を図り、生産性の向上につながる業務改善を推進し続ける同社執行役員・人事本部⻑の三木芳夫さんに話を聞きました。
株式会社土屋鞄製造所
執行役員/人事本部⻑ 三木 芳夫 さん
2019年、株式会社ハリズリーおよび土屋鞄製造所の人事管掌執行役員として入社。土屋鞄製造所では2020年に人事本部を立ち上げ、現在は販売とアフターサポート部門の管掌役員となり、該当部門であるコミュニケーション本部長も兼任する。
企業成長にマネジメントが追い付かない。社長の言葉で入社を決意
――2019年に人事管掌執行役員として土屋鞄に入社されました。
三木芳夫さん(以下、三木): 土屋鞄製造所(以下、土屋鞄)の持ち株会社であるハリズリーの取締役が人事・組織作りで困っているということで、共通の友人を介して私に声がかかったのがきっかけでした。会社・組織が急成長する中で、社内の多岐にわたる職種に対してマネジメントが追い付いていないということでした。
――当時、人事業務はどのような状況だったのでしょうか?
三木: 管理部門の中に労務課はあったのですが、組織・人事戦略を考える部門はありませんでした。人事系のコンサル会社が入ってはいましたが、会社規模やその後のプロジェクトを考えれば、インハウスで人事専門の機能がないのはまずいとはっきりわかる、アンバランスな状態でしたね。
――そこに飛び込むことになった決め手は何でしょうか?
三木:社長と直接お話したこと でしょうか。約60年の歴史を持つ土屋鞄を「日本を代表するブランドにする」と。一方、持ち株会社のハリズリーでは「日本のものづくり会社を支援する」と。立ち位置が異なる2つの会社があることで、他社とは違う特別な存在になれると感じました。
そして何より社長の「気心知れた仲間と価値ある仕事を」という信念。これが 私の価値観と同じだった んです。私が新卒で入社した会社も同じような価値観でした。その時の仕事は本当に楽しかった。自分が40代に差し掛かるタイミングで、その気持ちをもう一度味わいたいと思いました。
また人事という立場で見ると、関与できそうな「余白」がたくさんあったことも魅力でした。職人がたくさんいて、一気通貫で販売まで行っている。クリエイティブもインハウスでやっている。本当に様々な職種・部署があって、それらをきちんと繋いで連携させる仕組みが整えば、さらに発展できそうだと感じました。
「外科手術」ばかりでは、社員は疲弊する
――入社後、何から手をつけたのでしょう?
三木: まずは、社員の声を聞きました。というのも、一つの仮説があったからです。
経営陣は当時も今も「いい会社にしたい」と思っています。ただ当時は、その方法論が「組織改編」や「外から人を連れて来る」といった、いわゆる「外科手術」が多くなっていました。これは社員の立場からすると「いろいろと手間が増える」「上司が変わる」とも映ります。結果、 社員が疲弊しているのではないか? と考えていました。
同時に、パルスサーベイ(従業員の満足度調査)も導入しました。そして人事情報、売上に対する人員構成比、人件費、残業時間など、人事に関わる様々な数字をすぐに見られるよう整えました。このあたりも、それ以前は手をつけられていませんでした。
――どんなことが見えてきたのでしょうか?
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