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連載:第29回 慣習に囚われない 改革の舞台裏

全社員の反対、涙でも貫いた経営者の覚悟。従業員の意識を変えた、たったひとつの“指針”

BizHint 編集部 2024年1月18日(木)掲載
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現状、経営は安定している。しかしその影響か保守的な社員が多く、将来を考えて新規事業に取り組もうとも、なかなかうまくいかない…。そんな悩みを抱えている経営者の方はいらっしゃるのではないでしょうか。老舗玩具メーカーであるピープル株式会社もその一社でした。2019年に代表に就任した桐渕真人さんは、会社の未来のため、同社の人気ロングセラー商品「ぽぽちゃん」の生産終了という選択を行います。主力商品を「やめる」という決断をしてまで、社内の変革に取り組む、経営者の覚悟や思いについて伺いました。

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ピープル株式会社
取締役兼代表執行役 桐渕 真人さん

1979年東京都生まれ。2005年公立はこだて未来大学システム情報科学部を卒業後、家業である老舗玩具メーカー、ピープル株式会社に入社。2016年、自転車事業部長および執行役に就任。2017年、取締役執行役就任。2019年より現職。売上高は37億円(2020年1月期)から74億円(2023年1月期)に。米国などの海外販売も好調。社員数は53名(2023年2月時点)。


27年間愛され続けた商品を“やめる”。社員全員に反対されて…

――貴社は、誰もが知るロングセラー商品「ぽぽちゃん」の生産終了で大きな話題となりました。

桐渕真人さん(以下、桐渕): はい、1996年に発売した抱き人形「たんぽぽのぽぽちゃん」の生産終了を決めました。これまでの27年間で、約580万人以上の子どもたちに親しまれたロングセラー商品です。

――一定の売上を占めていたロングセラー商品の事業をなぜ「やめた」のでしょうか?

桐渕: それが、 会社が生き残るために必要だと判断したから です。

そもそも、僕が入社したぐらいの時から、なんとなく“停滞感”のようなものをずっと感じていて。また、会社全体の売上は伸びていたものの、利益率が下がっていくという、負のスパイラルにも陥っていました。

おもちゃ業界は「1年交代」と言っても過言ではないほど、入れ替わりが激しいんですね。そんな中、当社はありがたいことにロングセラー商品をたくさん持っていました。一見安定した経営ができるように思えますが、逆に見ると競合品がどんどん生まれるということ。特に巨大な力を持っている大手企業と戦うのは、体力的にも厳しい。徐々に「価格競争」に陥ってしまい、利益率は悪化していきました。価格を下げると売れるので忙しくなるけれど、成果が出ないという状況が続き「いずれ、このビジネスモデルは駄目になる…」と感じていました。

当社は創業時から、「業界に新しい風を吹き込む」を理念として掲げ、成長してきたという歴史があります。そこで2019年、 僕が代表に就任したタイミングで、「新商品を生み出すこと」を経営方針として発信しました。

しかし、そこからの3年間、新商品はほとんど生まれませんでした。

そこで気づいたんです。

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