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連載:第26回 慣習に囚われない 改革の舞台裏

「どうせ潰れる、お前がとどめを刺す勢いで」の檄で目が覚めた。ダメ水族館をV字回復させた「7つの当たり前」

BizHint 編集部 2023年8月29日(火)掲載
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客がまったく入らず「日本一ショボい水族館」と嘲笑され閉館も検討されていた愛知県蒲郡市の竹島水族館。「お客様がいないほうがいい」「人間より魚と接していたい」などの飼育員の潜在意識を逆手にとった組織づくりが奏功しV字回復につながりました。主導したのは現館長の小林龍二さん。「どうせ潰れるんだから、とどめを刺す勢いで」という檄で始まった経営改革と、それを支えた右腕、そして飼育員の意識改革について聞きました。

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蒲郡市竹島水族館
館長 小林 龍二 さん

1981年蒲郡市生まれ。北里大学を卒業後、Uターン就職で竹島水族館の飼育員に。市営から民間委託に移行した2015年に運営を引き継ぎ、館長に就任。過去最低だった入場者数は12万人から約47万人に。人間環境大学客員教授、専門学校ルネサンスペットアカデミー講師。主な著書に『竹島水族館の本』(風媒社)、『へんなおさかな竹島水族館の魚歴書』(あさ出版)がある。


飼育員は「お客様がいないほうがうれしい」。上層部の意向が絶対の組織

――今では「行列のできる水族館」となっていますが、以前の水族館はどのような状況だったのでしょうか?

小林龍二さん(以下、小林): まず、お客様はまったくいませんでしたね。いたとしても、外回りのサラリーマンが昼寝をしていたり…。

飼育員は普通に魚の世話をしていたのですが、水槽の掃除や魚の移動にあたっては、むしろお客様がいないほうがやりやすいんですよね。だから 「お客様がいないほうがうれしい」という空気すらありました。

また、水槽の手入れを楽にすることが先に来て、水槽内にある岩などの装飾を取り払ってしまったり…。「自分が魚の世話、水槽の手入れをしやすいこと」が最優先。 市営で、そして赤字でもずっと続いてきたので、危機感のようなものはありませんでした。

――飼育員の方は、成功している水族館を参考にされたりはしなかったのでしょうか?

小林: いろいろな水族館を見て回っていましたし、もちろん知っていました。

でもそこで抱く思いは「羨ましいな」「こんなふうにしなきゃいけないな」というのが2~3割ぐらい。あとの7~8割は「うちとは規模も財力も違う」「どうしようもない。考えるだけムダ」という、諦めや開き直りのほうが大きかったですね。

――小林さんは新卒で入館されましたが、そのような状況をどう見ていたのでしょうか?

小林: 「これはおかしい」という問題意識を持つ一方、個人としては好きな魚を飼って給料ももらえるから、まあこれでいいのかな…っていうのが半々でした。

ヒエラルキーが強い組織で、若手にとって上層部の言うことは絶対でしたし、自分が組織についてどうこう思っても、何も変わらない。

私を含め、水族館の飼育員はみんな魚が大好きで、魚を飼いたくて水族館の飼育員になるんです。 組織や人間関係の難しいことを考えるより、「今、魚に向き合っていられる幸せ」を考えると、それで納得できてしまうんですよね。

中堅クラスの人たちも「なんとかしなきゃ」とは思っていたようでした。しかし小さな組織でしたし、 上層部に意見すれば自身にダイレクトに跳ね返ってくる…結局は、何も変わりませんでした。

もちろん、竹島水族館の状況を憂う気持ちはあるのです。でも、何もできない…。

旭山動物園に足を運んだ時のことはよく覚えています。本当に羨ましくて、そして悔しくて、涙を流してしまいました。翌日、竹島水族館に来て現実に戻った時の無常感は忘れられません…。 (なんなんだ、ここは…)と。いっそ、潰れてしまったほうがいいんじゃないか? とさえ思いました。

「ダメな部分とその改善案」を出すほど、マイナス思考になっていく

――市営で赤字、「つぶれたほうがいい」とまで議論され民間委託に。小林さんが責任者になりましたが、何を思い、どこから手を付けていったのでしょう?

小林: 最初は心機一転、「お客様でぎゅうぎゅうの満員にしてやろう!」そんなことを漠然と思っていましたね。

そうしてまず「何がダメなのか」を全員で洗い出しました。ダメな部分を一つずつ改善していけば、絶対に良くなるはずですので。

しかし竹島水族館で…この手法は失敗でした。 むしろ悪い方向に進んでしまいました。

――なぜでしょうか?

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