連載:第17回 慣習に囚われない 改革の舞台裏
創業50年を前に初の赤字、「オワコン」と言われるも原因不明。再建を果たした新社長、社員と組織への接し方
長年の安定した経営状況の中で、組織と社員の危機感が薄れてしまう。自動車部品の製造を手掛ける東和組立株式会社でもそうした状態が蔓延していました。そして創業50周年を前に、初の赤字。関係者に話を聞くも「赤字の原因はわからない」、顧客ヒアリングの結果は最悪…。赤字を機に着任した林 佳寿彦さん(現・取締役社長)は、いかにして再建を進めていったのでしょうか? そのプロセスについて話を聞きました。
東和組立株式会社
取締役社長 林 佳寿彦さん
東京出身、美術大学卒業後、オフィス環境研究所に入所。その後妻の父親の経営する東和製作所に入社、常務として営業・企画・技術などを手掛け、新規製品開発や新工場企画、顧客深耕を行う。2017年子会社の東和組立に副社長として出向し、2019年取締役社長就任。
関係者に話を聞くも、赤字の原因は「わからない」
――社長就任の経緯や当時の状況について教えてください。
林 佳寿彦さん(以下、林): もともと私は、妻の父が経営する東和製作所に勤務していました。東和製作所は当社の親会社にあたるのですが、私は2017年に当社の副社長という形で出向し、2019年に社長に就任しました。
東和組立の創業は1969年。それから約半世紀、一度も赤字はなかったのですが、 創業50周年を直前に控えた2016年に初めての赤字に転落 しました。私に求められていたのは、まさにその建て直しでした。
――赤字に転落した原因は何だったのでしょうか?
林: 後々いろいろと見えてくるのですが、当初は何が悪いのか?どこに原因があるのか?…まったくわかりませんでした。着任後、いろいろな関係者に聞いてみても 「はっきりとはわからない…」 と。
――そういった状況で何から手を付けられたのでしょう?
林: まず行ったのは、何より数字の分析です。3ヵ月ほどかけて、社内の様々な数字をかき集め、書類の山を作りながら一つ一つ調べていきました。結果として見えてきたのは、 ざっくり言えば「売上が下がったのに、経費が減っていなかったこと」。赤字に転落するのは当然 でした。
しかしより重要なことは、 「なぜそんなことが起こる組織・体制だったのか?」 ということです。これを探るために、主要社員やマネージャー陣との対話、意見交換を徹底的に進めました。社内アンケートも4~5回やりましたね。そしてもちろん、お客様にも話を伺いました。
徹底した傾聴。社員が話をしてくれるまでに3ヵ月
――まず、社内での意見交換の進め方について教えてください。
林: 私はそれまでも同じ敷地内で働いていましたので、もしかしたら私のことを見たことがある社員もあったかもしれません。しかし基本的には、私がどんな人間か社員は知らないわけです。しかも、(自分で言うのもあれですが…)いわゆる強面(笑)ですので、社員としても疑心暗鬼な所はあったと思います。
ですので、まずは一人ひとりと面談の時間を持ち、私の考えを話しながら、「困っていることはありませんか?」と声をかけていきました。とはいえ、最初から心を開いて話してくれるはずもありません。基本的には、他愛もない話の積み重ねでしたね。
そうした時間を、多くの社員と、何度も重ねるうちに、少しずついろいろな話をしてくれるようになりました。赤字につながる要因の心当たり、会社に言いづらかったこと、さらには会社への不満など。生々しい話もしてくれる社員も出てきました。こうした関係を築くのに3ヵ月ほどかかったと思います。 その間、ずっと「聞く」に徹しました。
――相手に「話してもらう」のにも時間がかかるのですね。
林: 私の考え方のベースにスティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』があります。その中にもあるのですが、「相手が何を考えているか徹底的に傾聴し、共感を示す」ことが大事だと考えています。
その上で、社員全員が各者の違い・多様性を認め、互いをリスペクトし、その違いを生かして相乗効果を生み続けられる…。そんな組織に変えていきたいと考えていました。私自身が社員の話をしっかり聞くのは、そのための最初の一歩でもありました。
聞いた話は自分でレポートにまとめる。様々な意見を多角的に理解する。
――社員との意見交換を進める中で、気を付けていらっしゃったことはありますか?
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