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連載:第13回 慣習に囚われない 改革の舞台裏

きっかけは外部の血。ミシュラン掲載ホテルを旧態依然の旅館から生み出した社内改革

BizHint 編集部 2020年9月9日(水)掲載
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コロナ禍で多くの宿泊業者が痛手を受ける中、社員の雇用を第一とし、アフターコロナへの一手を講じるホテルがあります。明治32年創業の老舗、株式会社龍名館です。旧態依然とした旅館から脱し、いまではミシュランガイドに掲載されるホテルを運営するまでになった同社。背景には、「外部スタッフ」「大学新卒採用」という新しい血の導入がありました。現在はIT活用による生産性向上、新業態によるブランディングなど、アフターコロナに向けて着々と改革を推進。その背景について、専務取締役の濱田裕章さんに話を聞きました。

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株式会社龍名館
専務取締役 濱田 裕章 さん

1982年生まれ。東京都出身。成蹊大学を卒業後、生命保険会社に勤務。東京駅前にオープンの「ホテル龍名館東京」の開業準備のため08年に家業の龍名館に入社。ホテルフロント勤務と合わせて、WEBマーケティングや広報活動に携わりながら、現在の会社組織の土壌をつくる。その後、「ホテル龍名館お茶の水本店」「レストラン1899お茶の水」「ホテル1899東京」「チャヤ1899東京」などの開業にも携わる。4年間のホテル勤務を経て、17年4月より現職。


会社全体に変化をもたらしたのは、本店ではなかった

――2009年の東京駅前のホテルのリニューアルから、会社全体が大きく変わっていっているように見えます。

濱田裕章さん(以下、濱田): はい。そこは当社のターニングポイントになりましたね。それ以前は、本店含め旧態依然とした「旅館」と呼ばれる形態でしたが、東京駅前の店舗を「ホテル龍名館東京」(以下東京店)として刷新したのです。狙いは会社全体の変化。この店舗が成功したこともあり、その後、会社全体の社風や文化、施策が変わっていく大きな転機にもなったと思います。

中でも後々、影響が大きかったと思うのは、東京店のために大学新卒の社員を10名ほど採用したこと です。それまでまとまった人数の大学新卒は採用していませんでしたので、当時の当社にとっては革命的な出来事でした。東京店のスタッフ20〜30人のうち、過去の龍名館を知っているのは2〜3人ほどで、まっさらな状態でリスタートしたのです。


龍名館のターニングポイントとなった「ホテル龍名館東京」。ここから全社的な改革が始まった

――大学新卒を採用したのはなぜですか?

濱田: 当時、社長含めた役員陣がリニューアル後のホテルの青写真を描くためにCG図を眺めていたとき 「既存の社員がそこに存在するイメージが湧かなかった」 のだろうと思います。世の中大きくは変化していましたし、その変化に当社が対応するには今しかない、と考えたのでしょう。 連綿と続いていた自社の慣習と、はっきり線引きした のだと思います。

――過去を知るスタッフが2〜3人しかいないなかで、ホテルをうまく運営できるものなのでしょうか?

濱田: ちょうど、他社のホテルが建て替え工事で休業中のタイミングと重なっていて、そこでの経験者を出向として3人受け入れました。これは業界の慣習でもあります。その3人が、今に至る基盤を作ってくれました。開業直前には、支配人を中途入社で採用するのですが、彼らがリニューアルの中心メンバーとして活躍してくれました。 外部のプロフェッショナルの血によって、当社は変革できた と言えるかもしれません。

――龍名館はホテル業界でITツール活用の先駆者とも言われていますね。

濱田: ホテル業界はIT化が非常に遅れています。例えば予約通知は紙に印字されたものやFAX用紙の内容を、コンピュータに手作業で打ち込んでいました。私たちがそんなレベルの作業をしている中、世の中ではどんどんIT化が進んでいる。スマートフォンを使ったり、インターネットを使ったり、 ある意味普通に生活していれば、世の中の進歩はわかりますよね。

それを感じているスタッフから「うちもこれ使いましょうよ」という話が出てきました。そういった提案を抵抗なしに取り入れる形でIT活用が進んでいきました。

例えば10年くらい前。当時は「一台のパソコンに対して一つのメールアドレス」といった運用でした。いま思えば笑い話ですが『連絡事項をノートに手書きで記録』していたんです。そこでもスタッフから「社員全員にメアドを付与しましょうよ」という声があがり、そうすることにしました。「やろう!やろう!」を実行に移したことがよかった。IT活用というと「見えない未来」のような漠然としたイメージがありますが、 私生活の中ですでに見えているものを、普通に受け入れることが大事だ と思います。

――最近ではどのようなITツールを使っていますか?

濱田: 基本ソフトはG Suiteとチャットワークです。チャットワークは社内だけでなく社外の方の間でも使っています。チャットワークも一部のスタッフから「使わせてほしい」という要望があり、そこから段階的に社内に広がっていきました。

旧態依然とした本店が「遅れている」雰囲気に。支店の成功を逆輸入する

――東京店のリニューアル以前、かつての龍名館はどんな旅館だったのですか?

濱田: ビル旅館という形式で、鍵はシリンダー錠、客室は和室中心、共同の家族風呂などもありました。業務は紙で管理し、サービス面においても現在のような基準はありませんでした。

――そんな風景に刺激を与えたのが東京店だった、と。

濱田: 会社としてはまだ旧い旅館業を引きずっていた中、東京店にだけ外部から来たスタッフと大卒の新人がいたわけです。東京店では「メアドを全員に付与しよう!」「システムを組んで自動化しよう!」などの取り組みが進んでいきます。そんな取り組みが進んでいくうちに、 「一営業店舗で取り組んでいるものを本社にも取り入れた方が良いのでは」という雰囲気が醸成 され、東京店の改革が全社に広がっていきました。

東京店のリニューアルから遅れること5年。2014年に創業の地、御茶ノ水にある「旅館龍名館本店」を、ホテル「ホテル龍名館お茶の水本店」(以下、本店)へとリニューアルしました。東京店がミシュランガイド※に掲載され、大きな評価を受ける中、 創業の地も「もっともっと良くしていける」という雰囲気になった からです。


創業の地、御茶ノ水にある「ホテル龍名館お茶の水本店」。旅館的な旧い慣習から脱し、日本を代表するホテルの一つに生まれ変わった

――ある意味、東京店からの逆輸入ですね。一方で、古くからのベテランスタッフとの軋轢はなかったのでしょうか。

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