連載:第85回 経営危機からの復活
一匹の“猫”がもたらしたV字回復の奇跡。倒産寸前から復活を遂げた企業に学ぶ、経営戦略の勘所


大阪でハンコの製造を営む岡田商会。斜陽産業とも言われる業界において業績は右肩下がり、2015年には月間1,000万円を超える赤字を計上し、倒産寸前にまで追い込まれていました。常務取締役として会社を支える岡山耕二郎さんは、「真っ暗闇のトンネルの中にいるようだった」と、当時を振り返ります。そんな経営危機の中、会社の運命を変えることになったのは、意外にも一匹の“猫”との出会いでした。利益率は大きく改善しV字回復。現在は、様々な有名アニメ作品とのコラボレーションを推進、ハンコ業界だけに留まらない活躍を見せている同社。その成長の軌跡に迫ります。

一匹の“猫”との出会いが、経営危機から復活する契機になった
――貴社は2000年以降、厳しい経営状況が続いていたそうですね。
岡山耕二郎さん(以下、岡山): そうですね。 2000年に入社した時点で、社長である父親からは 「ハンコは斜陽産業だから覚悟しておけ」 と言われていました。
当時、ちょうどハンコの大手フランチャイズチェーンが台頭してきた頃で、一気に安売りがはじまりました。当社の取引先である路面店はどんどんフランチャイズ店にシェアを奪われてしまい、私たちも新しい販売チャネルの開拓が急務となっていたんです。
そこで、私が入社したタイミングではじめたのがネット通販です。ネット通販であれば、商圏が全国になるので売れるはず。しかし、それは甘い考えでした。サイトの立ち上げはできるのですが、知ってもらうのが難しい。知ってもらえたとしても、全国の店舗が競合になるわけです。そこに勝つことの難しさたるや…。売上が出ない時期が半年ほど続き、父親からは「家賃も払えないならやめてくれないか」と言われたほどです。
そんな父親を説得し、なんとか続けられるようになったものの、先行する競合他社には太刀打ちできず、売上を作るため広告に依存し、セールと称して安売り。コストは膨れ上がる一方で、利幅はどんどん薄くなる…。完全に薄利多売のビジネスで、どんどん自分たちの首を締めているような状態でした。
今であれば、薄利多売は中小企業が一番してはいけない戦略だとわかるのですが、当時は自分たちの強みも見つけられず、何が正解なのかがわからなかったんです。
従業員数は20名弱でしたが、社内の雰囲気も悪かったと思います。だって、せっかく頑張って作った商品なのに安い値段で売られるわけです。社員はしんどいだけですよね…。
そんな苦しい状況がずっと続いていて、2015年の秋頃に、月間で1,000万円を超える赤字を計上していることが発覚しました。当時のネット通販の月商は1200万円ほど。このまま赤字が続いたら、数ヶ月後には会社が潰れてしまう…そんな状況まで追い詰められていたんです。
真っ暗闇のトンネルの中でひたすらもがいているような感覚で、出口がわからない。このままではまずい…どうにかしなければ…。 そんな当社をV字回復に導いてくれたのは、一匹の「猫」でした。
――ね、猫…ですか?一体どういうことでしょう??
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バックナンバー (85)
経営危機からの復活
- 第85回 一匹の“猫”がもたらしたV字回復の奇跡。倒産寸前から復活を遂げた企業に学ぶ、経営戦略の勘所
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