連載:第89回 組織作り その要諦
社員の自主性が育つ組織の要諦。リーダーが“失敗”から学んだ改革の要
リーマンショック後の経営危機で売上が半減した町工場が、驚くべき変貌を遂げました。湯本電機株式会社の3代目社長・湯本秀逸さんは入社した2009年から社内の組織改革に取り組み、2012年から12年連続で増収を達成しています。売上高を入社時の2.5億円から14億円へと成長させただけでなく、平均年齢34歳という若手が集う組織へと生まれ変わらせました。その原動力となったのが、社内のどんな小さなことでもプロジェクト化し、常時10個前後のプロジェクトを「社員主導型」で進行する組織づくりでした。とはいえ改革当初は失敗もあったそうで、その失敗から学んだことが改革の要となります。30歳で家業に戻り、40歳の2019年に社長交代してから現在に至るまで、湯本さんが実践した組織変革の軌跡に迫ります。
湯本電機株式会社
代表取締役社長 湯本 秀逸さん
2009年、30歳の頃に家業に戻り、2019年に社長に就任。本社70名、ベトナム工場45名を擁する精密部品加工メーカーを率いる。リーマンショック後の経営危機を乗り越え、2012年から12年連続で増収を達成。宇宙産業への参入など、新規事業の開発にも積極的に取り組む。
どんな小さなことも「プロジェクト化」する。ある「気づき」が社員の自主性を高めるヒントに
――リーマンショック直後の2009年、御社は月商が半減するほど業績が落ち込んでいました。その危機を乗り越え、現在は売上高5.6倍、40〜50代の社員が中心だった以前と比べ、現在は平均年齢34歳の若手が集まる組織へと生まれ変わっています。どのような組織改革を実践したのでしょうか。
湯本秀逸さん(以下、湯本): 当社では2012年から、 社内のどんな小さなことでも「プロジェクト化」する取り組みを始めました。 業務に関係するものから、そうでないものまですべて「プロジェクト」と呼び、1つのプロジェクトごとに社員でチームを作ってもらっています。
基本的には社員が主体となりプロジェクトの企画・立ち上げを担い、参加するメンバーは公募、リーダーは立候補制にしています。参加者が多くなり過ぎてしまうと、ただ参加するだけになってしまうので、チームは4名前後。 今では常時、部署を横断した10個ほどのプロジェクトが進行しているんです。 プロジェクトに参加したかどうかは昇進条件のひとつにもしています。
現在、主に動いているプロジェクトは、宇宙産業参入、営業DX、新社屋計画、BtoCのオリジナル商品開発、広報SNS発信、人材採用、アメリカ進出、民泊事業などがあります。
――なぜ、「プロジェクト化」を実施しようと思ったのでしょうか?
湯本: 毎日同じ業務の繰り返しでは、その業務の遂行能力は上がっても、それ以上の成長は望めないと私は思っています。常に新しいことに挑戦し、自分で何かを考えて決める経験を通じて、より高い能力が身につく。それこそが人材育成の本質だと考え、「プロジェクト化」を組織づくりに取り入れました。そうすることで、社員の「自主性・当事者意識」が芽生えると思っています。
――「プロジェクト化」を導入することで、社員の自主性はすぐに芽生えたのでしょうか?
湯本: いいえ。そう簡単にはいかず、最初は失敗だらけでした。私は「業務に関係するものからそうじゃないものまで、なんでも幅広く、自由に考えて動いてほしい」と伝えていて、社員たちもそのほうがやる気が出るだろう、と思っていたんですね。
でも最初は、私主導でプロジェクトを企画立案することがほとんど。メンバーが集まらない時には私が社員を指名して「チームに入ってもらえないだろうか」とお願いすることが多かったんです。
今でこそ社員が積極的に手を挙げてくれるようになりましたが、最初はそうはいかず…。ある出来事をきっかけに、自分の進め方に問題があると気付かされました。そして、その気づきこそが、自主性の高い若手社員を育てる要となったのです。
――その「気づき」とは何だったのでしょうか?
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組織作り その要諦
- 第89回 社員の自主性が育つ組織の要諦。リーダーが“失敗”から学んだ改革の要
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- 第86回 「イエスマンばかり」からはじまった社内改革20年史。超トップダウンから自律型組織への軌跡
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