連載:第81回 組織作り その要諦
「人が辞めない組織」たった2つの条件。社員の離職を止めたリーダーの葛藤と覚悟
新卒社員の離職率67%、新たに中途採用した社員は20人中19人が離職…危機的な人手不足に陥っていた、筒井工業株式会社。2017年に社長に就任した前島靖浩さんは、叱責や怒号が飛び交う古い体質を脱却すべく、組織改革に着手します。結果、新卒社員の離職率が7%に激減し「人が辞めない組織」に生まれ変わりました。さらに、社員数は1.5倍に増加、生産性向上により利益も増え、好循環が生まれているのだそう。同社が見つけた「人が辞めない組織の絶対条件」とは?前島社長に、改革の道のりと成功の秘訣を伺いました。
若手社員の大量離職による人手不足が慢性化。怒りさえ覚えた「警告」で気づかされたこと
――貴社は2017年から組織改革に取り組み、新卒3年以内の離職率が67%から7%に減少するという、まさに「人が辞めない組織」に変貌を遂げられていますね。
前島 靖浩さん(以下、前島): ありがとうございます。2017年以前の最大の課題は「人手不足」でした。新卒採用は毎年失敗…。運よく採用できたとしても3人中2人が3年以内に離職。新卒採用を諦めて中途採用に切り替えても、20人のうち19人が短期間で離職してしまう…そんな年もあったほどです。
今振り返って、大量離職の原因を一言で表すとしたら 「人を育てる文化がなかった」 こと。新入社員をろくに研修もせずに現場に放り込み、「勝手に育ってこい」というスタンス。現場でも十分な指導を受けられず、「そんなこともできないのか」と叱責されたり、怒号がとんでくるような毎日。こんな中で若手が育つわけがありません。
さらに、来た依頼は断らずに全て受注し、長時間残業や土日出勤をして気合と根性で何とか乗り切る…。そんな“昭和体質”な企業でした。現場は常に人手不足の中、社員の心身が疲弊し、部門間の対立やチーム内の喧嘩が頻発。このままでは日々の業務もままならなくなり、顧客の信頼を失いかねない危機的な状況でした。
私を含め上の世代は「人に丁寧に教える」「相手の話を聞く」といった文化がない中で育ってきたので、「人を育てる」という概念がなかったんです。私自身も「厳しく接しないと仕事ができるようにならない」「強いリーダーシップを発揮してこそ経営者だ」と考えていました。
――そんな組織が変わるきっかけは何だったんでしょうか?
前島: コンサルタントの方のお力を借りて採用活動したところ、2018年4月入社となる新卒を7名採用できてしまったんです。しかし、このままの当社では、彼らを受け入れても短期間で離職されてしまうのは明白…。そこで慌てて、ハローワーク主催の若者定着支援セミナーに参加しました。
そのセミナー冒頭で、講師の方の“警告”ともいえる発言に大きな衝撃を受けました。同時に、私は怒りさえ覚えました。しかしそのおかげで、私ははじめて社員に頭を下げることができましたし、当社が変わるきっかけになりました。現在の組織づくりの礎になったと言っても過言ではありません。
――その発言とは、何だったんでしょうか?
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バックナンバー (84)
組織作り その要諦
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- 第81回 「人が辞めない組織」たった2つの条件。社員の離職を止めたリーダーの葛藤と覚悟
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