連載:第80回 組織作り その要諦
稲盛和夫氏の教えが礎に、“普通”の会社で日本一。リーダーが見つけた組織づくりの本質
エンゲージメント日本一の企業を決める「ベストモチベーションカンパニーアワード」で3年連続1位、殿堂入りを果たした株式会社メッセ。しかし専務取締役の宮本茂さんは、「元は普通の会社だった」と語ります。人気業態とは言いがたい遊技事業で、社員の多くはアルバイト出身。数年前には、業績不振から希望退職制度を実施して多くの社員が離職、組織の雰囲気は最悪に…。そんな苦しい状況を変えるきっかけになったのが、京セラの創業者・稲盛和夫さんのある教えでした。同社の組織づくりの軌跡について伺います。
株式会社メッセ
専務取締役 宮本 茂さん
1977年生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了後、ソニーに入社。2004年メッセに入社、2017年専務取締役就任。エンゲージメント日本一の組織を決める国内最大規模の式典「ベストモチベーションカンパニーアワード」で、2021年から3年連続日本一となり殿堂入りを果たす。
利益優先で組織の雰囲気は最悪に…。稲盛和夫の教えが会社を変えた
――貴社は、リンクアンドモチベーション社が開催する「ベストモチベーションカンパニーアワード」中堅・成長ベンチャー企業部門において、2021年から3年連続で1位を受賞されていますね。
宮本茂さん(以下、宮本): お陰様で、今では「エンゲージメント日本一」と言われることもありますが、元々は“ごく普通の会社”です。むしろ、過去には「自立支援制度」という名のもとのリストラを断行したことも…。どちらかといえば「売上」「利益」重視の組織だったように思います。
そんな当社が大きく変わるきっかけになったのが、京セラの創業者である稲盛和夫先生との出会いです。
――詳しく教えてください。
宮本: 当社の主軸である遊技事業は、バブル期の追い風もあり、大きくヒットしました。労働集約型で会社はぐんぐん成長し、私が入社した2004年当時はまさに絶頂期で、売上は500億円超え、社員も500人以上に増えていました。
しかし2009年以降、業界全体への規制が強化された影響で、当社においてもお客様の来店がどんどん減り、売上は低迷。これまで事業が好調だったのは、単に遊技事業が時代の波に上手く乗っていただけ。一気にメッキが剥がれて、会社の弱さが露呈してしまったのでしょう。
なんとか危機を脱するべく、「利益確保」を最優先にいろんなものを削ぎ落としました。それまで毎年行っていた30~50人の新卒採用をストップし、社員教育への投資や社内イベントも廃止。「自立支援制度」で社内から退職者を募ると50名ほどが挙手、会社を去っていきました。そのほかにも徹底的にコスト管理と利益意識を見直した結果、2013年にはなんとか利益が浮上していきました。
しかしその代償として残ったのは、多くの仲間が去り、コミュニケーションも気薄になった組織…。とても雰囲気がいいと言える状態ではありませんでしたし、経営陣である私と両親に残されたのは虚無感でした。
3人で 「なぜこうなってしまったのか」をとことん議論しました。その中で出てきたのが 「そもそも、当社はなんのために経営しているのか」 という問い。再認識したのが、創業のきっかけである「家族を幸せにしたい」という思い。そして、「会社を支えてくれた社員にその恩返しをして、みんなを幸せにすること」という価値観が根底にあったこと。その思いがあったはずなのに、いつの間にか売上・利益ばかりを追求するようになっていたのです。
社員は大事にしたい。でも売上・利益を確保できないと、また会社は危機に陥ってしまうかもしれない。 「事業」と「組織」いったいどちらを重視したらいいのか…。 会社の方向性を揺るがすこの大きな問いに対する道を開いてくれたのが、稲盛和夫先生の教えだったのです。
――その教えとは、いったいなんだったのでしょうか?
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