連載:第76回 組織作り その要諦
13人の経営幹部が1人を除いて全て離職。チームを生まれ変わらせたリーダーの改革
株式会社エンパワーの代表取締役、増井俊介さんが入社したとき会社は倒産寸前の危機に直面していました。増井さんは生き残りをかけ、社員の意識改革に着手。幹部の大半が離職してしまうという痛みを伴いながらも、会社は見事V字回復を遂げます。増井さんがどのようにして組織を変革に導いたのか、お話を伺いました。
株式会社エンパワー
代表取締役 増井 俊介さん
1973年大阪府堺市生まれ。神戸学院大学法学部卒業後、1996年大手通信会社入社。2011年、コールセンター事業を起業。その後、売却。2016年株式会社エンパワー 代表取締役就任。
経営危機待ったなし。背水の陣で経営改革へ着手
――社長に就任された当時の状況について教えていただけますか。
増井 俊介さん(以下、増井): 2010年に創業したエンパワーは、ブランド品の買取専門店「買取大吉」を運営しています。創業当時から会社は順調に成長し、2016年までに100店舗、年商19億円を突破するまでになりました。
しかし、ライバル店の台頭により競争が激化。当社はその競争に立ち遅れてしまっていました。2016年には経営が行き詰まり、創業してはじめて売上、利益ともに前年比を大幅に下回り、早急に対策を取らなければ経営破綻するような状態でした。
その状態を受け、私は創業社長から直々に経営の立て直しを打診され、入社することになったのです。
――増井さんが特に課題だと感じられた点は何だったのでしょうか。
増井: 私が一番問題だと感じたことは社内のゆるい雰囲気。創業時からいた経営幹部には危機感はなく、景気が良くなれば持ち直すだろうという意識。社長と経理のトップ以外に会社の状況が一切開示されておらず組織内に危機感が共有されていませんでした。
例えば、幹部を全員集めた会議を行おうとしても、「最短で2週間後になります」という返事が返ってくるような状態。たった10人の幹部会議を開くのにもそのくらいのスピード感だったのです。
優秀な人材は3か月で昇格。徹底した評価制度で組織が変わった
――課題を解決するために、どのような改革を行われたのですか?
増井: 経営の透明化、人事制度の見直しです。
まず、経営の透明化が挙げられます。社内に会社の数字を開示し、現状を社員と共有しました。そのうえで、全国の直営店、支部を1年かけて巡りました。そうして、全社員に毎月の売上や利益の推移、資金繰りの見通し、そして何より私の決意を伝えました。ありのままの情報を伝えたうえで、新たな経営ビジョンを全社員に伝えていったのです。
数字を公開するということは、経営幹部の姿勢が社員に明らかになるということです。会社の経営が芳しくないのに、幹部の賞与が満額支給されたり、幹部用の社用車が与えられているのはどう考えてもおかしいですよね。
そこで、経営再建まで経営幹部の賞与はゼロにしました。そのほか不要だと判断した接待交際費や社用車などもすべてカットしました。
それから、人事評価の見直しを行いました。それまでは、完全に情実人事。上長が部下の評価を主観的に判断していた部分がありました。その姿勢を改め、徹底した成果主義に変えました。
例えば、直営店の買取営業スタッフは毎月ごとの売上に応じたインセンティブのほか、3ヶ月連続で目標達成をすれば昇格という制度を設けています。半年、あるいは1年おきの評価で昇格させていたのでは遅すぎるという考えです。
もちろん、昇格してもそれにふさわしい実績が出せなければ降格もあり得ます。ただし、例え降格した社員であっても新店舗への勤務や新しいプロジェクトへ参加させるなど、必ず挽回できる機会を与えています。一度の失敗で挑戦する機会を奪っては会社の成長はあり得ませんし、新しい挑戦に対して消極的な風潮をもたらすだけです。むしろ、成功するまでやらせてみるのが我々のスタンス。失敗を乗り越えた人間のほうがビジネスマンとして成長できると思います。
そうしたメリハリをつけることで、社員の意欲を引き出そうと考えたのです。
改革の末に幹部のほとんどが退職。経営改革で失ったものと得たもの
―――それだけの大きな改革に社内の反発も大きかったのでは?
増井: 大ナタを振るった反動はすぐにあらわれました。
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