連載:第61回 組織作り その要諦
社員に見放されて目が覚めた。V字回復の企業に学ぶ「人が辞めない組織」の絶対条件
当時の社風は最悪で、社員全員に辞表を突き付けられた……。7,000万円の負債を抱えた家業を事業承継した、株式会社フカイの代表取締役社長 竹内和博さんは当時を振り返ります。離職率は、なんと80%を超えていたそう。そこから数々の「しくじり」を経験するも、課題に徹底して向き合い、改善することで離職率はゼロに。倒産寸前だった業績も約3.5倍に伸び、業界では県内No.1企業へ変貌を遂げています。同社が「人が辞めない組織」に生まれ変わり、V字回復を達成した秘訣とは?詳しく伺いました。
株式会社フカイ
代表取締役社長 竹内 和博さん
1967年岡山県倉敷市生まれ。近畿大学商経学部卒業後、株式会社テンポラリーセンター(現パソナ)に就職。1991年、(現)株式会社フカイ入社。1999年、父の急死により32歳で代表取締役社長に就任。
株式会社フカイについて
1965年創業、配置薬の会社。その他、健康食品のネット通販の企画運営や、フィットネス型デイサービスなどの事業も手掛ける。岡山県・広島県で事業を展開。一時は1億円を超える負債を抱えるも、現在は毎年黒字経営を実現。2021年に過去最高売上を記録し、自社ビルを建設。現在は「空飛ぶ置き薬プロジェクト」として、ドローンで離島に医薬品を届ける実験をスタートしている。社員数は35名(2023年11月現在)。
しくじり社長が見出した「人が辞めない組織」の絶対条件とは?
――竹内さんは「しくじり社長」を自称され、各地で講演活動をされていらっしゃいますね。
竹内和博さん(以下、竹内): はい。当初はV字回復などのテーマで自分の経験を各所でお話しさせていただいていたのですが、ある講演中に「本当に大変だったんですね…」と泣き出してしまった方がいらっしゃって…。それを見て「私は相当しくじっていたんだろうな」と感じ、自らしくじり社長を名乗るようになりました。
家業に戻ってすぐに親会社の医薬品メーカーが倒産してしまい、仕入先がなくなりました。その後、立て直しを図るものの、協力会社の1社に騙されて1500万の詐欺に遭ってしまい…。その後、父の急死により経営のことが何もわからないまま32歳で社長に。そこで7,000万円の借金が発覚したのです。
パニックで頭の中は「売上」のことでいっぱい。社員に過重労働を強いて、口をひらけば「売上、売上」。さらに人材を採用するもののまったく定着せず、入社しては辞めの繰り返し。離職率は80%を超えていた時期もありました。売上が回復する兆しが見えたとしても、またどん底に突き落とされる…。倒産の危機にも追い込まれました。「なんでうまくいかないんだろう」「なんでうちばかり…」そう思ったことは何度もあります。神様に見放されたんじゃないかとさえ思った出来事も…。
しかし今振り返ると、様々な失敗を繰り返してきたことで、経営において何よりも大切なことに気づけたと考えています。そしてそれが、当社が「人が辞めない組織」に変わるための礎になったのだと。
――いったいそれは何でしょうか?
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