連載:第59回 組織作り その要諦
セブン鈴木元会長に“叱られなかった”ことで気付けた。「相手に正しく伝える」ための2つの条件
2032年に創業100年を迎える株式会社赤ちゃん本舗。2007年にセブン&アイホールディングスの傘下となり、赤字経営を再建するために経営企画として出向した味志謙司さん。現在は社長となり、2度目の社内改革を進めていますが、自身が進めた10年前の1度目の改革は「失敗だった」と振り返ります。時が過ぎ、経験を積み、立場が変わって得たのは「会社を変えられるのは社長だけ」という思い。セブン元会長・鈴木敏文氏との関わりから気付けた自身の強みや、「相手に正確に伝える」ための条件などについて伺いました。
株式会社赤ちゃん本舗
代表取締役社長 味志謙司さん
1970年東京都生まれ。法政大学経営学部を卒業後、イトーヨーカ堂に入社。2007年に赤ちゃん本舗へ出向。2021年3月より現職。「赤ちゃんのいる暮らしを知りつくしている」ことを会社の強みとして定義し、子育て総合支援企業として主体性のある組織を目指す。
自分の組織改革は失敗していたんだ、と後年気づいた
――「赤ちゃん本舗」に出向された経緯や、当時の課題を教えてください。
味志謙司さん(以下、味志): 2007年に赤ちゃん本舗がセブン&アイホールディングスのグループに入ったことに伴い、会長に着任する河邉とともにイトーヨーカ堂から経営企画として出向しました。
最大の課題は「赤字の脱却」です。6年ほどかかって経営再建が見えたころ、河邉から「これまでの縮小路線から拡大路線に舵を切りたい。何をやるべきか?」と宿題をもらいました。これは本当に難しく、答えの出ない日々が続きました。
ちょうどそのころ、セブン&アイホールディングスでは各事業会社からメンバーを集め、次世代リーダーを育成する「山本経営塾」が開講しました。私はその1期生として受講したのですが、その中で「ブランディング」の講義を聞き、赤ちゃん本舗の次の一手として「リ・ブランディング」が必要だと結論しました。
赤ちゃん本舗は長い歴史と、立派な企業理念がありましたので、それらを時代に合わせて活かすことを考えました。河邉が考える会社の未来像を聞き、組織改革のプログラムを策定しました。
「スマイルな育児を。アカチャンホンポ」というコーポレートメッセージを打ち出し、全社員へブランディングノートを配布し、オンライン学習や確認テストなど、認知と理解を図っていきました。2014年のことです。
ただこの取り組みは、『失敗していたんだ…』と後年振り返る ことになります。
組織改革は失敗だったと結論した2つの理由
――なぜ失敗と振り返られたのでしょうか?
味志: 決定的な要因が2つあります。
1つは数字・業績 です。
「社内認知」という意味では一定の成果はあり、業績も売上1,000億超、営業利益は約30億くらいまで伸びました。しかしその後5年ほどは横ばい。悪い言い方をすると「停滞」の時期が続きました。
拡大路線に転換するための組織改革だったにも関わらず、すぐに伸び悩むことになったのです。
その後、私は経営企画から営業部門の責任者に異動となり、経営企画として改革の旗を振り続けることが物理的にできなくなり、組織改革は頓挫します。
そして、営業責任者として足を運んだ現場で、改革を失敗と結論したもう1つの理由を目にします。 むしろこれこそが、失敗の本質でした。
――何があったのでしょう?
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