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連載:第48回 経営危機からの復活

地球の歩き方復活の軌跡。売上9割減からV字回復を成し遂げたリーダーのマネジメント

BizHint 編集部 2023年9月28日(木)掲載
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海外旅行が好きな人なら、一度は手にしたであろう「地球の歩き方」。創刊44年、世界約160か国の観光情報を扱ってきたガイドブックです。しかし、コロナ禍で海外旅行が事実上不可能な状態に陥ると、売上は前年の9割減と壊滅的な打撃を受けます。経営危機により、「地球の歩き方」は2020年12月株式会社学研ホールディングス(学研)のグループ傘下に入り「株式会社地球の歩き方」が誕生しました。その初代経営者として白羽の矢が立ったのが、グループの海外事業推進を担ってきた新井邦弘さん。コロナ禍の影響がまだ収まらない中、「地球の歩き方」ブランドを守るために約1年半でV字回復を成し遂げたその経営手腕に迫ります。

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株式会社地球の歩き方
代表取締役社長 新井 邦弘さん

1965年、埼玉県生まれ。東京都立大学在学中にバックパッカーとして中国や中東をめぐり、1990年に株式会社学習研究社(学研)へ入社。世界各国のミステリーを取り上げる「ムー」や古今東西の歴史を扱う「歴史群像」など雑誌編集を経て、2015年からは学研グループの海外事業を推進するグローバル戦略室長に就任。「地球の歩き方」の事業譲渡に伴い、2020年12月に代表取締役に就任する。


驚異のV字回復を成し遂げられた理由

――株式会社地球の歩き方の社長に就任された経緯を教えてください。

新井 邦弘さん(以下、新井): 2020年春、新型コロナが急拡大した影響で世界的に渡航制限が出されました。海外との往来が不可能になれば、旅行ガイドブックが売れなくなるのは当然でした。海外ガイドの売上は9割も減り、当時、地球の歩き方を発行していたダイヤモンド・ビッグ社での事業継続が難しくなった。

譲渡の件を進めたのは学研ホールディングスの経営戦略室で、私自身は交渉がほぼ決着という段階になって「社長をやらないか」と聞かされたのです。結果的に、新会社である「株式会社地球の歩き方」の発足は2020年12月。私は設立と同時に経営を任されました。

――地球の歩き方は新会社となってから1年半という短期間でV字回復を成し遂げました。なぜ成功できたのでしょうか?

新井: 一番大きな理由は「地球の歩き方 ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方」「地球の歩き方 日本」を始めとした新刊のヒット作を量産できたことです。そして、その原動力となったのは、 がむしゃらにやるしかないという社内の切迫感 だったかと思います。きちんとしたマーケティングも大事ですが、思いついたアイデアをきっかけにして、ポジティブに実現化していくことの大切さを再発見した思いでした。

従来の仕事はガイドブックのアップデートが大半で、「2023年版」などと定期的に改訂すればよかったわけです。それで、安定的なビジネスとして成立していました。しかし、コロナ禍で渡航ができない、取材ができない中では新しい取り組みを行う必要がありました。

「地球の歩き方 日本」がまさにそうなんですが、新刊は改訂版作成に比べ何十倍ものエネルギーがかかります。また通常、国内のガイドブックは「京都」、「札幌」のように都道府県や町のみ、あるいは「信州」のようにエリア別で刊行しており、最初から「日本」という国まるごとを扱ったものはほとんどありませんでした。

ご存知の通り、日本には、北海道、東京、京都、沖縄…という具合に世界的な観光地が数多くあります。それらを1冊にまとめるわけですから、取材はかつてないほど広範囲におよびました。これまで最も労力のかかった書籍の1つで、現場の負担は大変なものだったと思います。

しかも、新会社設立後、新刊の製作を1年で何冊もやった。 社員全員が赤字から脱却するという切迫感を持って脇目も振らず本作りに邁進してくれたから成しえたこと で、本当に頭が下がる思いです。

私が心掛けたことは、メンバーが温めていたアイデアにチャレンジする機会を設けること。なぜなら、

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