連載:第49回 経営危機からの復活
稲盛和夫氏の教えで目が覚めた。V字回復のリーダーが語る企業変革の正しい順番
2011年、婿養子として入社した会社の銀行レポートには「倒産予備軍」と明記されていた…。そんな波乱の幕開けで後継者としての人生がスタートしたと語るのは、福井県にあるラニイ福井貨物の藤尾秀樹社長。構内は吸い殻やゴミが散乱しているほど汚い現場で、役員をはじめ従業員全体のモチベーションも低かったそう。そんななか、稲盛和夫氏が主宰する「盛和塾」での学びをもとに、ある「順番」を守り組織改革を推進。社内はピカピカになり、12年で売上高は50億から70億に。利益も大きな伸びをみせ、倒産予備軍から見事にV字成長を果たしました。藤尾社長に、同社の軌跡について伺います。
ラニイ福井貨物株式会社
代表取締役社長 藤尾 秀樹さん
1969年東京都生まれ。大学卒業後、大正製薬に入社し、営業やマーケティング職に従事。営業では、社長賞を複数回受賞するなど輝かしい成績を収める。2011年、福井貨物(当時)創業家の三女との結婚を機に、後継者として入社。2019年より現職。
ラニイ福井貨物株式会社について
1928年創業の老舗運送会社。北陸三県を中心に、関西・中京・関東を経営基盤としている。国内物流、国際物流、倉庫業など幅広い事業を展開。トータルロジスティクス企業を目指す。2019年、ラニイ福井貨物(株)に社名変更。2021年、福井IC近くに約4万平方メートル、総工費40億円の新物流センターを新設。従業員数530名(グループ全体)。
「社員がかわいそうですな。」稲盛氏の言葉に経営の本質を見る
――藤尾社長は、京セラ創業者である稲盛和夫氏主宰の経営塾「盛和塾」で学ばれたそうですね。
藤尾秀樹さん(以下、藤尾): はい。この会社に入社してすぐ、2011年に入塾しました。当時、稲盛さんがJALの会長に就任されたばかりでしたし、最初は「有名人に会えるかも」というミーハーな気持ちもあったのですが(笑)。
――実際に入塾されてから、そのお気持ちに変化はありましたか?
藤尾: はい、どんどん変化しましたね。稲盛さんの教えで一番刺さったのは、 「利他の心」。 「自分だけがよければいい」という利己の心でなく、「自らを犠牲にしても他人を助ける」という利他の心を持つべきという考え方です。
前職の会社員時代、自分で言うのも何ですが、営業でよい評価をいただけていたんです。ただ、今振り返ると非常に「利己的」で、自分の売上さえ良ければいいくらいの気持ちでした。管理職になって部下を持ったときも、表面的にはうまくやっているけれど、心の底からの繋がりみたいなものが生まれないな…と感じていて。
盛和塾に入り「利他の心」という言葉を聞いて、「自分に足りないのはコレだ!」と思いました。業績を上げることはたしかに大切。しかし、その前に人として正しい行いをする、人として清くなければいけない。そういった気持ちが自分に足りなかったことに気づかされたんです。
稲盛さんの教えは、 利他の心をもったその上で、闘志を持って企業間競争に挑め というものでした。私が今後会社を牽引していく立場になるにあたって、絶対欠かせないものだと強く感じたことは忘れられません。
そしてもうひとつ。稲盛さんがおっしゃっていたことですごく印象に残っていることがあります。
ある時、盛和塾の発表会に付随するイベントで稲盛さんとご一緒する機会がありました。移動のバスの中で、ある経営者が稲盛さんに「利他の心」について質問したところ、稲盛さんは「おたくの会社は、売上・シェア・利益なんぼですか?」と聞き返しました。質問者が自社の経営状況について回答したあとの言葉に、 稲盛さんの経営の本質が詰まっている と感じました。
――その言葉とは何だったのでしょう?
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