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連載:第72回 成長企業 社長が考えていること

V字回復したのに社員の心は離れていった。松下幸之助の教えで目が覚めた社長が、社内から「責任」を排除した理由

BizHint 編集部 2023年9月12日(火)掲載
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ずさんな経営体質により、全体の売上の約2割にものぼる赤字を計上。あと10日で倒産してしまうかもしれない…というような危機的状況から、見事3年でV字回復を果たした株式会社春野コーポレーションの鳥居英剛社長。その後、順調に成長していくと思いきや、その急激な改革のなかで、社員との信頼関係は崩壊してしまったそう。藁を掴むような思いのなか出会ったのが「松下幸之助」の教えでした。現在は、「責任」という言葉は排除、社員がどれだけ楽しく仕事ができるかに注力することで、究極のボトムアップ組織に変貌を遂げ、売上・利益は右肩上がりで成長しています。詳しくお話を伺いました。

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株式会社春野コーポレーション
代表取締役 鳥居 英剛さん

1979年、静岡県浜松市生まれ。2001年、春野種豚牧場株式会社(現:株式会社春野コーポレーション)に入社。2007年に起業し種豚会社を設立、翌年に3社へ経営を拡大する。2009年より同社の経営改革へ着手し、2011年に黒字化を達成。同年に代表取締役へ就任する。2013年より社員に任せる経営へシフトし自律型組織を実現。業績を伸ばし続けている。


赤字の家業を3年でV字回復。しかし社員の心は離れて…

――ご自身で起業した2年後に家業に戻り、経営改革を担われたそうですね。まずは、その経緯を教えてください。

鳥居英剛さん(以下、鳥居): 2001年、家業である株式会社春野コーポレーションの前身の春野種豚牧場株式会社へ入社したのですが、事業を拡大するために家業と別に自分で3社起業しました。自分が経営する会社の運営に忙しくしていたある日、春野種豚牧場の社長を務めている父から「ちょっと資金を貸してくれないか」と相談があったんです。銀行で借りられないのか?と思い、帳簿を見せてもらったのですが…衝撃でした。

経営は火の車で、私が経営していた3社を担保に入れても、借り入れがほとんどできないような状態に陥っていたのです。

このままではまずいと思い、「俺に全部任せてほしい」と父に伝え、経営を引き継ぎ、社内改革に乗り出すことに。それが2009年のことです。翌年にはじめてまともな決算書を作ったのですが、単年度でマイナス5~6,000万の赤字決算。全体の売上の約2割にものぼる赤字を計上していました。

――赤字の原因は何だったのでしょうか?

鳥居:ずさんな経営体質 です。未回収の売掛金がたくさんありましたし、新規開拓をしていなかったので、既存の売り先の言い値に甘んじていた。仕入れ単価にも無頓着だったため、原料費は高額に。月末になると支払の催促の電話がかかってきて、あと10日で資金を工面しないと倒産してしまう…みたいなことは何度もありました。

何より、毎月の財務状況をきちんと把握していなかったので、社内の誰も危機感をもっていないんですよ。だからこそ、私が無理やり改革を進めました。赤字の要因となっていることはすべてテコ入れしていきました。今振り返ると無理難題だと思うのですが、社員に「これ以上エサを買うな!」と指示したことも。一方で現場は会社の状況を把握していないので、「豚を死なせる気か!?」と猛反発されたり…。

ですが、 会社にとっては生きるか死ぬかの緊急事態です。社員の声を無視してでも改革を進めるしかありません。 結果、私が家業に戻った3年後の2011年度は、3,000万円の黒字で着地。何とか赤字を脱することができました。

――たったの3年でV字回復を果たしたのですね。

鳥居: そうですね。私もこの短期間で会社を持ち直せたことに対し、自分の経営者としての能力に自信を持ちました。自分のやっていることは正しいと信じて疑うことはありませんでしたし、このまま会社を伸ばしていくことができる…そう思っていました。

しかし、その後、それが間違っていたことに気づかされます。

――どういうことでしょうか?

鳥居: 倒産を免れて余裕ができたこともあり、さらなる成長を目指したかったのですが、黒字はキープしていたものの、利益がどんどん下がる一方で…。さらに、顔を合わせれば社員とケンカになるような毎日。「経営者と社員の仲ってこんなに悪いものなのか?」とさすがの私も感じてしまうほどに…。このような状態なので、離職者も多く、採用しても別の人が辞めてしまって…の繰り返しで、人材がまったく定着しませんでした。

V字回復できた自分のやり方は間違っていないはずなのにどうして…と頭を抱え、「福利厚生を充実させてみよう」と思い立ったときがあります。ところが、何をしても社員の反発にあうのです。私が昇給を提案したのに「やめてくれ」と反対の声や不満の声が挙がるんですよ。私に対する社員の拒否反応たるや、ひどかったですね…。それだけ私と社員の間には大きな溝があったのです。

松下幸之助の教えに学んだ“利益よりも先に大事なもの”

――そのような状態から変化するきっかけはなんだったのでしょうか。

鳥居: 松下幸之助の教えに出会ったことです。松下幸之助の研究機関であるPHP研究所が主催しているセミナーに通ったことで、大きな学びがありました。それがこの2つです。

  • 人は「心」が動かない限り、体は動かない
  • 自分は決して優秀な経営者ではない

――詳しく教えてください。

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