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連載:第11回 ヒット商品を生む組織

問題のある組織から良い酒は生まれない。パック酒から転換し世界No.1を掴んだ平和酒造の組織再建

BizHint 編集部 2022年6月17日(金)掲載
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日本酒業界はこの50年間で市場が4分の1にまで縮小し、今や斜陽産業と呼ばれています。そんななか、日本酒「紀土(きっど)」を大ヒットさせ、世界的な日本酒コンテストで見事チャンピオンを勝ち取った立役者が、和歌山県の老舗酒蔵・平和酒造株式会社の山本典正さんです。東京のベンチャー企業から家業に戻った山本さんは、それまで自社が手がけていたパック酒から高付加価値商品の開発へ舵を切ります。しかしその裏側には、ブラック企業体質や、人が定着しないなど組織の悩みもありました。今回は、同社の4代目社長である山本さんに、新たなチャレンジをするための土台づくりや、組織のために必要なこと。また、同社のIT担当田村さんに、老舗酒蔵でのITツールの活用方法について詳しくお話をお聞きしました。

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平和酒造株式会社
代表取締役社長 山本 典正さん

1978年和歌山県生まれ。京都大学経済学部卒業後、人材系ベンチャー企業に就職。2004年、26歳で家業である平和酒造に入社。2019年、京都大学経営管理大学院(MBA)修了。同年、4代目として代表取締役社長に就任。著書に「ものづくりの理想郷 日本酒業界で今起こっていること(dZERO)」「メイドインジャパンをぼくらが世界へ(dZERO)」「個が立つ組織 平和酒造4代目が考える幸福度倍増の低成長モデル(日経BP)」がある。

醸造家
田村 浩貴さん


斜陽産業である家業に戻る「0から1は無理でも、1を10になら…」 

――まず、貴社の業務内容について教えてください。

山本典正さん(以下、山本): 当社は昭和3年に創業した老舗の酒蔵です。主に、日本酒、梅酒、クラフトビールの製造販売を行っており、和歌山の梅を使ったリキュール「鶴梅(つるうめ)」、日本酒「紀土(きっど)」などの商品で知られています。

2020年には、世界的ワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のSAKE部門において、最優秀賞を受賞することができました。現在は、日本だけでなく数十ヵ国に商品を輸出し、世界中の方々に日本酒を楽しんでいただいています。

――もともと山本社長はベンチャー企業に就職されたとのこと。なぜ、事業承継されたのでしょうか?

山本: 僕は、子どもの頃から「経営者になりたい」と思っていました。小学校高学年から日経新聞を読み始め、経営者に憧れを募らせていたんです。また、決して裕福ではありませんでしたが、酒蔵を経営していた両親が楽しそうに仕事の話をしているのを見て、「経営って面白そうだ」とポジティブに捉えていました。

ただ、高校時代に教科書で「ベンチャー企業」を知ります。独自のアイデア一つで起業し、新しいビジネスに挑戦している企業群だと。「僕が求めていたものはこれだ!」と思い、大学卒業後に、まず東京の人材系ベンチャーに就職しました。そこで「自分はどういう経営者になりたいか」と考えながら働いていましたが、20代前半の若い自分には、アイデアも、人脈も、お金もありませんでした。自分で会社を興せるとは思えず悶々としていたとき、母から「お父さんの体調が良くないから、家業に戻ってほしい」と声がかかったんです。

僕は、0を1にする力はないけれど、もしかしたら1を10する力はあるかも知れない……。そう思って、実家に戻ってきました。それが18年前、26歳の頃のことです。

――家業に戻ってこられて、何か感じることはありましたか?

山本: 私が家業に戻ってきた頃、日本酒のマーケットは長期低落していました。1972年にピークを迎え、そこから50年経った今、市場は4分の1になっています。

当時、当社の生産の99%は紙パック酒。過当競争に巻き込まれ、どんどん価格が落ちていました。その状況を見て 「競争から抜け出すためには、特色ある商品、高付加価値の商品を作り、お客さまから評価を得なければいけない」と強く思いました。

また、次世代が家業に戻るというのは、数十年に一度の変革を起こしやすいタイミングです。そこで、自社の強みをしっかり認識し、改革していくことが自分の役割だと思いました。

事業の棚卸しとマーケットリサーチで、高付加価値の「梅酒」の開発へ

――改革を進めるため、どのようなことに取り組まれたのでしょうか?

山本: 最初にやったのは「事業の棚卸し」です。まず、うちの会社にはどんな商品があるのか。その、強みや弱みの洗い出し。そして周辺マーケットの調査など、自分なりにリサーチしてみたんです。そして、「梅酒」に辿りつきました。

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