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連載:第8回 経営・SaaSイベントレポート2022

人を奮起させるリーダーは〇〇を明確にする。ファンに愛され、やる気に満ちたチームづくりの秘訣

BizHint 編集部 2022年6月21日(火)掲載
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今世界中で、組織やブランド、商品の価値観を支持してもらうことに重きを置いた「ファンベース」の経営が重要視されています。そのために必要なのが「自走できる組織」です。では、組織が自走できる状態を作り出すため、リーダーはどうやって部下を導いていけばよいのでしょうか。組織マネジメントのプロである斉藤徹さんのお話を中心に、ユーザーコミュニケーションのプロである佐藤尚之さんも交え、「ファンに愛され、やる気に満ちたチームづくり」について語っていただきました。

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斉藤徹さん
斉藤徹さん/起業家。経営学者
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授。株式会社hint代表。株式会社ループス・コミュニケーションズ代表

1985年、日本IBM入社。1991年に独立しフレックスファームを創業。2005年にループス・コミュニケーションズを創業。ソーシャルシフト提唱者として、知識社会における組織改革を企業に提言する。2016年から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。2020年からはビジネス・ブレークスルー大学教授として教鞭をふるう。2018年に社会人向けオンラインスクール「hintゼミ」開講。企業向けの講演実績は数百社におよび、組織論、起業論に関する著書も多い。

佐藤尚之さん
佐藤尚之さん/コミュニケーション・ディレクター
株式会社ファンベースカンパニー取締役会長。株式会社ツナグ代表。大阪芸術大学客員教授。一般社団法人助けあいジャパン代表理事。一般社団法人アニサキスアレルギー協会代表理事。花火師

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・ディレクターとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立、2019年(株)ファンベースカンパニーを設立。

「ファンベース」の経営には、自走できる組織が必要

斉藤徹さん(以下、斉藤): いい事業といい組織は切り離すことができません。今回は 「ファンベース」 をテーマに、顧客に信頼されて愛される組織の作り方について話していきます。組織・ブランド・商品が大切にする価値を支持している人がファンです。 ファンベースとは、そのファンを中長期的な基盤にして、長く愛されながら売上を伸ばす実践的な方法 を意味します。

テスラ社がユーザー体験と口コミを重視して「広告宣伝費ゼロ」を貫いているのは有名な話ですが、このようなファンベースは今や当たり前のマーケティング手法になっています。実際に、未上場で時価総額10億ドル以上のスタートアップであるユニコーン企業は、僕が調べたところほぼ全部ファンベースの経営でした。

たとえばブラジルで急成長している銀行のヌーバンク。クレジットカードを持てない人にクレジットカードを発行し、10ドルから少しずつ限度額を上げていくイノベーティブかつヒューマンなサービスを提供しています。優れた顧客サービスにより口コミだけで熱狂的なファンがつき、一切広告を出していないにもかかわらずわずか7年で3,400万人ものユーザーがつき、推定時価総額2.6兆円の企業に成長しました。

佐藤尚之さん(以下、佐藤): 「ターゲット(人)=戦略的にコントロールできる存在」と捉えがちな今までのマスマーケティングとは違う、これはまさに「ファンベース」の代表例でしょう。繕った言葉よりファンの自然な言葉こそが最強の広告パワーを持っているということです。

斉藤: 大きなパワーを持つファンベースを作るポイントは、「真実の瞬間」を重視すること。これは、当時経営危機だったスカンジナビア空港をわずか1年でV字回復させたCEO、ヤン・カールソンの言葉で、「顧客と社員が接する瞬間」を意味します。

ヤン・カールソンの書籍「真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか」の冒頭には、こんなエピソードが綴られています。

航空券をホテルに置き忘れたことに気が付いた搭乗客に対し、「ご安心ください。ホテルの部屋番号を教えてくれたらあとはこちらで手配します」と伝え、手元にチケットを届けたというわけです。正に顧客の脳内にスカンジナビア空港が刻み込まれた「真実の瞬間」です。このように、 顧客に際立った体験を与え、サービスの素晴らしさを印象付けることがファンベース醸成の鍵 となります。

この真実の瞬間には「組織の一貫性と社員の人間性」が求められます。そして、顧客との接点や意思決定が多様化している現在、その分だけ多様な「真実の瞬間」が生まれる可能性があります。そして、その多様な真実の瞬間に対して、多様な社員が際立った顧客体験を提供することが大切です。

これらは、従来通りの「トップの独断で過剰統制された組織」では実現できません。現場の社員ひとりひとりが専門性を持ち、協力し合って、やる気のある社員が学習して自走する組織になっていくことが求められます。

現場の社員一人ひとりが走りながら進化する 「学習し、共感し、自走する組織」 となれば、例えばクレームが来たとしても、学習の機会と捉え、対応策を提案してサービスの改善へつなげられるようになり、組織に一貫性と人間性が宿ります。

リーダーは「意味」と「希望」を伝えられる存在になろう

斉藤: ファンベースを実現できる組織について、もう少し具体的に考えていきましょう。

ポイントは3つ「共感」「愛着」「信頼」です。

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