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連載:第5回 Hop Step DX~デジタルトランスフォーメーションでつかむ次の成長

日本社会の DX の課題と、実現によるベネフィットとは?【新経済連盟 DX SALON SPECIAL イベントレポート】

BizHint 編集部 2020年12月28日(月)掲載
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コロナによって新しい日常が生まれ、デジタル庁創設に向けた動きのある今、日本はデジタル化の大きな転換点を迎えています。そこで、日本社会のデジタル化に向けたビジョンと課題について、デジタル改革担当大臣 平井卓也さん、新経済連盟代表理事 三木谷浩史さん (楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)が語り合いました。本記事は、2020年12月9日に開催された新経済連盟 DX SALON SPECIAL『日本社会のデジタル化はこう進める!』から講演の模様をレポートします。

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モデレーター:新経済連盟理事 由利 孝さん(テクマトリックス株式会社 代表取締役社長)

新経済連盟 DX SALON:新経済連盟が2021年から定期開催するオンラインサロン。デジタルトランスフォーメーション(DX)で先進的な取り組みをする大企業経営者や、政府のデジタル政策のキーパーソンをスピーカーとして招き、DXの成功事例、課題、そして世界の最新動向などについて、新経済連盟幹部と議論を交わす。また、DXに強みを持つ新経済連盟会員のベンチャー/スタートアップ経営者も多数参加し、オープンイノベーション促進の場としても機能する。座長は新経済連盟理事 鉢嶺登さん(株式会社デジタルホールディングス 代表取締役会長)。


世界の潮流は匿名経済から顕名経済へ。実名の行政サービスを実現するのが国のデジタル化。

由利孝さん(以下、由利):コロナ禍で日本のデジタル化の遅れが露呈しました。そして菅新政権は、政策の大きな柱にデジタル化推進を掲げています。平井さんは、デジタル改革担当大臣としてデジタル庁創設に向けた陣頭指揮をとり、準備を進めています。デジタル庁を含めた国のデジタル改革の方向性を教えてください。

平井卓也さん(以下、平井):私は以前 IT 政策担当大臣を退任するときの記者会見で、社会全体のデジタル化を推進するためのポジションを作るべきだと言いました。党に戻って徹底的な議論をし、国がDXをやるための「デジタル・ニッポン 2020」という政策提言を作成。提言内容は、デジタル庁のアイデアやデータ戦略、新たな組織とガバナンス、教育や医療のデジタル化などです。そして発足した菅政権で、自分で提言をしたポジションを自分が担うことになりました。

デジタル庁を一言でいうと、「今までのやり方を全て変える」に尽きます。全省庁のマインドセットを変える規制改革のシンボルであり、成長戦略の柱となるのがデジタル庁でしょう。2021年9月の発足を目指しますが、私の想定より早いスピード感で、まるで1年で上場企業を作るようなものです。リスクはありますが、やると決めた以上やり切るしかありません。

コロナによって日本のデジタル化が不十分であることに気づいたことで初めて、デジタル 化推進に対する国民の理解が得られました。2020 年は周回遅れのDX元年となりましたが、それもアドバンテージだと前向きに捉えて、短期で結果を出そうと進めています。

由利:デジタル化が進むと産業構造が大きく変わります。今後のデジタル化について三木谷さんはどのようにお考えですか?

三木谷浩史さん(以下、三木谷):今や IoT によってあらゆるものがインターネットで繋がり、AI やブロックチェーンが出現し、さらには中央銀行がデジタル通貨を出そうかという時代です。つまり、従来の社会を構成する要素と前提条件が、根底から変わろうとしています。そして時代の進化は、100年後の未来が10~30年で実現するスピード感です。しかし実際は、近く実現するレベル 5 の自動運転に対して自動運転を想定した法整備が追い付いていないように、国のシステムと民間の動きがフィットしないと、効率的なデジタル社会は実現できません。そして民間は、国のデジタル化をベースに、経済を動かしていくビジネスをどうやるかです。

平井:世界の潮流は、これまでの大量生産大量販売という匿名経済から顕名経済(実名経済)に変わろうとしています。言い換えれば、行政サービスを匿名から実名に変えるのが、行政のデジタル化です。

DX内製化と官民連携の推進が、日本全体のデジタル化を加速する。

由利:デジタル改革推進の阻害要因には、どんなものがあるでしょうか?

平井:国民がデジタル化に期待しないのは、日本の行政手続きがものすごく煩雑なのにもかかわらず、不便に慣れ過ぎてしまったこともあります。そのため、国のデジタル化は後回しになってしまった。一方民間を見ると、日本企業は、リスクに備えるイコールお金を貯める内部留保となっているところが多いと推察します。だから本気でDXに取り組む企業が少なく、遅れにつながったのだと思います。

DXをやっている企業のトップに話を聞くと、多くはシステム部門など誰かに任せています。しかし本気でDXをやるなら、三木谷さんのようにトップがテクノロジーを理解して大きな決断をしないと実現しないと思います。

三木谷:これは結構根深い話で、そもそも日本社会は一般的に変わりたくないのだと思います。過去に起きた社会や産業の大きな変化を振り返ると、明治維新などの大きな出来事をきっかけに社会が変化してきました。そのなかで出た様々な技術によって日本は発展し、そこで生まれたハンコや紙の文化を引き継いで今まで来た。コロナで世界中のデジタル化 が一気に加速したことを考えると、明治維新などと同じくらい強い影響を与えるインシデ ントです。

由利:日本のDXを強力に推進する上で、デジタル庁によって国や自治体のシステムを大きく変えるためには、「内製化」が不可欠だと思いますが、これは可能でしょうか?

平井:今のやり方を安定的に継続するのが行政だというマインドセットが変わらないと、構造を変えるデジタル化は難しいでしょう。それには、現場に納得してもらうことがとても 重要です。そこで、実際に現場で業務に当たる自治体職員と我々とが常にフラットにコミュニケーションできるプラットフォームを年内にでも立ち上げ、早々に話し合う場を設けます。DXは社会全体を変える大きな意味のあることですが、エンドレスで完成形がないため、ものすごく大変です。だから、常に新しい情報を敏感にキャッチし、取り入れられるかどうかを判断しつつ、会社のカタチをより良く変えていく、という癖をつけることがポイントだと思います。

三木谷:国がデジタル改革をやる意味は、生活が便利になるだけでなく、日本経済が発展して国民が豊かになることにもあると思います。そのためには既存の大手システムベンダーだけでなく、スタートアップやベンチャーをもっと活用すると、新しいやり方やイノベーションが生まれると思います。

平井:デジタル庁自体をスタートアップに近い組織にしたかったので、準備室のスローガンを「Government as a Startup」にしました。ヒト、モノ、カネ、基盤となる法律が何もないところからスタートして3か月、進むべき方向性ややるべきことが見えてきたので、あとは実現するまでしつこく諦めなかったら、上手く行くと信じています。

三木谷:「道路を作る」や、「橋を架ける」といったリアルなインフラは目に見えますが、デジタルなインフラは目に見えません。しかし、GAFAとMicrosoft合わせた5社の時価総額が東証一部上場の企業全ての合計を上回るくらい、デジタル化は桁違いな価値を生みます。その根幹になる基盤を国が今作ろうとしてくれているので、何としても成功してほしいです。そして大事なのは、その基盤を使って生活を便利にする活用、例えば医療情報の一元管理や、コストダウンする技術の発展などへ繋げていくことですよね。

平井:デジタル化の利便性や快適さを実感するのは、年数回の行政手続きを通してというより、民間のサービスを通してです。国が作った基盤を民間に開放するためのものとして、例えばマイナポータルAPIの提供があります。民間で国の基盤を積極的に活用したサービスを展開できれば、社会全体のデジタル化も一気に加速します。

国のデジタル化が完全仮想化やコンテナ化の方向に進めば、大幅なコストダウンと柔軟な行政サービスが可能に。

由利:楽天モバイルはネットワークの完全仮想化という大きなチャレンジで、コンテナ化などの新しい技術に取り組んでいます。国のシステムもこうした方向に進むと、新しい技術を使うことに対するベネフィットや経済的なインパクトはどうでしょうか?

三木谷:今は各自治体それぞれがハードウエアとソフトウエアを作っています。コンテナ化すると、自分で作ってもいいし他の自治体のものをそのまま活用してもよくなります。そもそもの考え方が全く変わるし、コストベネフィットは甚大です。もし日本がこれを実現したら、世界初のクラウドベース国家になります。

平井:クラウドベースの基盤を作ることは、もはや世界的な合意と言って差し支えない状況で、少なくとも今後20~30年はクラウドベースになると思います。国が完全仮想化やコンテナ化に取り組めば、行政コストの削減と行政サービスの柔軟性を同時に実現できます。

三木谷:さらにコンテナ化すると、利用者の増減に合わせてコンテナが自動的に増減できます。システムメンテナンスに AIを活用すると更に効率的で、ハードウエアのメンテナンスが不要だと圧倒的なコスト削減になります。ちなみに楽天モバイルのシステムメンテナンスはほぼ自動化されてきており、エンジニア数は他社よりも圧倒的に少ないです。

平井:楽天モバイルは自身でクラウドを組み上げましたが、日本にもクラウドベンダーがどんどん出てきてほしいですね。

日本の未来を切り開くカギであるデジタル化の実現には、海外人材も視野に。

由利:DXを進めていくためには人材が問題になります。それについてどうお考えですか?

三木谷:楽天モバイルは、エンジニアの大半が海外人材です。日本はエンジニア(技術系学科を卒業した人)の母数がアメリカや中国など諸外国と比較して圧倒的に少なく、このまま日本人だけでデジタル化を進めるのは厳しいと思います。

また、私は一般に「起業家」と訳されるアントレプレナーの本当の訳語は「実業家」だと思っています。そして、大小様々な事業を営む実業家のもとで生み出される、新しい技術やイノベーションによって、日本の社会は成長していけると思います。世界に打って出るという気概とチャレンジ精神を持つ実業家がもっと出てくれば、日本が世界をもう一度リードする可能性もあるのではないでしょうか。

平井:国家公務員に外国人は採用しません。一方で、デジタル庁はプロジェクトベースで動かすので、プロジェクトに協力してくれるエンジニアに国籍は関係なく参加してもらいたいと思っています。エンジニアたちにプロジェクトに参加してもらうには、魅力的に感じるようなオーダーを出していくことが重要だし、マネジメントに相応しいリーダーを置くことが必要だと考えています。

石油に代わる資源がデータだとしたら、石油のない日本にとってそれはチャンスです。データをフルに使うことができたら、日本流の新しい経済が生まれると思います。それを実現するような実業家がもっと出てこられるように、後押しをしていきたいですね。

当日の様子は、YouTube の新経済連盟のアカウント「JANE Channel」にてアーカイブ配信中です。
https://www.youtube.com/watch?v=U6LJPBG8cro&feature=youtu.be

(文:川畑文子 編集:上野智)

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