連載:第13回 Hop Step DX~デジタルトランスフォーメーションでつかむ次の成長
超優秀な自社システムの公開で、業界まるっとデジタル化。半信半疑だった課長は、社外を見て何を確信したか
まだITやDXなどの言葉もない30年以上も前から、金型製造の上流から下流までを一気通貫でデジタル管理してきたのが、新潟市に本拠を構える株式会社ツバメックス。同社では、「TADD (Tsubamex Auto Die Designsystem)」と呼ばれる超優秀な社内向けのものづくりシステムを、オープンプラットフォーム化して外販する取り組みをスタート。当初は「外販は無理」「自社のノウハウなんて売れるのか?」という状態だったものが、様々な課題を乗り越えながら一歩一歩前に進んでいます。今回は新しい挑戦をする際の手順の踏み方や、それを経たからこそ見えたものについて、同社開発部課長・荒井 善之さんと、DX推進をサポートするINDUSTRIAL-X代表取締役 CEOの八子知礼さんに伺いました。
(写真左)
株式会社ツバメックス
開発部課長 荒井 善之さん
(写真右)
株式会社INDUSTRIAL-X
代表取締役CEO 八子 知礼さん
自社システムの開発部署が、そのシステムの外販に挑戦
――貴社の事業概要と荒井さんのご経歴について教えてください。
荒井 善之さん(以下、荒井): 当社は新潟県新潟市に本社を構え、自動車・建築資材・家電製品等のプレス金型やモールド金型の製造・販売、プレス品やプラスチック成形品の量産を展開しています。
私は1988年に新卒で入社しました。入社後5年ほどはCADのオペレーターとして、NCデータ(NC工作機械を制御するためのデータ)の提供を担当していました。その後、開発部に異動。以来、CAD/CAMシステムの選定や導入、社内システム「TADD(Tsubamex Auto Die Designsystem)」の機能拡充やメンテナンスを主導してきました。
――「TADDシステム」とは、どのようなものでしょうか?
荒井: 「TADDシステム」は、営業の受注・仕様情報から三次元設計と資材購買、生産設備連携、加工状態の可視化、稼働実績収集までを一気通貫でデジタル化したツバメックス独自の自動金型設計支援システムです。
1982年にCAD/CAMシステムが導入されて以来、社内向けに機能拡充・拡張を繰り返してきました。iPadがリリースされた際にはそれに対応するなど、機能はもちろん現場での使いやすさも追求しています。
――貴社は2019年にサンスターグループに入られました。荒井さんの業務内容や開発部の立ち位置にはどのような変化があったのでしょうか?
荒井: 目指すべき姿、仕事の幅が一気に広がりましたね。それ以前の開発部の目標は、「自社のためにTADDシステムを充実させること」でした。そこに 「TADDシステムを社外の方にもご利用いただく」という目標が加わりました。 具体的には、「TADDシステム」のクラウド化と社外販売の推進です。
加えて、サンスターが提供するオーラルケア、健康食品などを扱う自動販売機の製造・プロデュースにも我々開発部が関わるようになりました。どちらも、まったく初めての業務でしたね。
――今までとはまったく違う仕事、いかがでしたか?
荒井: 今まではB2Bの仕事しか経験していませんでしたので、B2Cである自動販売機事業はターゲットやアプローチ方法がまったく違いました。はじめて取り組んだ市場調査や、社長から直接講習を受けたマーケティングの考え方など、B2Cの発想や施策は新鮮でしたね。
あくまで社内向けのシステム。「外には売れない」と考えていた。
――「TADDシステム」のクラウド化・外販への転換については、INDUSTRIAL-Xの八子社長のご意見もあったとか。その背景を教えていただけますか。
八子 知礼さん(以下、八子): 「TADDシステム」は、あくまでも自社のために作られていたもの。 外部に販売するという考えはツバメックス社には元々はなかった ようです。
ただ、「TADDシステム」が実現している世界。営業情報に基づいて自動的に3次元設計や生産指示をし、リアルタイムで原価計算までをデジタル処理する仕組みは、私が知る限り日本には一社もありません。
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バックナンバー (16)
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