連載:第8回 流通小売の未来
従業員派遣、出向、レンタル移籍の違いとは?事業存続と雇用の両立を目指して
「雇用シェア助成金」創設のニュース等、コロナ禍で「従業員派遣」や「派遣」などを耳にすることが増えた。この動きの背景には、従業員の雇用維持はもちろん、経営側にとっては運営コストの低減といった目的がある。飲食店や居酒屋の倒産件数はいよいよ増加が顕著になってきている。企業の延命と従業員の雇用、その両立のための取り組みをレポートする。
変動費から固定費に変化した人件費。維持しても削っても地獄
かつての外食業界、特にチェーン経営をしている企業では、人件費は変動費として考えられてきた。飲食店は繁閑差の大きいビジネスモデルである。一日の中でも、忙しい時間帯もあれば暇な時間帯もある。一週間、一カ月、一年単位で見ても、イベントや休暇などによっても繁閑の差が大きい。
その繁閑差に対応するため、外食企業では社員と、それを支えるアルバイト・パートなどの非正規雇用を組み合わせ、仕事の量に合わせてシフトを組んできた。つまり、人件費は繁閑によって変動するコストということだ。
忙しい時期には人件費が増えるが、そうではない時期には削る。状況によって、ある程度コントロール可能なコストだったのだ。飲食店を運営する上で重要な指標の一つであるFL(フードコストとレーバーコスト)コントロールも、こうした考え方のもとで成り立つ。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「人件費は固定費」であるという認識に変化した。なぜか?理由はここ数年の人手不足にある。コロナ禍で影を潜めているが、外食業界は長い間、人手不足に苦しんできた。その原因には労働環境の悪さや給与水準、定着率の低さなど、いくつもの要因が絡む。そこに少子高齢化も加わり、いよいよ人手不足の問題は深刻さを露呈した。
飲食店ではスタッフに辞められると、次がなかなか採用できない。そこで給与を上げたり、労働環境を整えたり、正規雇用化するなどして人材の定着に努めた。
そこにコロナ禍が襲う。すると、人材の定着を図るために使っていたはずの人件費が「負担」に変わった。これを削ることは人材の流出を意味する。一度手放した人材は、状況が落ち着いた後に戻ってくる保証はない。人手不足倒産という言葉もある。つまり、雇用を維持しても地獄、雇用を削っても地獄のような状況に置かれたのだ。
コロナ禍での外食企業。従業員の雇用を守る取り組み
とはいえ、事業運営のための人材を確保し、雇用を守ることは重要である。コロナ禍で行われた二つの企業の取り組みを紹介したい。
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