連載:第28回 組織作り その要諦
店長候補の大量退職を機に生まれ変わった美容院、「社員志向」の組織改革
大阪の郊外、交野市にある美容院「ビューティサロンモリワキ」。この地域で7軒のサロンをはじめ貸衣裳店やリフレクソロジー専門店を経営する中堅企業です。美容業界といえば労働環境が未整備で社員の定着率も低いイメージがありますが、同社ではある出来事をきっかけに経営方針を転換。CS(顧客優先)からES(従業員優先)へと価値観を変えることで、社内の空気は一変し、社員が生き生きと働ける組織になりました。現在は101名のスタッフを抱え、年商5億円をあげるまでに成長。2019年には第9回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査委員会特別賞も受賞しました。会社の成長と働きやすい環境づくりを両立するヒントを代表取締役社長の森脇伸一さんにうかがいました。
株式会社ビューティサロンモリワキ
代表取締役社長 森脇伸一さん
1956 年大阪市西区生まれ。国立鳥羽商船高等専門学校を卒業後、日本汽船株式会社に入社。外国航路の機関士として従事。その後26歳で結婚。妻の家業であるビューティサロンモリワキに入社し、マネージャー職に就く。2019年には第9回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査委員会特別賞を受賞。2020年2月に社長に就任。
右肩上がりの成長から一転。店長候補が大量離職
森脇伸一さん(以下、森脇): 当社は1952年(昭和27)に先代の森脇茂・登美子夫妻が大阪市西区で美容院を開業したのが始まりです。当時はわずか6坪の小さな店舗でした。1972年(昭和47)に郊外の交野市へ移転。店の周りは田んぼや畑ばかりの時代でしたから、最先端の技術やサービス手法を学んでいた美容院は珍しかったのでしょう。開店と同時に大盛況でした。朝8時から20〜30人のお客さんが行列をつくって開店を待つほどです。その後は交野に拠点を置き、市内各地に出店していきました。業績は右肩上がりに伸び、創業以来の最高益を更新し続けていました。
しかし、2002年に事態が一変したのです。入社4年目という若手の社員が立て続けに8人も退職してしまったのです。「将来は店長候補に……」と目論んでいた社員たちが理由も言わずに辞めてしまったことに、大きなショックを受けました。
なぜ辞めてしまったのか? 理由は働き方にあったと思います。当時は割引キャンペーンを頻繁に行っていたおかげでお客様が押し寄せ、社員は連日夜11時まで働くような状態でした。その分、社員には多額の給与・賞与を支払っていました。1年間のボーナスで新車が買えるほどの額です。
しかし、社員が求めていたのはお金ではありません。連日深夜まで働いていれば、疲労が限界に達するのは当たり前。社員は過酷な環境に耐えられずに辞めていったのです。当時私は「業績を伸ばすことが会社の使命だ」と思いこんでいました。給与をたくさん支払えば社員は幸せ。そう信じていたのです。でも大きな間違いでした。好調な業績にかまけて、社内の様子をしっかり見られていなかったのです。
「従業員満足」の観点から、サービス・労働環境を整備
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