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連載:第30回 IT・SaaSとの付き合い方

最後は、折れない心。組織文化を変える「電話・FAX・メール」からの脱却。実際の推進者の頭の中を覗いてみた。

BizHint 編集部 2024年6月11日(火)掲載
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デザイン系サロンブランド「Ash」を中心に125店舗の美容室を展開する株式会社アッシュは「社内に情報が行きわたらない、連絡はメール・電話・FAX、とにかくスピードが遅い…」といった組織課題を抱えていました。その解決に動いたのが、IT/システム部門を統括していた大山高寛さん。様々なコミュニケーションツールを比較・検討する中で、Talknoteというツールを採用。組織にシームレス・リアルタイムの情報共有を定着させていきました。その過程での様々な判断の背景、会社・社員とのやり取り、組織に起こったことを聞きました。

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株式会社アッシュ
取締役 大山 高寛 さん


組織に蔓延していた情報伝達「4つの問題」

――貴社はもともとどのような組織課題を抱えていたのでしょうか?

2018年ごろまで、当社では情報伝達の手段として、主に電話とFAX、メールが使われていました。

そしてそれによって、4つの問題が慢性的に生じていました。

  1. 情報が行きわたらない
  2. 情報の質がバラバラ
  3. 適切な取り扱いができない
  4. スピードが遅い

1つずつお話ししていきます。

1.情報が行きわたらない

当時、当社には180名ほどの本部社員がいましたが、事業部ごとの「縦割り」での情報管理・伝達がなされていました。

例えば1つの事業部のポジティブな情報を横展開しようとしても、電話でそれは不可能ですし、メールでうまく機能しません。仮にメールで情報共有がなされても、毎日たくさん届くメールの中に情報は埋もれてしまっていましたし、現場では「○○さんに言っておいたから」というやり取りが日常でした。

どんな情報が、どこまで届いているのかわからない。そもそも情報が全員に行きわたっているかどうかも怪しい状況でした。

2.情報の質がバラバラ

例えば会社の上層部が発した情報はメールや電話、はたまた口頭で、それこそ伝言ゲームのような形で組織内に拡散されていました。

ですので、情報を受け取った人のリテラシーや解釈、説明能力によって伝わり方が変わってしまっていました。出所は同じなのに、部署や店舗によって伝わる情報の内容が異なっていたのです。

「この事業部は情報がしっかり伝わる」「このチームは伝わらない」という差が明確にあったのですが、それを現場やマネージャーの責任としてしまうのは、会社として健全ではありません。「情報が正しく伝わる仕組み」を組織として作る必要がありました。

3.適切な取り扱いができない

「その情報をどこまで伝えていいのか」「どこに出してはいけないのか?」という部分でもリスクがありました。最終的に「個人のリテラシー」によってしまっていたのです。

「この情報をもらったけど、どうしていいかわからない」と、そこで止めてしまったり、時には伝えてはいけないところにシェアしてしまうことも…。機密情報にあたるものがいつの間にかメールでやり取りされていたり…。

特に、一部の美容室ではプライベートのLINEで業務連絡が行われていたこともあり、情報漏洩のリスクをはらんでいました。当社では紙・FAXとハンコで社内申請の手続きを行っていたのですが、外出している上司に押印依頼・許可をもらうために、申請書を撮影してLINEで送付していたこともありました。

幸いヒヤリハットで済みましたが、そもそもこの情報の取り扱い方自体がNGです。プライベートLINEでの情報伝達は会社側が把握できません。会社はもちろん、社員を守るためにも、こうした環境を放置しておくことはできませんでした。

4.スピードが遅い

紙や電話、FAXでの情報伝達では、行きわたる速度がとにかく遅いです。多くの人・プロセスを経る分、ミスも起きますし、手戻り・修正も頻発します。

特に紙については、とある1つの出来事で「もう、やめよう」と腹が決まりました。私だけでなく、経営層も含めです。

それは、とある本部社員が書類を会社に提出するために3回も行ったり来たりをしていたこと。聞けば、書類に不備があったり、無くしてしまったりしたと…。

書類のやり取りはただでさえ時間がかかるのに、こうしたミスによってどんどん時間が取られてしまう。その分、お客様と向き合う時間が減りますし、残業の増加にも繋がります。

これはたった一人の本部社員のケースでしたが、似たようなことが何回も、また他の社員や美容師さんでも起こっていると考えると、まさに氷山の一角です。

当社にとって最も大切なのは美容師さんですし、最も避けたいのは「美容師さんが困ること」。これは経営層が特に気にしている部分でした。

情報収集。商談を進めるパートナーをどこで見極めたか

――それらの課題を解決するために、コミュニケーションツールを導入されます。選定・検討はどのように?

最終的にはTalknoteを導入するに至るのですが、最初はその存在を知りませんでした。

ただ、チャットツールの快適さ、有用性は感じていたので、会社で使えるような最新のツールをインターネットで検索するところから始めました。とりあえずいろいろなツールの資料をダウンロードしては、仕様や機能を比較しました。比較サイトも使いましたね。

情報収集段階ですし、連絡があればとりあえずお会いして話を聞きました。その中で、検討候補を絞り込んでいきました。

――候補の絞り込みについて教えていただけますか?

機能面も並行して見てはいたのですが、結果的に大きかったのはベンダーや代理店の方の対応です。問い合わせをしたら電話やメールで連絡が来ますが、そこで話が嚙み合わなかったり、ぞんざいな対応をされたり、レスポンスの遅さや無視されたものは自然と候補から外れました。「連絡があればお会いして話をする」というスタンスではありましたが、忘れたころに来たような連絡には応じませんでしたね。

Talknoteについては、とても印象に残っています。まず問い合わせ後の連絡が早かったですね。そして、おそらくインサイドセールスの方だと思うのですが、製品の理解度が非常に高いと感じました。こちらの状況・課題もしっかりヒアリングしてくれて。

そして後日、営業の方が来社されたのですが、当社のことや課題感をある程度理解された状態で来てくださいました。そうした一連の対応の質の高さは、素直に良いと感じました。

同様に他社からの提案も受けましたが、前には進みませんでした。特に、機械的な機能説明だけをされる提案では、一緒に仕事をしたいとは感じませんでしたね。

ツール選定のポイント。設計思想は企業文化に合っているか?

――Talknoteの採用。機能面ではどのような優位性が?

大きく2つあります。

1.オープンで見られる

設計思想に行き着く話かもしれませんが、Talknoteの特徴的な点が「必要な情報は個人向けに発信されていながらも、それ以外の情報も基本的にすべて見られる」こと。

つまり、自分の所属する部署やグループ以外の情報も、見ようと思えばすべて見られるわけです。このオープンさは一番の決め手となりました。

当社では、情報の縦割りや制御できない階層化を避けるためにコミュニケーションツールを導入しようとしていました。それなのに、導入するツールの思想がクローズドすぎると、結局は形を変えて旧弊が残ってしまうと考えました。それでは意味がありません。

もちろん閲覧制限をかけることもできますが、基本的には「オープン」。閲覧制限については、最小限の運用ルールで管理するようにしました。

他方、設計思想として個々のクローズドなやり取りをベースとしているツールに「オープンにしましょう」というルール・設定を持ち込むのでは、運用の負担が全く違いますので。

2.自由度が高すぎない

比較したツールの中には、多様な機能があり、API連携によってどんどん便利にできるものもありました。例えばSlackなどはそのカテゴリーかと思います。

ただ、当社の企業文化やITリテラシーを考えた時に、あまりにも自由度が高いと逆に社員が迷ってしまい、いろいろなルールを設けなければならない可能性を感じました。

ルールを作る、それを社員に定着させる、ルール違反に注意を促す、ルールを見直す…こうした負荷は馬鹿にできません。最後は人と人に行き着き、感情面での別の問題にまで発展する可能性もあります。

私としては「程よい自由度の中で、誰もが自由に使える」というのが、しっくりくる着地だと考えました。美容師さんたちをたくさんのルールで縛るというのも違いますよね。言わば「企業文化に合う」と感じたのがTalknoteでした。

ある程度ITリテラシーが高い人からは「なぜSlackじゃないの?」という声もありました。しかし「みんながみんな、使いこなせると思う?」と逆質問すると腹落ちしてもらえました。

――情報システム部門とはどのような調整をされていたのでしょうか?

ツールの選定・検討は基本的に私一人で進めましたが、ガバナンス面で安全性は担保しなければならないので、そういった部分は情報システム側と連携していました。

当時の当社の情報システム部門の役割、一番大事な仕事は「今あるものを守ること」でした。いわゆる店舗運営のためのシステムインフラの保守・整備的なものですね。

社内のコミュニケーションを変えることは、社内の雰囲気や価値観を変えることでもあるので、情報システム部門が旗を振る形になると、どうしても手を付けづらい部分があります。

ですから、あくまで私が独立した立場でプロジェクトを進行しました。そうすれば、情報システム部門が各所の板挟みになることもありませんので。

上層部の決裁を得るために「絶対に押さえるべき」ポイント

――導入にあたって社内から反発はありましたか?

変化への抵抗を感じていた人も一部にはいましたが「コミュニケーションを円滑にするため」「売上・生産性を上げるため」といった目的を伝えれば、基本的には協力してくれましたね。組織内にふわっと「メールとか電話とか…ちょっと古いよね」という雰囲気が漂っていたことも背景にはありますが。

また反発とは少しニュアンスが違いますが、社長の同意を得る際にはちょっと違ったアプローチが必要でしたね。最初は「メールと何が違うのかよくわからない」と、必要性をうまく伝えることができませんでした。

ただ、上述したエピソードのような「美容師さんの働きにくさを解消できる」といった具体例や、無駄なコミュニケーションから発生している残業代や人件費などのコストを説明することで、Yesをいただけました。

「美容師さんは毎日予約をたくさん入れて売上を伸ばそうとがんばってくれているのに、会社はたった1枚の紙を出すために美容師さんにこれだけの時間と手間をかけさせている。それはお客様と向き合う時間を削り、さらには残業時間の増加に繋がっている。それでいいんですか?」と訴えました。

本件に限らずですが、当社の上層部の納得を得ようとすれば「美容師さんが働きやすくなる」ということは絶対に押さえるべきポイントです。いわゆる「会社が最も大事にしているもの」ですから。

組織への定着と他のツールとの連携。ベンダーとの二人三脚

――組織への定着を図るための施策は?

あまり大掛かりなことはやっていなくて、説明会を一度開催したくらいです。そして投稿ルールを朝礼でアナウンスしました。

ルールについては、個人や部署ごとで暗黙のルールができないように気を遣いました。中でも「マナー」の部分は個人ごとで受け取り方が違います。そこで齟齬が生じないように、細かい部分まで明記しました。

例えば、
・メッセージの最初に「お疲れ様です」は書かなくてOK
・スタンプでの返信は失礼にあたらない
・わからないことがあればオープングループで質問する
などです。

メールを使っていないにメールでのマナーを持ち込んでしまう、またそういった空気感が作られることは特に避けたかった部分ですね。そして使い方についての質問の場をオープンにすることで調べればすぐにわかるようにし、同じ質問が何回も出ることを防ぐなど、説明・運用する側の負担を減らすことを意識しました。

――Talknote導入後の変化については?

まず、本社や支社、事業部の垣根を越えて、情報のやり取りが時差なくできるようになったことは大きな変化でした。美容室・美容師さんへの連絡も即座に、同じ質の情報を届けられるようになりました。

そして社長もしっかり活用してくれて、自ら発信してくれるようになりました。経営陣からすれば、各部署や現場のコミュニケーションをかんたんに見られるようになり、人伝に様子を聞くこととはまた違った新たな発見があったのではないかと思います。

そして、美容師さんの負担も軽くできました。それまで紙ベースで、FAXで行っていた各種申請は「LINE WORKS」をTalknoteと連携することで解消しました。

美容師さん側が申請内容をLINE WORKSのbotに放り込むだけでTalknoteに集約され、本部に届く仕組みです。これは本部側の確認・事務処理の効率化にも寄与しました。

――他のツールとの連携などはどのように?

基本的には私が進めるのですが、都度ベンダー側(Talknoteの担当者)に相談をしています。

ベンダー側には機能や使い方に関する質問をしたり、活発に動いていないグループの一覧データを3ヶ月に1回ほど出してもらってグループを整理したりと、細かい部分までサポートいただいています。

こちらから「こういうことがやりたい」と伝えると、がんばって機能改善してくれる様子が感じられ、本当にありがたいです。

印象に残っているのは、勤怠や精算などに使っている他のシステムと連携して、Talknoteに通知が来るようにしていただいたこと。その時はおそらく当社用に、しかも2日ほどで対応してくれて、そのスピード感に驚きました。私の記憶が正しければ、この機能はその後、サービス全体のアップデートに組み込まれたと思います。

――商談・選定時に仰っていた対応の質の高さが、導入後にも続いているのですね。

そうですね。あくまで当社の担当の方しか見てはいないのですが、「良い」と思ったことを担当者レベルで判断して動けるスピード感は素直に素晴らしいと感じます。

商談時から「ユーザーの声をもとにサービスを作っている」と仰っていて、こうした一連の対応の質・速さはそれを証明するものでしたね。

少し話はそれますが、Talknoteは「エンゲージメントツール」と謳っているだけあって、これまでに担当いただいたどの方からも、エンゲージメントの高さが伝わってきました。サービス内容・機能はもちろん、会社の価値観が社員まで浸透しているという点について、あらためて好感を持っています。

最後は「折れない心」。コミュニケーションツール導入に欠かせない3条件

――ご経験を踏まえて、コミュニケーションツールを導入・定着させるために「やったほうがいいこと」「大切だと考えること」があれば教えてください。

あくまで私の経験においてではありますが、すでに触れたエピソードも含め3つほどあります。

1.会社や経営陣が最も大事にしているポイントを押さえる

上述の内容と重複しますが、当社のプロジェクトにおいて決裁権は社長や経営陣にありました。そして決裁をいただけた理由を突き詰めると「美容師の働きやすさに繋がるから」に行き着きます。これは当社が最も大事にしていることです。

様々な業務ツールには、無駄の削減、費用対効果、売上向上など…いろいろなメリット・訴求ポイントがあると思いますし、巷ではそういったPRが数多くなされています。しかしそれらだけを並べても、話が進まないことは往々にしてあるはずです。

それは「会社として最も大事にしていること」への紐づけができていないからかもしれません。それを押さえるだけでも前に進みやすくなると思いますし、そもそも「会社を変える」取り組みなのですから、むしろ必ず押さえるべきポイントだと思います。

2.「みんなが使っている」事実自体に価値がある

新しいサービスやツールを導入すると「どんな成果が出たか」といった結果は、特に経営層は重視しますし、重視されて然るべきだと思います。

しかしコミュニケーションツールにおいてはその一歩手前、つまり「みんな使っている」という事実自体に十分な価値があるということを経営層に伝える、感じてもらうことも重要だと思います。

Talknoteで言えば、みんなが使っているからこそ、そこに情報を集約させることができましたし、それによって現場で起こっていることを経営層がリアルタイムで見られるようになりました。この体験は、導入前にはあり得なかったことです。

では「みんなが使う」ために何をするか?例えば、部署ごとにグループを作成して必ずそこでやり取りしてもらう、勤怠連絡や業務連絡など日々必ず発生する作業はそこで行うようにする、といった仕組みづくりです。

こうした感覚を味わってもらうことは、Talknoteに限らず、新たなツール導入をする際に大事なことだと思います。

3.折れない心

最後は精神面の話になって恐縮ですが、ここまで当社のコミュニケーション変革についてのお話しをしてきたものの…実はTalknoteの導入までに、私の中では4年かかっています。

私は2014年に縁あって当社に入社し、主にIT/システム面から会社の成長をけん引していくことを求められる立場でしたが、すぐにこうしたツールを導入できたわけではありません。

2014年当時から「電話はやめよう」「メールは古い」と常に社内で口にしていたものの、周囲の反応は『会社は回っている』『今はその時じゃない』といったものでした。

「変化するタイミング」があることはわかっていたものの、やはりもどかしさはありました。それでも「古い」「時代遅れ」「そろそろ卒業しよう」「変わらないとかっこわるい」とかたくなに言い続けました。

そのうち、会社や社員の考え方が徐々に変わり、それらが醸成され「なんとなく変わらなければならない雰囲気」が社内にできあがっていったように思います。この雰囲気づくりが、組織を動かすためには実は重要だと思います。

もし私が、何度かの反対であきらめていれば、当社は電話とFAXのままだったかもしれません。当社で働く本部社員は、今でも紙の書類を持って何往復もしていたかもしれません。

そういった意味で「折れない心」というのは、欠かせない条件だと思いますね。

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