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連載:第64回 経営危機からの復活

龍角散8代目が成し遂げたV字回復。「老舗の驕り」こそが最大の敵だった

BizHint 編集部 2024年5月21日(火)掲載
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株式会社龍角散の代表取締役社長 藤井隆太さんは、年商40億に対し、40億円もの負債を抱えていた危機的な状況のなか社長に就任しました。8代目として社長の座に就いた藤井さんは江戸時代から伝わる看板商品「龍角散」に会社の生き残りをかけて挑みます。老舗の驕りに胡坐をかいていた経営陣、危機感のない社員。藤井さんがどのようにして会社を年商240億円ものV字回復に導いたのか、お話を伺いました。

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株式会社龍角散
代表取締役社長 藤井隆太(ふじい・りゅうた)さん

1959年11月9日 東京都生まれ。1984年桐朋学園大学音楽学部研究科修了後、小林製薬に入社。三菱化成工業(現・三菱ケミカル)を経て、1994年龍角散入社、1995年、株式会社龍角散の8代目代表取締役社長に就任。(公社)東京生薬協会会長、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会臨時委員、東京商工会議所一号議員、日本商工会議所社会保障専門委員。東京生薬協会会長として2017年度 薬事功労者厚生労働大臣表彰受賞。


倒産待ったなし、危機感のない組織で生き残りをかけた経営改革

――社長就任時の会社の経営状況について教えてください。

藤井隆太さん(以下、藤井): 私の入社する前から会社は緩やかに衰退していました。1994年は一番ひどく、年商40億に対し、40億円もの負債を抱え、あと3年もつか、5年生き永らえればいい状況でした。売上はずっと落ち込み続け、在庫も貯まる一方だから工場も止めたまま。もうどうしようもない状況でした。

一方で、社内には危機感なんて微塵もなくて、当時100名くらいいた社員も「オーナー企業だから埋蔵金(個人資産)でなんとかするだろう」という意識が蔓延していたんです。

――経営難の原因についてはどのように捉えていましたか?

藤井: 一番の原因は事業を広げすぎたことにあると思っています。当時の会社の戦略は、風邪薬・胃腸薬・精力剤など新商品に活路を見出す「大企業戦略」を採っていました。大企業戦略とは新規事業、新商品など横展開で事業を広げていくやり方を私はこう呼んでいます。

ただ、私はこのプランには否定的でした。

中小企業が新しい事業に突破口を求めるケースは珍しくありません。しかし、多くの場合は上手く行きません。

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