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2018年11月17日(土)更新

ジョブ型・メンバーシップ型

日本の雇用を説明する上で欠かせない用語がジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用です。ジョブ型雇用とは職務や勤務地を限定した雇用契約を指します。一方でメンバーシップ型雇用とは職務や勤務地、労働時間などが限定されない雇用契約を指します。今回は今後の雇用のあり方に触れつつ、それぞれのメリット・デメリットをご紹介いたします。

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ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用は、諸外国が主に採用している雇用契約であり、自分自身の専門スキルを活かして、職務や勤務場所を絞り込むことができる、限定正社員または有期契約労働者を指します。

企業は専門性の高い優秀な労働者を確保できます。一方で労働者は自らの職務を提示することができ、職務記述書に記載された内容や条件以外のことを行う義務は発生しないので、ライフワークバランスが取りやすい傾向にあります。

企業側はこの職務記述書に書かれた職務を一方的に変更ができませんが、企業の経済状況により、労働者に依頼していた仕事がなくなった場合は配転を行う必要がありません。労働者にとっては明確に職務と勤務場所が定められていることから、労働者は景気の動向によっては失業するリスクがあります。

日本はメンバーシップ型雇用が主流ですが、急速にグローバル化する世界経済に対応するための雇用契約として、ジョブ型雇用が注目を集めています。また、2013年6月に内閣府が管轄する規制改革規制改革会議で、ジョブ型正社員の導入における雇用ルールづくりを本格化させており、今後の新しい働き方として、浸透していくとされています。

【参考】内閣府 規制改革会議雇用ワーキング・グループ報告書

メンバーシップ型雇用とは

日本企業に多く見られる雇用契約の一つで、日本特有の年功序列終身雇用を前提にした、職務や勤務地を限定しない無限定正社員を指します。このメンバーシップ型雇用は新卒一括採用で大量に人材を獲得し、OJT社内研修で教育を行い、職務に必要な知識と経験を積ませます。

職務や勤務地の範囲を限定していないことから、基本的には企業の都合により、自由に配置転換を行えるのが特徴です。上場している大企業に多い日本的雇用で、総合職に多く見られる雇用形態でもあります。

また、表面化している長時間労働による過労死や、正規労働者(正社員)や非正規労働者(契約社員や派遣社員)の待遇格差の原因ともされています。ジョブ型雇用の反対の働き方として議論され、日本型雇用システムを語る上では欠かせない用語となっています。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いとは?

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用には、仕事に対する考え方や報酬、採用方法、異動や解雇、教育面において、違いがあります。

仕事に対する考え方の違い

ジョブ型雇用の仕事に対する考え方は、職務やポジションを明確に定めています。企業と労働者の間では労働時間や勤務場所なども決まっており、企業は職務記述書に記載されている仕事以外は依頼できず、従業員も職務記述書以外の仕事を行う義務はありません。

一方でメンバーシップ型雇用の仕事に対する考え方は、職務範囲を明確に定めずに、企業や従業員が必要と判断した場合はその仕事内容に関わらず、業務を執行します。また、働く時間も限定されていないため、必要とあれば、残業も行います。

報酬における違い

ジョブ型雇用の報酬は職務給(担当する業務内容の評価で給与を与える)を採用しています。あくまで従業員の能力に対してのみ支払われます。一方、メンバーシップ型雇用は職能給です。この職能給は勤続期間によって、給与が定められます。年功序列を基にしているのが特徴です。

採用方法における違い

ジョブ型雇用は企業側に欠員が出た場合、欠員が出たポジションに相応しい能力を有する求職者を採用します。一方でメンバーシップ型は具体的な能力ではなく、人格やコミュニケーション能力などの潜在能力で採用を行います。 新卒一括採用がメンバーシップ型雇用の採用方法といえます。

異動や解雇における違い

ジョブ型雇用は職務や勤務地が明確に定められているため、基本的に異動や転籍はありません。企業の業績悪化や担当する職務が必要なくなった場合は、異動や転籍はなく、契約解除(解雇)が進むのが一般的です。

一方でメンバーシップ型雇用は明確に職務や勤務地を限定していないため、企業が必要と判断すれば、異動や転籍に従う必要があります。日本の労働法では従業員の労働権利が欧米諸国よりも固く守られているため、企業側に明確な理由がない限り、一方的に解雇ができません。

【参考】厚生労働省 労働契約の終了に関するルール

教育面における違い

ジョブ型雇用は求職者が有する能力で雇用するため、企業が従業員を教育する義務はありません。そのため、ジョブ型雇用で採用された従業員は、基本的に企業外教育となります。

一方でメンバーシップ型雇用ではOJTや定期異動などのローテーション人事で現場を経験させる社内教育が一般的です。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用が注目される背景

急速に経済がグローバル化することで、独自の雇用制度を採用していた日本社会も変わらざるを得ない状況となっています。政府が掲げる働き方改革においても、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用に注目が集まっています。

日本型雇用とメンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用は年功序列終身雇用を前提にした日本型雇用システムから派生したといわれています。この日本型雇用システムは従業員が生活の心配をせずに、業務に集中できるように、年度毎に昇給をする定期昇給制度や定年まで雇用を保証するというメリットを与えてきました。メンバーシップ型雇用は、この日本型雇用システムよりも、さらに一歩踏み込んだ定義がなされています。それが「職務範囲や働く時間、勤務場所を限定されない」という点です。自分自身の業務範囲が明確に定められていないため、企業や従業員が必要と判断すれば、いかなる仕事でも執行する必要があります。しかし、1991年にバブル景気が終焉を向かえ、デフレが続く不透明な時代となりました。企業側も従業員に対して、 年功序列終身雇用を保証することが難しくなりました。しかし、メンバーシップ型の働き方はそのまま継続されている状態が続いています。

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移り変わり

年功序列終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用は、長時間労働の常態化やブラック企業の台頭などの原因とされています。厚生労働省は産業競争力会議で、ジョブ型雇用の働き方を拡大した新たな「日本的就業システム」の構築の必要性を提唱しており、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行が必要と判断しています。

また、正規雇用と非正規雇用の間で賃金や福利厚生などの待遇に格差が広がっていることも問題視されています。そのため、今後は同一労働同一賃金の普及の促進も急務となっています。この同一労働同一賃金は職務制を採用しているジョブ型雇用と相性が良いとされています。

今後の日本の労働市場は労働人口の減少が確実になっており、政府は女性や高齢者を積極的に活用する「一億総活躍社会」を提唱しています。このジョブ型雇用は「一億総活躍社会」とも相性が良いとされています。ジョブ型雇用は職務内容や勤務場所を限定した限定正社員になるため、表面化しているブラック企業の台頭や過労死ラインぎりぎりの長時間労働の防止にもつながります。しかし、長年、終身雇用年功序列型賃金、企業型労働組合の三大雇用慣行を取り入れてきた日本の労働社会においては、ジョブ型雇用はなかなか浸透していない傾向にあります。

【参考】厚生労働省 産業競争力会議「雇用・人材分科会」中間整理~「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」の実現を目指して~ 2ページ

ジョブ型雇用の新たな可能性(ジョブ型正社員)

日本社会のように大幅な経済成長が期待できない成熟型社会において、専門性の高いジョブ型正社員は経済を活性化させる可能性が秘められています。

若者の労働参加を促す

厚生労働省が発表した「平成25年版厚生労働白書 -若者の意識を探る- 第4節 仕事に関する意識」では、大学卒業を控えた就職活動生などの若者は「長期雇用の下で、自分の能力を活かせる仕事を大切にする」という意識が上昇傾向にあることがわかりました。

近年ではメンバーシップ型雇用の一環である新卒一括採用によるミスマッチがメディアでも取り上げられるようになり、企業・就職者ともに不利益を被るとして、社会問題となっています。しかし、上記でご紹介した若者の意識調査では、長期雇用の下で自分の能力を活かせる職場環境を重視する傾向が上昇しています。新卒採用に、職務制を重視するジョブ型雇用を取り入れることで、企業と求職者とのミスマッチを防ぎ、若者の労働参加意欲を促すことが期待できます。

【参考】厚生労働省 平成25年版厚生労働白書 -若者の意識を探る- 第4節 仕事に関する意識 136~138ページ

優秀な女性の定着につながる

女性が活躍できる労働社会を実現するために、日本政府が女性活躍推進法を制定するなど、女性の社会進出が期待されています。しかし、女性は結婚や出産で職場を離れる機会が多いため、勤続年数をベースにした評価制度である日本型雇用システムが女性の社会進出の妨げとなっているという指摘があります。

ジョブ型雇用は職務内容と勤務地が限定されている正規社員のため、女性の労働参加率を高める効果が期待できます。また、キャリアと子育てとの両立を目指しやすいメリットがあります。ジョブ型雇用では年齢や性別、国籍などに関係なく、専門性の高い能力を重視する職務制のため、女性が再就職しやすい傾向にあります。

優秀な人材の流動化につながる

メンバーシップ型雇用は必要とされる職務や能力が明確になっていないため、特定の企業内でしか通用しないというデメリットがあります。しかし、専門性の高い能力が重視されるジョブ型雇用では特定の企業に関わらず、自分の能力が必要とされる職場へ移ることができるため、優秀な人材の流動化が期待できます。

また、労働人口の減少に伴い、日本老年学会が高齢者の定義を65歳以上から75歳以上に引き上げるべきと提案したこともあり、高齢者の積極活用も検討されています。しかし、65歳以上の方は体力の低下が著しいこともあり、職務や勤務場所、労働時間を限定したジョブ型雇用と相性が良いとされています。

【参考】日本老年学会 高齢者の定義と区分に関する、日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループからの提言(概要)

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用それぞれのメリット・デメリット

従来の働き方であるメンバーシップ型雇用に代わり、新たな働き方であるジョブ型雇用に注目が集まっており、ジョブ型雇用を導入しようとする流れが出てきています。ジョブ型雇用の導入を検討している場合は、それぞれのメリット・デメリットを把握しておく必要があります。以下にジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリット・デメリットを企業側の視点と労働者側の視点に分けて、ご紹介いたします。

ジョブ型雇用のメリット

企業側のメリットとしては、欠員が出たポジションに相応しい優秀な人材を確保することができます。職務範囲と勤務場所が限定されているため、会社の方針転換や業績悪化のために不要のポジションとなった場合、契約終了しやすい傾向にあります。また、労働時間も明確に定められているため、無駄な残業などを省けるので、人件費の抑制にもつながります。

労働者側のメリットは、雇用契約前に担当する職務を明確にできるので、職務記述書に記載されていない仕事に関しては履行する必要がありません。給与面では、担当する職務の評価で算出されるため、自身の能力と連動した待遇を受けることができます。

ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用は雇用契約前に職務と勤務場所を明確にするため、会社都合による転籍や異動を簡単に行うことができません。また、職務記述書に記載されていない仕事を依頼する場合、労働者側から契約範囲外とされ、履行してもらえない可能性があります。職務記述書の記載外の仕事を依頼する場合は、労働者が納得できる説明と理由を提示する必要があります。

一方で労働者側は雇用前に明確に職務内容と勤務地を記述しているため、会社の方針転換により、事業所の閉鎖や担当の職務が必要となくなった場合、転籍や異動はされずに契約終了になる可能性があります。また、自身の能力向上に必要な教育や研修は基本的に社外で行う必要があります。

メンバーシップ型雇用のメリット

メンバーシップ型雇用は職務範囲や労働時間、勤務地を限定しない働き方のため、企業側は会社の都合により、移動や転籍を含む配置転換を行うことができます。業界の動向により、経営資源(ヒト、モノ、カネ)を迅速に選択と集中が行えるメリットがあります。

労働者側は、会社の辞令に従わなければいけない反面、不祥事などを起こさない限り、会社の業績や業界の動向に関係なく、雇用関係を守ってもらえます。メンバーシップ型雇用は日本型雇用システムから派生した働き方でもあるため、年功序列型賃金により、勤続年数ベースで給与が決まっていく傾向があります。また、OJT社内研修などの手厚い教育を受けることができます。

メンバーシップ型雇用のデメリット

日本の労働者は、労働法により固く保護されているため、使用者は客観的で合理的な理由がなければ、従業員を解雇することができません。経営不振による整理解雇の場合も解雇回避の努力や適切な解雇手続きを踏む必要があります。

労働者側は明確な業務範囲や勤務地、労働時間を限定されていないため、原則的に会社の方針や意向による異動や転籍、法令範囲内での残業を支持される可能性があります。近年、表面化している長時間労働による健康被害、使用者と労働者との間で発生するハラスメントに巻き込まれる可能性があります。また、先が不透明な日本社会において、日本型雇用システムの前提であった三大雇用慣行(終身雇用年功序列型賃金、企業内労働組合)が崩壊しつつあります。職務が限定されていないこともあり、具体的な実績を詰めないまま、出世競争に敗れると40代や50代で役職定年に追い込まれる、整理解雇(リストラ)の候補になってしまう可能性があります。

まとめ

加速する経済のグローバル化や少子高齢化社会による労働人口の減少により、従来の日本型雇用システムから派生したメンバーシップ型雇用から能力重視のジョブ型雇用が注目を集まっています。企業側・労働者側双方にメリット・デメリットがありますが、ジョブ型雇用は若者・女性・高齢者の労働参加が期待されています。また、仕事とプライベートの両立であるライフワークバランスも保ちやすいと注目を集まっています。

今後も雇用ルールの改定など規制緩和が進むことが予想されるため、企業も労働者もジョブ型雇用という新しい働き方の準備が必要とされます。

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