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2019年1月9日(水)更新

労働者派遣

実際に働く会社と直接雇用契約を結ぶ正社員・契約社員・パート・アルバイトなどと異なり、雇用契約を結ぶ企業と異なる企業で業務に就く「派遣」という雇用形態。ここ数年、派遣労働者保護の観点から、次々と法改正が行われています。そもそも、派遣とはどんなものか、派遣にまつわる法律には何があるのか、労働者派遣について詳しくご紹介します。

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労働者派遣とは

労働者派遣とは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(略称は労働者派遣法)において、次のように定義されています。

≪労働者派遣法第2条第1号(労働者派遣)≫
自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働者派遣法第2条第1号

【出典】派遣で働くときに特に知っておきたいこと/厚生労働省

つまり、 一般的な1対1の雇用契約関係と異なり、労働者と雇用契約を締結する「派遣元」と、労働者を派遣してもらい実際の指揮命令を行う「派遣先」の三者間で行う契約関係によって実施される雇用契約の形態 をいいます。

派遣元事業主・派遣先・派遣労働者の関係

派遣元事業主、派遣先、派遣労働者の関係は次の通りです。

派遣元事業主と派遣労働者との間に雇用関係があり、派遣元事業主と派遣先との間に労働者派遣契約が締結されます。この契約に基づき、派遣元事業主が派遣先に労働者を派遣し、派遣先は派遣元事業主から委託された指揮命令の権限に基づき、派遣労働者を指揮命令することとなります。

【出典】労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド/厚生労働省

雇用関係

派遣を行う「派遣元事業主」と、派遣される労働者は、直接雇用の場合と同様に、雇用契約を結びます。雇用契約締結の際には、労働条件の明示、就業条件、派遣料金などの明示を行います。

この雇用契約には直接雇用の場合と同様に、労働基準法が適用され、賃金の支払い、労働保険・社会保険などの加入など、雇用管理も派遣元事業主の責務となります。

労働者派遣契約

労働者派遣契約は企業間の契約で、 労働者を派遣する先の会社「派遣先事業主」と「派遣元事業主」が労働者派遣契約を定めます 。締結内容は以下の通りです。

  1. 派遣労働者の従事する業務内容
  2. 就業場所
  3. 派遣労働者を直接指揮命令する者
  4. 労働者派遣の期間、派遣就業する日
  5. 派遣就業の開始・終了時刻、休憩時間
  6. 派遣労働者の安全、衛生の確保に関する事項
  7. 派遣労働者からの苦情の処理に関する事項(苦情の処理方法、処理体制)
  8. 契約解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
  9. 紹介予定派遣に関する事項(※紹介予定派遣である場合のみ)
  10. 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
  11. 4の就業日以外に就業させることができる日、5の時間以外に就業させることができる時間数
  12. 派遣労働者に利用させることができる派遣先の施設等

指揮命令

労働者派遣では、派遣労働者に対して実際の業務遂行についての 具体的な指揮命令を行うのは、「派遣先事業主」 です。

一般の直雇用の労働契約と異なり、派遣先は労働者とは指揮命令関係だけとなりますが、派遣労働者は派遣先の施設・設備・器具などを使用して労務に服すため、安全衛生管理などの一部の責任は派遣先が負うことになります。

請負との違い

請負とは、 請負業者が仕事を注文先企業から請け負い、労働者は請負業者と雇用契約を結び、労働者に対する指揮命令も請負業者が行う形態 をいいます。

派遣と請負の一番の違いは、派遣が雇用契約は派遣元と、指揮命令は派遣先からというように、三者間での契約になるのに対し、請負は、 雇用関係と指揮命令関係のいずれもが請負業者 にある点です。

【出典】労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド/厚生労働省

請負と判断するか、派遣と判断するかについては、職業安定法施行規則第4条に規定されており、具体的な基準は次のように告示されています。

  1. 業務の遂行方法に関する指示を請負人が行うなど、労働者の労働力を自ら直接利用すること。
  2. 事業主としての全ての責任を負うなど、請負契約により請け負った業務をその契約の相手から独立して処理すること。

【参考】職業安定法施行規則第4条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

【関連】業務請負とは? 業務委託、労働者派遣との違い、契約内容や注意点まで徹底解説/BizHint HR

出向との違い

「出向」には、「在籍出向」と「移籍出向」の2つがありますが、一般的によく行われる「出向」とよばれる「在籍出向」は、 労働者が雇用先企業(出向元)との雇用契約を維持したまま、別の企業(出向先)に異動し、出向先の指揮命令に基づいて勤務する雇用形態 をいいます。

在籍型出向の場合、出向元事業主と出向先事業主との間の出向契約により、出向元・出向先事業主とも雇用関係にあることから、派遣先事業主とは雇用契約を結ばない労働者派遣とは異なった雇用形態となっています。

【出典】労働者派遣と在籍型出向との差異/厚生労働省

【関連】出向の意味とは?契約書の重要性や派遣との違いは?/BizHint HR

労働者派遣事業の種類

労働者派遣にはいくつかの種類があります。派遣事業について細かく見ていきましょう。

一般労働者派遣事業

2015年の改正労働者派遣法の施行前までは、許可制で行う一般労働者派遣事業と、届出制で行う特定労働者派遣事業の2つの労働者派遣事業の形態がありましたが、2015年の法改正により一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別はなくなり、 一般労働者派遣事業に一本化 されました。

登録型派遣

あらかじめ派遣元となる事業者に労働者を登録しておき、 派遣先の会社に需要があったときにのみ、労働者との間に雇用契約を結んで派遣先で働かせる という労働者派遣を「登録型派遣」といいます。派遣先企業と派遣元企業の派遣契約期間が終了すると労働者との雇用契約も終了となります。仕事が発生する都度、雇用契約を結び、契約が終了すると給料も発生することはありません。

常用型派遣

一方、派遣元企業が派遣会社の社員として常時雇用契約を結ぶ「常用型派遣」という形態もあります。常用型派遣は「 無期雇用派遣 」とも呼ばれています。

常時雇用している自社の社員を企業に派遣することになるため、派遣先企業との契約期間が終了しても、派遣元企業と労働者の間の雇用契約は継続し、新たな派遣先企業が見つかるまでの期間も給料が支払われることになります。

紹介予定派遣

紹介予定派遣は、これまでの派遣形態とは異なる派遣です。 職業紹介事業に近い派遣形態で、最長6カ月の派遣期間を終えた後で本人と派遣先企業、双方の合意があった場合には直接雇用される制度 をいいます。

紹介予定派遣の場合、将来的な直接雇用を想定して行われるため、通常の派遣と異なり、派遣先は労働者との面接を行うことができます。派遣先・労働者共に、転職前のミスマッチを防ぐことができるため、人気の派遣形態です。

【出典】紹介予定派遣とは?/厚生労働省

労働者派遣の期間について

労働者派遣法では、派遣先事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(一定の業務を除く)について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務を受けてはならないとされています。

2015年9月30日に施行された改正労働者派遣法によって、一部例外を除き、業務内容にかかわらず、 派遣期間は最長3年 と定められることになりました。

【参考】労働者派遣法第40条の2/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

派遣可能期間(事業単位、個人単位)

法改正後は、業務区分ごとの派遣期間制度は廃止され、「事業所単位」「個人単位」の期間制限が設けられています。

  • 事業所単位
    派遣先の同一の事業所において、 3年 の派遣可能期間を超え、継続して労働者派遣を受け入れることはできません
  • 個人単位
    「課」「グループ」など同一の組織において、 3年 を超える期間で継続して働くことはできません

派遣の抵触日とは

個人単位の派遣期間の制限よりも、事業所単位の派遣期間の制限が先に到来した場合には、 事業所単位の期間制限が適用される ため、個人単位の派遣期間に残余期間があったとしても、事業所単位の期間制限に抵触することになってしまいます。

このように、 事業所単位・個人単位、どちらかの制限期間を超えた最初の日を「抵触日」 と言います。

事業所単位の期間延長

抵触日以降にも労働者派遣を行う必要があり、事業所単位の期間延長を行うためには、その期間が終了する1ヵ月前までに、その事業所に勤める労働者の過半数で組織する労働組合又は、過半数代表者に意見聴取をする必要があります。

個人単位の期間延長

個人単位の期間制限は 延長することができません 。派遣先としてどうしても期間延長したい場合には、所属する組織を変えることになります。

期間制限がかからない場合

派遣可能期間に 制限が設けられていないケースもあります

  • 派遣元事業主と無期雇用契約を締結している派遣労働者
  • 60歳以上の派遣労働者

これらの労働者を派遣する場合は、期間制限は適用されません。また、

  • 1月の所定労働日数が10日以下の業務
  • 産前産後休業、育児休業等を取得する労働者の業務
  • 介護休業等を取得する労働者の業務
  • 3年以内の有期プロジェクト業務

これらの業務に関しても、期間制限なく派遣を受け入れることができます。

労働者派遣のメリット・デメリット

ここからは、労働者派遣のメリットやデメリットについてご紹介します。

メリット

労働者派遣という働き方にはとても多くのメリットが存在します。

企業のメリット

まずは、企業側のメリットです。派遣先企業にとって労働者派遣という雇用形態は、必要な労働力を必要なときに必要な期間だけ取り入れることができるため、企業としてはとても貴重な人材確保の手段です。

また、健康保険法・厚生年金保険法に基づく社会保険料、労災保険法・雇用保険法に基づく労働保険料などは派遣元での加入・徴収となるため、企業経営の大きな負担となる法定福利費などの総合的な人件費を抑えることができます。

労働者のメリット

常用型派遣の場合には、労働者は安定した雇用環境を保ちながら多種多様な企業・業務に参加することができます。自身が目指すキャリア形成を実現するための経験を積むことも可能です。

登録型派遣の場合にも、新卒採用・中途採用では入社することが難しい大企業などに勤務することもできるため、能力・頑張り次第では、直接雇用への道が開けることもあり、あえて派遣というスタイルを選ぶ労働者もいます。

デメリット

次に、デメリットを挙げていきます。

企業のデメリット

派遣先事業主にとって、契約期間が定められている派遣労働者は、いずれ辞めることが決まっている労働者であるため、責任のある仕事や突発的な残業をさせにくい等のデメリットがあります。

また、派遣元事業主は直接業務を行わせる立場にありませんが、労働基準法の多くは派遣元事業主の責任とされています。直接雇用の場合と異なり、派遣先で予期せぬトラブルが発生した場合には、昼夜を問わず対処に奔走することもあり、派遣事業の運営はとても大変です。

労働者のデメリット

登録型派遣の契約期間は、一般的に数日~1年などの短い期間とされることが多く、契約更新の直前期に面談が行われることも少なくなく、ずっと働けると思っていたら突然契約が終了し、無職になってしまう恐れがあります。

常用型派遣の場合、突然無職になる可能性は登録型に比べると少ないですが、派遣先との契約期間が終了すると次の就業先へ、と数年単位で環境が大きく変わることになるため、その都度、環境の変化に対応していくことが必要です。

「労働者派遣法」の歴史と改正について

労働者派遣の歴史は1966年、アメリカの人材派遣会社の子会社が「事務処理サービス業」として日本に設立したことから始まります。

当初は、職業安定法第44条によって禁止されている労働者供給ではないという形をとるため、「業務請負」という形態で業務を行っていました。しかし、時代の流れによって、国内でも需要が広がり、新たに設立される人材派遣会社もでてきたため、労働者派遣という概念を一定の規制をもとに認めるという目的から 1985年(昭和60年)に労働者派遣法が制定 されました。

制定後も、経済・産業構造の変化に合わせて企業や労働者の多様な働き方に対するニーズに対応すべく、随時法改正を行っています。

労働者派遣法の歴史

1985年の労働者派遣法制定時には、直接雇用の労働者が派遣労働者に置き換えられる恐れが少ない、専門的知識等を必要とする業務等、 13業務を適用対象 としていました。しかし、 1996年に適用対象業務を26業務に拡大 。さらに、1999年には適用対象業務を大幅に拡大し、 ネガティブリストと呼ばれる一部の派遣禁止業務を除き、原則的に自由化 することとなりました。

新たに対象となった26業務以外の業務(自由化業務)については派遣受入期間を1年に制限することとしましたが、2003年の改正では、 26業務以外の業務について、派遣受入期間を1年から最大3年まで延長できるように改定 し、これまで禁止されていた 製造業への労働者派遣も解禁 され、派遣業界は一気に拡大してゆきました。

労働者派遣法の改正について

拡大を続けた派遣業界ですが、一方では、派遣労働者の不安定な雇用環境も社会問題となっており、リーマンショックのような急激な不景気の際、「年越し派遣村」、「派遣切り」という言葉が話題になったように、 業績不振による人件費削減の筆頭とされたのが派遣社員 でした。

2008年以降、若年層の貧困化、「ワーキングプア」などが大きな社会問題となり、政府の労働者保護への動きは急速に高まり、2012年の改正では、 日雇い派遣の原則禁止、専ら派遣の規制強化、離職後1年以内の人材を派遣スタッフとして元の職場で働かせることの禁止 など、労働者保護・直接雇用の促進などが進められてきました。

さらに、直近では、 2015年9月30日、改正労働者派遣法が施行され大規模な法改正 が行われました。 主な変更点は以下の通りです。

派遣社員の上限勤務年数が「3年」に

同一の派遣先事業所に対して派遣できる期間(派遣可能期間)は、 原則1年(最長3年) が限度とされています。しかし、法改正前の労働者派遣法では、専門26業務と呼ばれる一定の業務に従事する場合には、派遣期間に上限がありませんでした。

【参考】政令で定める26業務/厚生労働省

これが法改正によって、専門26業務に対しても期間制限が適用されるようになりました。さらに、同一の派遣先事業所に対し、派遣できる期間は、派遣労働者が交代した場合や他の労働者派遣契約に基づいて新たな労働者派遣を始めた場合であっても、 原則3年 が限度となりました。3年を超えて労働者派遣を行う場合には、当該事業所の労働者代表の意見を聴くなどの延長手続が必要となります。

3年までの間に派遣労働者が交替した場合や、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合でも、派遣可能期間の起算日は変わらず、派遣可能期間の途中から開始した労働者派遣の期間は、原則、その派遣可能期間の終了までとなります。

【出典】平成27年労働者派遣法改正法の概要/厚生労働省

また、派 遣労働者個人単位の期間制限 も設けられ、同一の派遣労働者を派遣先事業所の同じ部署などの組織に対し派遣できる期間も3年が限度となりました。

【出典】平成27年労働者派遣法改正法の概要/厚生労働省

労働者派遣事業の許可制への一本化

従来の「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」の 区別が廃止 され、すべての派遣事業が新たに定められた許可基準に基づく許可制に一本化されました。経過措置として、2018年9月29日までは、施行日時点に特定労働者派遣事業を営んでいる事業に関しては、許可を得ることなく、引き続き特定労働者派遣事業を営むことが可能とされています。

労働契約申込みみなし制度

改正派遣法では、違法派遣の受け入れについても新たな制度を施行しています。

  1. 労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
  2. 無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
  3. 期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
  4. いわゆる偽装請負の場合

これらに該当する違法派遣を受け入れた場合には、その時点で派遣先事業者が派遣労働者に対して、派遣元と結んだ労働条件と 同一の労働条件の内容で労働契約の申し込みを行ったものとみなす こととなりました。

雇用の安定

同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みのある労働者には、派遣終了後の雇用継続のために、 派遣元事業主は雇用安定措置を講じることも義務付けられました

雇用安定措置としては、

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先の提供(合理的なものに限る)
  3. 派遣元での(派遣労働者以外としての)無期雇用
  4. その他安定した雇用の継続を図るための措置

などがあげられています。

キャリアアップ支援

新しく、派遣事業の許可を受けるためには、派遣労働者に対する「 キャリア形成支援制度 」の措置を定めることも義務化されました。

  1. 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めること
  2. キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置していること
  3. キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続きが規定されていること
  4. 教育訓練の次期・頻度・時間数等

これらを義務付け、 不安定な労働環境の改善を促しています

【関連】2015年施行、改正派遣法のポイントを徹底解説/BizHint HR

派遣労働者を採用する際の注意点

派遣労働者を採用する場合には、いくつかの注意事項があります。

派遣禁止業務

労働者派遣事業には、 派遣を禁止している業務 (適用除外業務)があります。

  1. 港湾運送業務
  2. 建設業務
  3. 警備業務
  4. 病院・診療所等における医療関連業務

ただし、 4については、次の場合に限り派遣が可能 となります。

  • 紹介予定派遣の場合
  • 産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務に該当する場合
  • 就業場所が僻地にある場合
  • 派遣労働者を従事させる必要があるとして厚生労働省令で定める場所である場合

このほか、 適用除外業務以外でも各法令の趣旨から派遣ができない業務 もあります。

  • 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務
  • 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務
  • 建築士事務所の管理建築士の業務

さらに、人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務は、法律の趣旨に照らして行うことはできません。

同盟罷業(ストライキ)若しくは作業所閉鎖(ロックアウト)中又は争議行為が発生しており、同盟罷業や作業所閉鎖に至るおそれの多い事業所や、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務へも労働者派遣をすることはできませんので注意しましょう。

事前面接の禁止

もう一つ、大きな注意事項があります。労働者派遣法第26条第7項には、次のように規定されています。

≪労働者派遣法第26条第7項(契約の内容等)≫
労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働者派遣法第26条第7項

つまり、派遣先事業主は、 派遣される予定の労働者を特定するようなことを行ってはいけない ということです。(紹介予定派遣を除く)

一般的な直雇用の場合には、事前に面接を行ったり履歴書を確認したりしますが、労働者派遣法ではこれを禁止しています。ただし、派遣初日に初めて顔を合わせるのではやはり不都合も多いため、現実には「派遣先との顔合わせ」「職場見学」という名目で事前面接のようなことを行っている場合もあります。あくまでも 選考を目的とした面接でないことが必要 です。

労働者派遣にまつわる法律

派遣については、労働者を雇用するにあたり通常の労働者と同様に、労働基準法、安全衛生法など様々な法律が適用されます。

例えば、安全衛生法第59条で定められた安全衛生教育については、派遣先・派遣元それぞれの責任が状況によって異なります。 雇い入れ時の安全衛生教育は派遣元の責任 で行います。 雇用期間中に派遣先を変更した場合も派遣元が教育を行います 、派遣先で派遣労働者が従事する作業内容が変更された時は、派遣先が実施義務を負います。また、クレーンの運転や粉じん作業など、 一定の危険有害業務に必要とされる特別教育は、派遣先が行うこと とされています。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕安全衛生法第59条

労働者派遣事業関係業務取扱要領

このように、派遣を実施する際には多様な法律の規制をうけ、派遣元・派遣先のそれぞれが法律で義務づけられた措置等を的確に実施する必要があります。そこで、厚生労働省では、労働者派遣業務の取り扱いについてまとめたマニュアル「 労働者派遣事業関係業務取扱要領 」を公開しています。

【参考】労働者派遣事業関係業務取扱要領/厚生労働省職業安定局

労働基準法

労働基準法については、賃金・年次有給休暇・産前産後休業・災害補償等は派遣元の責任とされ、実際に労働者が働く環境を提供する派遣先においては、労働時間・休憩・休日・時間外労働・休日労働等の義務を負います。

ただし、派遣先で労働者に残業などを行わせる場合には、雇用契約を結んでいる派遣元において時間外・休日労働に関する協定届(36協定)を締結している必要があります。

【関連】36協定とは?残業時間のしくみや特別条項・届出・違反まで徹底解説 / BizHint HR

特に注意が必要なのは、労働基準法第26条に定める休業手当です。

≪労働基準法第26条(休業手当)≫ 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第26条

労働基準法第26条では、休業手当についてこのように定めていますが、「使用者の責に帰すべき事由」は、雇用契約を締結している派遣元の事情によります。

通常勤務している派遣先の業務上の都合により、休業や突然の契約打ち切りをされた場合には、派遣元において代替え業務を用意できるかどうかが判断され、用意できない場合には、派遣元に休業手当の支払義務が生じることになります。

労働者派遣にまつわる契約書

労働者派遣を行う際には、派遣元事業主と派遣先事業主の間では「基本契約書」「個別契約書」などの契約を締結します。一般的に請負契約書などには印紙を貼る必要がありますが、労働者派遣基本契約書や労働者派遣個別契約書は「委任に係る契約書」として非課税対象となりますので、印紙を貼る必要はありません。

基本契約書

まず、派遣元と派遣先で恒常的に労働者派遣を行う旨の労働者派遣基本契約を締結します。

労働者派遣法では、労働者派遣契約の締結に当たり、あらかじめ、「派遣先企業から派遣会社に対して抵触日の通知をすること」を義務付けています。「抵触日」とは、同じ事業所で労働者派遣を利用できる制限期間を経過し、派遣ができなくなる最初の日のことをいいます。「抵触日」は派遣会社や派遣労働者が変わっても通算されます。このため、派遣先にしか把握できないため、派遣先が派遣元に通知することを義務付けています。

労働者派遣基本契約書の形式は自由ですが、都道府県労働局ではテンプレートが公開されています。

【参考】労働者派遣契約書(記載例)/大阪労働局

個別契約書

実際に派遣を行う際には、労働者派遣法第26条の労働者派遣契約に定める個別の就業条件を定める個別契約を締結します。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働者派遣法第26条

就業条件明示書

派遣元事業主は派遣労働者に対し、就業条件の明示を行う必要があります。就業条件明示書には、派遣労働者が従事する業務の内容、派遣先企業の指揮命令者に関する事項、派遣期間、就業時刻、休憩時間、派遣労働者の苦情処理に関する事項などを記載します。

労働基準法の労働条件の明示も合わせて行うため、「労働条件通知書(兼)就業条件明示書」とすることもあります。

【参考】モデル就業条件明示書/厚生労働省

まとめ

  • 労働者派遣とは、派遣元企業・派遣先企業・派遣労働者の三者間で契約が結ばれる雇用形態です。労働基準法など他の法律も複雑に絡み合うため、正しい知識を身につけることが必要です。
  • 労働者派遣には、「登録型派遣」と「常用型派遣」がある。また、直雇用を想定した「紹介予定派遣」も。
  • ここ数年、派遣労働者の雇用の安定のため、法改正が行われています。直近では平成27年に大きな改正があり、上限勤務年数などが変更になりました。派遣労働者を採用する場合は、最新の法改正情報もきちんと確認しましょう。

<執筆者>
高橋永里 社会保険労務士(和泉中央社会保険労務士事務所 代表)

大学卒業後、ホテルのウエディングプランナーの仕事に従事。数百件の結婚式をプロデュースする中で、結婚式という期間限定のサポートではなく、より長く人のサポートを行う仕事に就きたいと思い、社労士業界に転職。顧問件数6,000社を超える大手税理士法人で法人設立、労務管理の仕事の経験を経たのち、2015年に「和泉中央社会保険労務士事務所」を開業。現在は、年金アドバイザー、簿記、ファイナンシャルプランニングの資格を活かし、中小企業の設立、労務管理、就業規則作成、助成金申請など幅広い業務を行う。


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