はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2018年10月24日(水)更新

非正規雇用

働き方改革の柱である“同一労働同一賃金”の実現に向け、非正規雇用者の処遇改善や正社員化が目指される一方、パートやアルバイト、有期契約労働者等は未だ着実に数を増しています。このページで、非正規雇用の定義と現状、労使双方のメリット・デメリット、雇用時の注意点の他、非正規雇用対策として政府が示す展望と対応策を確認しましょう。

非正規雇用 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

非正規雇用とは

ひと口に「非正規雇用」といっても、実際には様々な雇用形態が想定されます。非正規雇用を正しく理解するために、まずはその定義と種類を知りましょう。

非正規雇用の形態

期間の定めなく、フルタイムで勤務するのが「正規雇用」とされる一方、個別の労働契約に応じた期間・時間に限定する働き方が「非正規雇用」です。具体的には、パートタイム労働者やアルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員、その他臨時職員や日雇労働者等が挙げられます。

パートタイム労働者

「パートタイム」というと、“お子さんが幼稚園や学校に行っている間に働くお母様方”を連想しがちですが、法律上の定義はこうしたイメージにとどまりません。

パートタイム労働者とは「正社員よりも短時間で勤務する労働者」全般を指す言葉であり、後述するアルバイトや契約社員、嘱託社員、臨時職員等もすべて含まれます。ただし、パートタイム労働者であっても、職場によってはフルタイムで働いたり、非正規であっても契約期間の定めがなかったりする場合がありますが、職務や職責、権限において正社員との差別化が図られています。

アルバイト

前項の通り、「アルバイト」はパートタイム労働者の一種ですが、こちらは主に学業の傍ら短時間勤務に従事する学生を指します。

契約社員

正社員と異なり、個別の労働契約に従い勤務する社員を指します。契約期間に定めのある「有期契約社員」の他、常用雇用ではあるものの正規雇用と比べて職務範囲や職責、権限が限定的な「無期雇用社員」が存在します。

契約期間に定めがある場合でも、複数回の契約更新が行われた結果、勤務実態が実質正社員並みとなる例は珍しくありません。この点、平成25年の改正労働契約法施行により、有期労働契約が通算5年を超えた労働者には無期転換権が生じ、働く側から申し込みをすることで、期間の定めなく働き続ける権利を得ることができるようになりました。

ちなみに、契約社員の労働時間は、フルタイムの場合もあれば短時間である場合もあり、契約内容に依ります。

嘱託社員

契約社員として、会社と有期労働契約を締結する社員を指します。「嘱託」に法律上明確な定義があるわけではないですが、定年退職後の再雇用契約の形のひとつとして認識される例が一般的です。

一方で、弁護士や医師のような高度な専門性を有する者が、委嘱を受けて業務に従事するケースを指す場合もあります。後者の場合は、雇用契約ではなく請負契約となり、労働者性はありません。

【関連】嘱託社員とは?契約社員の違いや給与について説明します/BizHint HR

派遣労働者

勤務する会社からの業務命令を受けて、異なる会社で就業する働き方です。この場合、雇用契約の締結や社会保険等の加入、給与支払は雇用主である派遣元が、仕事の命令は派遣先が行います。実際に労働を提供する派遣先と労働者との間に、雇用関係はありません。

【関連】労働者派遣とは?改正派遣法のポイントや注意点も解説/BizHint HR

臨時職員・日雇労働者

臨時職員、日雇労働者という雇用形態に法的な定めはありませんが、雇用契約期間について、臨時職員は1ヵ月以上1年以下、日雇労働者は1ヵ月未満の者を指すのが通常です。

【参考】総務省統計局:「常雇 ,臨時・日雇」と「正規・非正規」

在宅ワーカー

企業と業務委託契約を締結し、自宅等で業務に従事する働き方を「在宅ワーク」といいます。この場合、発注元との間に雇用関係はなく、在宅ワーカーは個人事業主として仕事を受注します。会社員の在宅勤務と混同されがちですが、こちらは会社と雇用契約を締結し、業務命令を受けて自宅で仕事をする形態のため、両者は似て非なるものです。

正規雇用と非正規雇用の違い

正規雇用と非正規雇用は、「働き方」の面で大きな違いがあります。契約期間の定めのないフルタイム勤務が正規雇用の働き方である一方、非正規雇用は個別の契約に従い、正規雇用と比較すると、限られた期間・時間に業務に従事します。働き方が異なるため、当然、正規雇用と非正規雇用とでは職務範囲や職責、権限、待遇に差が生じることになります。

正規雇用と非正規雇用それぞれのメリット・デメリットについては後述しますが、両者の特徴を考慮した上で、各人に適した形態で働けることが理想です。

非正規雇用の割合

厚生労働省の調査によると、正規雇用と非正規雇用の割合比率は、平成28年時点でおよそ「6:4」となっており、非正規の割合は決して低くありません。ここからは、非正規雇用に関わる各種データより、実態を詳しく見ていきましょう。

非正規雇用者率の推移

【出典】厚生労働省:非正規雇用の現状と課題

資料によると、昭和59年時点では15.3%にとどまっていた非正規雇用者率は、平成を迎えると同時に増加に転じ、平成16年以降は30%台の高い数字で推移していることが分かります。特筆すべきは、リーマン・ショックが起きた平成20年以降、正規雇用者率は平成26年まで継続して減少傾向であるのに対し、非正規雇用者率はリーマン・ショック翌年の平成21年を除けば年々増加傾向にあることです。

平成27年以降は日本経済が緩やかな景気回復基調に転じた影響からか、正規雇用、非正規雇用共にプラス方向で推移しています。

年齢別割合の推移

【出典】厚生労働省:非正規雇用の現状と課題

非正規雇用割合の推移において、特徴的なのは「65歳以上の高齢者の割合が年々増加傾向にあること」でしょう。平成18年から28年までの10年間の非正規雇用労働者の年齢別の推移について、資料からは下記の実態を読み解くことができます。

  • 「15~24歳」「25~34歳」の若年者層は減少傾向
  • 「35~44歳」「45~54歳」「55~64歳」の割合はそれぞれほぼ横ばい
  • 「65歳以上」の高齢者層はおよそ2倍に増加

雇用形態別割合の推移

【出典】厚生労働省:非正規雇用の現状と課題

非正規労働者の雇用形態について、近年の傾向として顕著なのは「嘱託の増加」です。この背景には、平成24年の高年齢者雇用安定法改正により、定年後再雇用が拡大したことが影響しているものと考えられます。「嘱託」は、定年退職後の再雇用に多く見られる雇用形態であることから、改正法施行と無関係とは言えないでしょう。

その他、非正規労働者の雇用形態として最も多いのが「パート・アルバイト」であり、この10年間で緩やかに増加しています。平成13年から徐々に割合を増していた「派遣」は、リーマン・ショックの影響を受け減少に転じたものの、平成28年には再び増加傾向となっています。

非正規雇用の増加理由

非正規雇用の増加理由を考える上では、日本の経済的な背景はもとより、「女性」「若者」「高齢者」の3つの切り口からの考察を欠かすことは出来ません。それぞれの観点について、非正規雇用の状況を検討しましょう。

女性の非正規雇用者

「女性」の観点から雇用を考える上で、重要なのは「正規、非正規共に増加傾向にある」ことです。平成29年8月分の「労働力調査(基本集計)」によると、女性の雇用形態について「正規の職員・従業員」が実数1127万人で前年同月プラス35万人、「非正規の職員・従業員」が実数1391万人で前年同月プラス23万人であることが明らかになっています。

女性活躍を推進する昨今の時流を受け、正規、非正規を問わず、働く女性が増えているのです。正規、非正規の割合比率をみると、およそ「4:6」とわずかに非正規雇用の率が高いことが分かります。これはおそらく、女性の場合、家庭や育児、介護等により就労に制約を受けるケースが多いためであると考えられます。

「非正規」というと、社会的には正規雇用と比べてネガティブなイメージがつきものですが、一方で「ライフスタイルに合わせて柔軟に働くことができる」という点においては、女性の社会進出を後押しする働き方のひとつと言えるのではないでしょうか?

【参考】総務省統計局:労働力調査 (基本集計)平成29年(2017年)8月分(速報)

【関連】女性の活躍を推進するには?「女性活躍推進法」の概要や企業事例もご紹介/BizHint HR

若者の非正規雇用者

前出の資料「非正規雇用の現状と課題」によると、若者の非正規雇用労働者は過去15年の間で緩やかな減少傾向にあります。しかしながら、正社員になりたくてもなれない「不本意非正規」の割合が「25~34歳」の若年層で最も高いことは問題視すべき点であると言えます。

こうした実態を受け、若者の安定した雇用の実現に向けた政府主導による若者雇用対策、非正規雇用対策が各種行われており、今後の状況改善が期待されます。

【参考】厚生労働省:非正規雇用の現状と課題

高齢の非正規雇用者

高齢の非正規雇用者の現状については「年齢別割合の推移」の項で挙げたとおり、平成18年から28年までの10年間に、「65歳以上」でおよそ2倍に増加しています。

こうした背景には、少子高齢化がますます進展したこと、高年齢者雇用安定法改正により多くの企業で定年後再雇用が制度化されたこと、老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたこと等が挙げられます。無理のない働き方を希望する高齢労働者にとって、柔軟な就労が実現する非正規雇用は、都合の良い働き方と言えます。

ところで、高齢の非正規雇用者の増加は、決して問題視すべきものではありません。むしろ、企業において深刻化する人手不足への対応策として「シニア層の活用」は不可欠とされています。シニアの雇用創出は、今後もますます進む見込みとされています。

【参考】厚生労働省:非正規雇用の現状と課題

【関連】シニア活用を成功させるコツとは?課題と今後の展望を徹底分析/BizHint HR

非正規雇用のメリット

非正規雇用については各所で課題が取り沙汰されますが、それでもこの働き方が増加傾向となる背景には、労使双方にとってメリットがあるからに他なりません。ここでは、非正規雇用のメリットについて、労働者側と企業側双方の観点から考えることにしましょう。

労働者側のメリット

働く側にとっての非正規雇用のメリットは、総じて「働きやすさ」です。正社員では難しくとも、パートタイムやアルバイトならば一歩踏み出しやすいと感じる労働者は意外と多いかもしれません。

柔軟性が高く働きやすい

例えば「フルタイムで週5日勤務」となると、小さなお子さんを抱えるお母さんや、定年後マイペースに働きたいと考えるシニアには高いハードルです。限られた時間で自分の都合に合わせた働き方ができることは、非正規雇用ならではのメリットです。

希望する業務に専念できる

パートタイム労働者やアルバイトは、正社員と比較すると職責や権限が限定的ですが、一方で「気負わずに働ける」とプラスに捉えることもできます。また、非正規雇用者であれば基本的に当初の労働契約から大幅な変更が生じることはありません。その点では、安心して希望の業務に従事し続けることができます。異動の可能性が低いこともポイントです。

採用のハードル設定が低い

正社員とパート・アルバイト、契約社員、派遣社員とでは、採用の条件が大きく異なります。正規雇用はその会社で長期的に働くことを前提としますから、学歴や職歴、経験、資格、能力等について一定以上の基準をクリアすることが求められます。その点、非正規雇用であれば、採用の要件が比較的緩やかであるケースが大半です。

入社希望の会社がある場合、正社員としての採用は難しくてもまずは非正規で入社し、社内でキャリアアップを目指したり、いち早く憧れの実務に携わったりする労働者は少なくありません。

企業側のメリット

非正規雇用が労働者にとってメリットのある働き方である一方、企業側にもあえて非正規雇用者を求人する理由があります。キーワードは「コスト抑制」と「雇用調整」、さっそく企業側のメリットを確認しましょう。

人件費の抑制

正規雇用と非正規雇用の差は主に待遇面にありますが、特に顕著なのは「給与体系の違い」です。パートやアルバイト、契約社員の場合、正社員と比較すると賃金が安く、賞与や退職金の支払対象外とされるのが一般的です。

また、会社にとって、雇用に伴い生じるコストは小さなものではありません。とりわけ、月々の社会保険料の会社負担が占める割合は、大きいものとなります。通常、社員一人あたりの給与の15%相当額は、社会保険加入に伴う会社負担として毎月支出することになりますから、時には企業経営を圧迫する要因ともなり得ます。ただし、平成28年10月1日よりルール変更が生じ、社会保険の加入対象が拡大されたので要注意です。

【参考】政府広報オンライン:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。

繁忙期に合わせた採用が可能

契約期間に定めのある非正規労働者の雇用は、繁忙期と閑散期を見据えた人員調整に活用できます。正社員として雇入れてしまうと、基本的には定年まで継続して雇用することが前提となりますが、非正規雇用の場合には、労使が合意の上で、労働契約期間を設定することができます。

必要な時に人を増やすことができ、業務が落ち着いている時には雇用を維持する責任がなくなる等、雇用調整のしやすさがメリットとなります。特に派遣社員の受け入れは、急な欠員対応にも適しています。

効率の良い採用活動ができる

非正規雇用の採用活動は、正規雇用と比較すると短期間かつ低コストで済みます。例えば新卒採用をしようとすれば、採用準備、募集、選考、内定までの全プロセスを経るまでに1~2年ほどかかります。その点、非正規雇用の採用は通常3ヵ月ほどの期間で対応可能です。派遣会社経由で労働者を受け入れる場合には、さらに迅速な人員の確保が実現します。

非正規雇用のデメリット

非正規雇用を考える上では、メリットだけではなくデメリットにも目を向けておく必要があります。非正規雇用について、労使双方の問題点を検討していきましょう。

労働者側のデメリット

非正規雇用で働く労働者は、正規雇用の場合と比較すると、あらゆる面で「不安定」です。具体的には、収入面や待遇、キャリア形成の観点での課題が浮き彫りとなることが多いと言えます。

正規雇用との年収格差問題

平成29年9月に公開された「平成28年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の1人当たりの平均年収は正規で487万円、非正規で172万円との結果が明らかになっています。正規雇用の年収は非正規雇用の年収のおよそ2.8倍との実態に、改めて両者の収入格差について考えさせられます。一般的な企業では、正規と非正規で手当等に異なる条件を設けている例がほとんどであり、それこそが年収格差の原因となっています。

さらに、住宅関連の補助や慶弔関連の手当等、会社独自の福利厚生についても、対象を正規雇用のみに限定するなど、正規と非正規とで福利厚生面で異なる取扱いをする企業は少なくありません。

昨今、働き方改革において目指される「同一労働同一賃金」では、非正規にも貢献度に応じたボーナスの支給をすべき旨が提示されていますが、実態は未だ追いついていない状況です。本来正規雇用を希望する「不本意非正規労働者」にとって、正規・非正規の年収格差は重大な問題と感じられるでしょう。

【出典】国税庁:平成28年分民間給与実態統計調査

身分の保障における格差問題

正社員と比べて、期間に定めのあるパートやアルバイト、契約社員等の非正規労働者は、どうしても長期雇用の保障がなく、弱い立場となります。“正社員=安定”“パート・アルバイト=不安定”のイメージは、ごく一般的なものと言えるでしょう。

キャリア形成が困難

非正規雇用労働者は、当初の労働契約にある仕事のみに従事することとなり、新しい挑戦の機会は多くありません。また、基本的には一定期間のみの労働契約となるのが非正規雇用の特徴です。さらに、非正規労働者向けの教育訓練制度が整っていないことがほとんどであり、パート・アルバイト労働者のキャリア形成を考える上では何かと難しさがあります。

企業側のデメリット

非正規雇用労働者にまつわるデメリットは、企業側にも想定されます。正規と非正規とを上手く区別して活用できなければ、意図せぬ問題に直面する可能性があります。

企業成長に悪影響

非正規雇用労働者に対し、長期的な観点から社員教育を施すことは困難です。期間に定めがある以上、いつ辞められてしまうか分かりませんし、非正規雇用労働者自身がキャリアアップを強く望んでいない場合もあります。非正規雇用を中心とした業態で展開する企業もありますが、「企業成長」を考える上では、課題は山積みでしょう。

また、実際のところは労働者各人の心持ちに依るものの、非正規の仕事に対するモチベーションの低さが問題となる例は珍しくなく、特に「不本意非正規」の場合にはその傾向が顕著であると言えます。

こうした状況をふまえ、最近では、非正規同様、労働時間や勤務地、職務範囲等に制限を設けつつも、正社員待遇を提供する「多様な正社員制度」を導入し、不本意非正規の正社員登用を推奨する企業が増えています。

正規雇用者との人間関係問題

すでにご紹介した通り、正規雇用者と非正規雇用者とでは待遇面で明らかな差が生じていることが多く、この点で正規・非正規の間でトラブルが生じることは多々あります。

例えば、新入社員とベテランパートとでは、どうしても後者が熟練しているものの、一方で給与は社員の方が高額となることがあります。こうした状況に対するパートタイム労働者の不満が職場の人間関係に不協和音をもたらすケースは、主に飲食店やスーパーマーケット等で多く見られます。また、非正規雇用者の仕事に対するモチベーションや意識の低さに、正規雇用者が不満を抱く場合もあります。

いずれにせよ、正規・非正規間のあらゆる格差は、職場の人間関係に確実に影響を及ぼすと言えそうです。

人材流出の危険性

期間に定めのある非正規雇用者である以上、正社員のように長く勤務してもらえる保証はありません。仮に優秀な契約社員がいたとしても、労使の合意なくして契約更新をすることはできず、労働者側がさらなる好待遇を求めて他の企業に目を向ける可能性は常に付いて回ります。非正規雇用者を中心とした会社は、常に人材流出の危機にさらされることになります。

非正規雇用者の雇用ルール

非正規雇用者を雇い入れる場合にも、正規雇用者の採用時同様、法に基づく雇用ルールに則った対応が求められます。ここでは、有期雇用者とパートタイム労働者について、雇用契約の手順を確認しましょう。

有期雇用者との契約ルール

有期雇用者との契約ルールは、労働契約法に定められています。「短期のアルバイトなら、雇用契約の締結にさほど神経質になることはない」と考える方もいるかもしれませんが、こうした認識は直ちに改める必要があります。有期雇用者の雇い入れであっても、適当で良いと考えることは出来ません。

基本原則

労働契約法第3条では、労使が雇用契約を締結する上での5つの原則が明文化されています。

  • 対等な立場における合意に基づくこと
  • 就業実態に応じた均衡への配慮をすること
  • 仕事と生活への調和に配慮すること
  • 信義則にのっとり権利を行使し、義務を履行すること
  • 権利を濫用しないこと

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:労働契約法 - 法令データ

労働条件の明示

使用者は有期雇用者の雇い入れに際し、労働時間や賃金等に関わる労働条件を書面などで分かりやすく伝えなければなりません。具体的な項目については、労働基準法施行規則第5条に、下記の通り列挙されています。

  • 労働契約の期間
  • 有期雇用の場合、契約更新の基準に関する事項
  • 勤務場所及び業務に関する事項
  • 始業・終業の時刻と休憩時間
  • 時間外・休日労働の有無
  • 休日、休暇
  • 労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(退職手当及び賞与等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与、精勤手当等及び最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

厚生労働省では、上記の項目を網羅する労働条件通知書のひな形を公開しています。

【参考】厚生労働省:労働条件通知書

有期雇用者の場合、特に重要なのが「契約期間」「契約更新の有無」「契約更新の基準」です。これらは曖昧にしておくと労使トラブルの引き金となりかねない項目ですので、書面での明示と併せて口頭で説明をしておくと安心です。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:労働基準法施行規則 - 法令データ

契約期間

会社と有期雇用者が一度に契約できる期間の上限は原則「3年」であり、この「3年」を必要以上に短期間で区切る等をして、雇用を不安定な状態にせぬよう配慮すべきとされています。ただし、有期雇用者の契約期間については、一部例外として「5年」もしくは上限適用なしの扱いとされる場合があります。

最長「5年」の契約が可能となるのは、「一定の専門的職種に従事する者」と「満60歳以上の者」です。対象となる専門的職種については、厚生労働省が細かな基準を定めています。

また、契約期間に制限を設けない例としては、「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」の要件に該当するか否かが問題となります。例えば、有期の建設工事やイベント事業等、原則の3年を超えるものの明確な終期が設けられたプロジェクト形式の事業がそれにあたる可能性が高いと言えます。ただし、判断を誤れば意図せず法違反となるため、契約に際し、契約期間に上限を設けなくとも良いかを労働基準監督署等に確認されることをお勧めします。

【参考】厚生労働省:労働基準法第14条第1号及び第2号の規定に基づき厚生労働大臣が定める「高度の専門的知識等」の基準

契約内容の変更

労使の契約内容は、両者の合意の元でいつでも変更できます。ですが、この場合でも法律の定め、もしくは就業規則に記載される条件を下回ることは出来ません。変更後の契約内容について、万が一これらに満たない内容があれば、その部分は無効となり、法律もしくは就業規則の定めに準じます。

就業規則自体を変更する場合、法定の基準を下回ることは出来ません。また、従前の労働条件より不利益に変更する際、「合理的理由」に加え、「労働者への周知徹底」が必要となります。

解雇時のルール

正規雇用であれ非正規雇用であれ、解雇時には原則、同様の手続きを経なければなりません。やむを得ない理由につき労働者を解雇する場合には、就業規則に定められた解雇事由を根拠とし、30日前の予告、又は解雇予告手当の支払いのルールに従います。

しかしながら、実務上は労働契約期間に定めのある有期雇用者に対しては解雇を行わず、「契約期間満了」を以て円満に退社手続きを進めるケースがほとんどです。

【参考】東京労働局:しっかりマスター労働基準法 解雇編

パートタイム労働者との契約ルール

パートタイム労働者の雇用ルールは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法(以下、「パートタイム労働法」という)」によって定められ、パートタイム労働者の能力の発揮や福祉の増進が図られています。昨今、企業においてパートタイム労働者がますます活躍の幅を広げる現状があり、これを受けて平成27年4月1日に施行された改正法では「公正な待遇の確保」「雇用管理の改善」「正社員転換の推進」が盛り込まれました。

ここでは、主な改正ポイントである3点について解説しますが、パートタイム労働者の雇用管理の現状や課題の把握に役立つ下記のツールを活用することで、より具体的に理解を深めることが可能です。

なお、ここでいう「パートタイム労働者」とは、通常の労働者と比べて労働時間が短い者全般を指します。パートとアルバイト等の名称の別を問いません。

【参考】厚生労働省:パートタイム労働者均等・均衡待遇指標(パート指標)を策定しました

労働条件の明示交付・説明

労働基準法に定める通知内容に加え、賃金制度等の雇用管理に関わる事項、昇給、退職金、賞与、相談窓口等の重要事項について、使用者に対し、労働者に対する文書交付・説明義務が課せられました。

【参考】厚生労働省:パート労働ポータルサイト

正規雇用者と同様の待遇確保

正規雇用者とパートタイム労働者との間で、単に雇用形態の違いのみを理由とする不合理な待遇の差は認められない旨が、改正法に明記されました。具体的には、職務内容と人材活用の仕組みが正社員と同じであれば、待遇に差を設けてはならないこととなります。

【参考】福岡労働局:パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保のために

正規雇用者への転換推進

会社が新規に正社員を募集する場合、一般向けの求人の他、既存のパートタイム労働者に対して正社員募集がある旨を周知した上で、労働者に対し応募の機会を設け、転換試験の実施と選考を行わなければなりません。

有期雇用労働者の無期転換申込権

平成25年4月1日施行の改正労働契約法の施行により、有期雇用労働者との雇用契約ルールに大きな変更が生じました。最も注目されたのは「無期転換権」に関する新設条文の他、改正労働契約法のポイントとしておさえておくべきルールを2点、解説しておきましょう。

通算5年で無期労働契約へ

労働契約法の改正により、有期雇用労働者は、同一の事業主との有期労働契約が通算5年を超える場合、申し込みにより期限の定めのない労働契約(無期雇用)に転換することができるようになりました。この「通算5年」のカウントが平成25年4月1日から始まることから、5年後である平成30年4月2日以降、順次、無期転換権を有する有期雇用労働者が生じることになります。

企業においては、有期雇用労働者の無期転換ルールに対応するべく、人事制度の見直しや諸規程の改訂、労働者への周知徹底等が進められています。厚生労働省からも、ポータルサイトを通じて無期転換ルールに関わる積極的な情報提供が行われています。

【参考】厚生労働省:有期契約労働者の無期転換サイト

雇止め法理の法定化

有期労働契約においては「契約期間満了」による雇い止めが可能です。しかしながら、労働契約法第19条では例外として、従前の労働契約の状況が下記のいずれかに該当する場合で、労働者が使用者に対し契約更新を申し出た際には、合理的理由がない限り、使用者はこれを拒むことができない旨が定められています

  • 過去に何度も契約更新されており、実質、無期労働契約と同一視できる場合
  • 労働者が労働契約の更新を期待することに合理的理由がある場合

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov :労働契約法 - 法令データ

不合理な労働条件の禁止

「同一労働同一賃金」の実現は、政府が推進する働き方改革における目標のひとつですが、これに先立ち、労働契約法第20条には「働き方の実態に則さない不合理な労働条件の差異を禁止すること」が明記されています。具体的には、正社員と有期契約労働者が実質的に同一の働き方をしている場合、単に「有期雇用であるから」の理由のみで待遇に差をつけるべきではないというものです。正規雇用と非正規雇用との間に、職務や職責、配置転換等の実態に差があって初めて、異なる労働条件を設けることができます。

ベテランパートが活躍する事業所等では、意図せず法の定めと実態との乖離が生じやすいため、特に注意が必要です。

【関連】「同一労働同一賃金」とその背景は?/BizHint HR

非正規雇用にまつわる問題解決対策

非正規雇用を考える上では、待遇改善や正社員転換の推進等に関わる課題について、実情に則した対応策の検討が不可欠です。ここでは、あらゆる非正規雇用問題の解決に向け、政府がどのような対策を打ち出し、企業に向けた支援体制を整えているかをご紹介しましょう。

厚生労働省による対策

非正規雇用者の労働条件の向上、及び安定した雇用の実現に向け、厚生労働省は下記の通り基本指針等を公開しています。

正社員転換・待遇改善実現プラン

本プランでは、平成28~32年度の5ヵ年を計画期間とし、非正規雇用者の正社員転換や待遇改善に関わる目標値、政府としての取り組み内容を公表しています。下記の主要目標達成に向け、主にハローワークや雇用関係助成金の活用、情報提供等の施策を打ち出しています。

  • 不本意非正規雇用労働者の割合(全体平均):10%以下(平成26年平均:18.1%)
  • 新規大学卒業者の正社員就職の割合:95% (平成27年3月卒:92.2%)
  • 新規高校卒業者の正社員就職の割合:96% (平成27年3月卒:94.1%)
  • 正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の縮小を図る。

【参考】厚生労働省:正社員転換・待遇改善実現プランの決定について

非正規雇用労働者待遇改善支援センター

企業における非正規雇用問題の相談窓口として、各都道府県に専門機関を設置し、非正規雇用者の労務管理や待遇改善に関わる相談や、賃金設計や社内規則の作成・見直しの支援に対応しています。電話相談の他、個別訪問によるコンサルティングも行われており、無料で利用することが可能です。

【参考】厚生労働省:非正規雇用労働者待遇改善支援センター

同一労働同一賃金ガイドライン案

雇用形態の別に依らない、働き方に応じた均等・均衡待遇の実現は、現場においては慎重な判断を要する難解な課題と言えます。正規と非正規の待遇差について、どのようなケースで問題ありと判断され、一方で、どんな取扱いであれば問題にならないのかが、「同一労働同一賃金ガイドライン案」で具体的に解説されています。

【参考】厚生労働省:同一労働同一賃金ガイドライン案

【関連】「同一労働同一賃金ガイドライン」の詳細・解説/BizHint HR

働き方改革実行計画

政府が有識者と共に議論を交わした全10回の働き方改革実現会議の内容が、「働き方改革実行計画」にまとめられました。本計画には、平成29年度から向こう10年間に渡り、重点的に取り組むべき9のテーマとそれぞれに関わる具体的な方針が公開されました。

本稿のテーマである「非正規雇用の処遇改善」は検討課題の一つに掲げられており、対応策として「同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備」と「非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進」の2点が明示されています。

【参考】厚生労働省:働き方改革実行計画

【関連】働き方改革とは?必要となった背景や実現会議と実行計画、事例まで徹底解説/BizHint HR

厚生労働省による支援策

非正規雇用者を抱える企業に向けた支援として、厚生労働省では企業施策の具体事例を中心とした情報の提供、そして非正規雇用者対策に活用できる助成金の創設を行っています。

多様な人材活用で輝く企業応援サイト

現状、非正規雇用問題を抱えており、今後に向けて何かしらの取り組みに着手したい事業主が活用すべきウェブサイトです。政府の調査結果から分かる非正規雇用の現状の解説、企業における非正規雇用者の処遇改善、人材育成、正社員転換に関わる具体事例の紹介、「多様で安心できる働き方シンポジウム」の告知と申込受付等を行っています

【参考】厚生労働省:多様な人材活用で輝く企業応援サイト

キャリアアップ助成金

雇用関係助成金には様々種類がありますが、有期契約労働者のキャリアアップのために活用できるのが「キャリアアップ助成金」です。

例えば、有期契約労働者の正社員転換や職業訓練、賃金改定等を行う際、その取り組みを計画書にまとめ労働局の確認を受けた後、制度として就業規則に規定し、制度に則った形で実施することで助成金を受け取ることができます。有期契約労働者に対し、正社員と同等に処遇する取り組みについても、助成金の対象となる場合があります。

【参考】厚生労働省:キャリアアップ助成金

【関連】キャリアアップ助成金とは?各コースの助成額・流れ、ポイントなど総まとめ/BizHint HR

トライアル雇用助成金

ハローワーク等を介して雇い入れた有期雇用者について、業務への適性や今後の常用雇用の可能性等を見極める期間(最長3ヵ月)の人件費の補助として、対象者1人あたり月額4万円(一定の要件を満たす労働者については月額5万円)の助成金が会社に支給される制度です。

実務経験のない若年者や小さなお子さんを抱えるシングルマザー等、通常、安定的な就職が難しいとされる労働者の雇用を検討できる会社であれば、トライアル雇用助成金を活用しながら求人を進めるのが得策です。

【参考】厚生労働省:トライアル雇用助成金

【関連】トライアル雇用とは?企業のメリット・デメリット、助成金制度について解説/BizHint HR

まとめ

  • 「非正規雇用者」には、パートタイム労働者やアルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員、その他臨時職員や日雇労働者等、幅広い雇用形態の労働者が存在します。
  • 全労働者に占める非正規雇用の割合はおよそ4割であり、平成を迎えて以降、リーマン・ショック翌年の21年を除けば、その数は継続して増加傾向にあります。
  • 近年の非正規雇用の特徴は、「65歳以上のシニア層の増加」「定年後再雇用に多い“嘱託”の割合の増加」であり、これらは高齢化の進展を象徴するものと見てとることができます。 -非正規雇用のメリット・デメリットは労使双方にあり、それぞれが非正規の良さや問題点を考慮した上で、非正規という雇用形態を上手く活用する姿勢が重要です。
  • 非正規雇用者の雇い入れにはルールがあり、正社員雇用同様、法律に則った取扱いが必要です。特に、改正パートタイム労働法に明記された「均等待遇の確保」「雇用管理の改善」「正社員転換の推進」、改正労働契約法に定められた「有期雇用労働者の無期転換申込権」「雇止め法理の法定化」「不合理な労働条件の禁止」については、使用者の十分な理解と適切な対応が求められます。
  • 非正規雇用問題への対策・解決策の一助として、政府による課題の抽出や対応策の検討、具体的な取組期間や目標の設定・公開が行われました。これをうけ、厚生労働省主導の元、企業が非正規雇用問題を考える上で有益な情報の提供や助成金の創設が行われています。

<執筆者>
丸山博美 社会保険労務士(HM人事労務コンサルティング代表)

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。一般企業(教育系)勤務時代、職場の労働環境、待遇に疑問を持ち、社会保険労務士を志す。2014年1月に社労士事務所「HM人事労務コンサルティング」を設立 。起業したての小さな会社サポートを得意とする。社労士業の傍ら、cotoba-design(屋号)名義でフリーライターとしても活動中。


注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計190,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

非正規雇用の関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次