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非正規雇用

2020年3月13日(金)更新

働き方改革の柱であった“同一労働同一賃金”が法制化され、非正規雇用者の処遇改善や正社員化が目指される一方、パートやアルバイト、有期契約労働者等は未だ着実に数を増しています。このページで、非正規雇用の定義と現状、労使双方のメリット・デメリット、雇用時の注意点の他、非正規雇用対策として政府が示す展望と対応策を確認しましょう。

非正規雇用とは

非正規雇用とは、個別の労働契約に応じた期間・時間を限定する働き方の雇用形態を指します。

非正規雇用の形態

ひと口に「非正規雇用」といっても、パートタイム労働者やアルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員、その他臨時職員や日雇労働者など、その形態はさまざまです。

パートタイム労働者

「パートタイム」というと、“お子さんが幼稚園や学校に行っている間に働くお母様方”を連想しがちですが、法律上の定義はこうしたイメージにとどまりません。

パートタイム労働者とは「正社員よりも短時間で勤務する労働者」全般を指す言葉であり、後述するアルバイトや嘱託社員、臨時職員等もすべて含まれます。

ただし、パートタイム労働者であっても、職場によってはフルタイムで働いたり、非正規であっても契約期間の定めがなかったりする場合がありますが、職務や職責、権限において正社員との差別化が図られています。

アルバイト

前項の通り、「アルバイト」はパートタイム労働者の一種ですが、こちらは主に学業の傍ら短時間勤務に従事する学生を指します。

契約社員

正社員と異なり、個別の労働契約に従い勤務する社員を指します。契約期間に定めのある「有期契約社員」の他、常用雇用ではあるものの正規雇用と比べて職務範囲や職責、権限が限定的な「無期雇用社員」が存在します。

ちなみに、契約社員の労働時間は、フルタイムの場合もあれば短時間である場合もあり、契約内容に依ります。

嘱託社員

契約社員として、会社と有期労働契約を締結する社員を指します。「嘱託」に法律上明確な定義があるわけではないですが、定年退職後の再雇用契約の形のひとつとして認識される例が一般的です。

一方で、弁護士や医師のような高度な専門性を有する者が、委嘱を受けて業務に従事するケースを指す場合もあります。後者の場合は、雇用契約ではなく請負契約となり、労働者性はありません。

【関連】嘱託社員とは?正社員・契約社員との違い、契約方法などについて解説/BizHint

派遣労働者

勤務する会社からの業務命令を受けて、異なる会社で就業する働き方です。

この場合、雇用契約の締結や社会保険等の加入、給与支払は雇用主である派遣元が、仕事の命令は派遣先が行います。実際に労働を提供する派遣先と労働者との間に、雇用関係はありません。

【関連】労働者派遣とは?改正派遣法のポイントや注意点も解説/BizHint

臨時職員・日雇労働者

臨時職員、日雇労働者という雇用形態に法的な定めはありませんが、雇用契約期間について、臨時職員は1ヵ月以上1年以下、日雇労働者は1ヵ月未満の者を指すのが通常です。

【参考】総務省統計局:「常雇 ,臨時・日雇」と「正規・非正規」

在宅ワーカー

企業と業務委託契約を締結し、自宅等で業務に従事する働き方を「在宅ワーク」といいます。この場合、発注元との間に雇用関係はなく、在宅ワーカーは個人事業主として仕事を受注します。

会社員の在宅勤務と混同されがちですが、こちらは会社と雇用契約を締結し、業務命令を受けて自宅で仕事をする形態のため、両者は似て非なるものです。

正規雇用と非正規雇用の違い

正規雇用とは、期間の定めなく、フルタイムで勤務する雇用形態を指します。

正規雇用と非正規雇用は、「働き方」の面で大きな違いがあります。契約期間の定めのないフルタイム勤務が正規雇用の働き方である一方、非正規雇用は個別の契約に従い、正規雇用と比較すると、限られた期間・時間に業務に従事します。

働き方が異なるため、当然、正規雇用と非正規雇用とでは職務範囲や職責、権限、待遇に差が生じることになります。

正規雇用と非正規雇用それぞれのメリット・デメリットについては後述しますが、両者の特徴を考慮した上で、各人に適した形態で働けることが理想です。

非正規雇用の割合

厚生労働省の調査によると、正規雇用と非正規雇用の割合比率は、平成30年時点でおよそ「6:4」となっており、非正規の割合は決して低くありません。

ここからは、非正規雇用に関わる各種データより、実態を詳しく見ていきましょう。

非正規雇用者率の推移

【出典】厚生労働省:「非正規雇用」の現状と課題

資料によると、昭和59年時点では15.3%にとどまっていた非正規雇用者率は、平成を迎えると同時に増加に転じ、平成16年以降は30%台の高い数字で推移していることが分かります。

特筆すべきは、リーマン・ショックが起きた平成20年以降、正規雇用者率は平成26年まで継続して減少傾向であるのに対し、非正規雇用者率はリーマン・ショック翌年の平成21年を除けば年々増加傾向にあることです。

平成27年以降は日本経済が緩やかな景気回復基調に転じた影響からか、正規雇用、非正規雇用共にプラス方向で推移しています。

年齢別割合の推移

【出典】厚生労働省:「非正規雇用」の現状と課題

非正規雇用割合の推移において、特徴的なのは「65歳以上の高齢者の割合が年々増加傾向にあること」でしょう。平成20年から30年までの10年間の非正規雇用労働者の年齢別の推移について、資料からは下記の実態を読み解くことができます。

  • 「15~24歳」の割合はほぼ横ばい
  • 「25~34歳」の割合は減少傾向
  • 「35~44歳」の割合はほぼ横ばい
  • 「45~54歳」、「55~64歳」の割合は増加傾向
  • 「65歳以上」の高齢者層は2倍以上増加

雇用形態別割合の推移

【出典】厚生労働省:「非正規雇用」の現状と課題

非正規労働者の雇用形態について、近年の傾向として顕著なのは「嘱託の増加」です。この背景には、平成24年の高年齢者雇用安定法改正により、定年後再雇用が拡大したことが影響しているものと考えられます。「嘱託」は、定年退職後の再雇用に多く見られる雇用形態であることから、改正法施行と無関係とは言えないでしょう。

その他、非正規労働者の雇用形態として最も多いのが「パート・アルバイト」であり、この10年間で緩やかに増加しています。「派遣」は、リーマン・ショックの影響を受け減少に転じたものの、近年では横ばいあるいは微増傾向となっています。

非正規雇用の増加理由

非正規雇用の増加理由を考える上では、日本の経済的な背景はもとより、「女性」「若者」「高齢者」の3つの切り口からの考察を欠かすことは出来ません。それぞれの観点について、非正規雇用の状況を検討しましょう。

女性の非正規雇用者

「女性」の観点から雇用を考える上で、重要なのは「正規、非正規共に増加傾向にある」ことです。2020年(令和2年)1月分の「労働力調査(基本集計)」によると、女性の雇用形態について「正規の職員・従業員」が実数1,161万人で前年同月プラス35万人、「非正規の職員・従業員」が実数1,475万人で前年同月マイナス5万人であることが明らかになっています。

女性活躍を推進する昨今の時流を受け、正規、非正規を問わず、働く女性が増えているのです。正規、非正規の割合比率をみると、およそ「4:6」とわずかに非正規雇用の率が高いことが分かります。これはおそらく、女性の場合、家庭や育児、介護等により就労に制約を受けるケースが多いためであると考えられます。

「非正規」というと、社会的には正規雇用と比べてネガティブなイメージがつきものですが、一方で「ライフスタイルに合わせて柔軟に働くことができる」という点においては、女性の社会進出を後押しする働き方のひとつと言えるのではないでしょうか。

【参考】総務省統計局:労働力調査 (基本集計)2020年(令和2年)1月分(速報)

若者の非正規雇用者

前出の資料「非正規雇用の現状と課題」によると、若者の非正規雇用労働者数は過去15年の間で横ばい、あるいは、緩やかな減少傾向にあります。しかしながら、正社員になりたくてもなれない「不本意非正規」の割合が「25~34歳」の若年層で最も高いことは問題視すべき点であると言えます。
※「不本意非正規」の割合は、「25~34歳」が19.0%で最も多く、次に割合が大きいのは「55~64歳」で14.2%です。

こうした実態を受け、若者の安定した雇用の実現に向けた政府主導による若者雇用対策、非正規雇用対策が各種行われており、今後の状況改善が期待されています。

【参考】厚生労働省:「非正規雇用」の現状と課題

高齢の非正規雇用者

高齢の非正規雇用者の現状については「年齢別割合の推移」の項で挙げたとおり、平成20年から平成30年までの10年間に、「65歳以上」でおよそ2倍に増加しています。

こうした背景には、少子高齢化がますます進展したこと、高年齢者雇用安定法改正により多くの企業で定年後再雇用が制度化されたこと、老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたこと等が挙げられます。無理のない働き方を希望する高齢労働者にとって、柔軟な就労が実現する非正規雇用は、都合の良い働き方と言えます。

ところで、高齢の非正規雇用者の増加は、決して問題視すべきものではありません。むしろ、企業において深刻化する人手不足への対応策として「シニア層の活用」は不可欠とされています。シニアの雇用創出は、今後もますます進む見込みとされています。

【参考】厚生労働省:「非正規雇用」の現状と課題

【関連】シニア活用を成功させるコツとは?課題と今後の展望を徹底分析/BizHint

非正規雇用のメリット

非正規雇用については各所で課題が取り沙汰されますが、それでもこの働き方が増加傾向となる背景には、労使双方にとってメリットがあるからに他なりません。ここでは、非正規雇用のメリットについて、労働者側と企業側双方の観点から考えることにしましょう。

労働者側のメリット

働く側にとっての非正規雇用のメリットは、総じて「働きやすさ」です。正社員では難しくとも、パートタイムやアルバイトならば一歩踏み出しやすいと感じる労働者は意外と多いかもしれません。

柔軟性が高く働きやすい

例えば「フルタイムで週5日勤務」となると、小さなお子さんを抱えるお母さんや、定年後マイペースに働きたいと考えるシニアには高いハードルです。限られた時間で自分の都合に合わせた働き方ができることは、非正規雇用ならではのメリットです。

希望する業務に専念できる

パートタイム労働者やアルバイトは、正社員と比較すると職責や権限が限定的ですが、一方で「気負わずに働ける」とプラスに捉えることもできます。また、非正規雇用者であれば基本的に当初の労働契約から大幅な変更が生じることはありません。

その点では、安心して希望の業務に従事し続けることができます。異動の可能性が低いこともポイントです。

採用のハードル設定が低い

正社員とパート・アルバイト、契約社員、派遣社員とでは、採用の条件が大きく異なります。正規雇用はその会社で長期的に働くことを前提としますから、学歴や職歴、経験、資格、能力等について一定以上の基準をクリアすることが求められます。その点、非正規雇用であれば、採用の要件が比較的緩やかであるケースが大半です。

入社希望の会社がある場合、正社員としての採用は難しくてもまずは非正規で入社し、社内でキャリアアップを目指したり、いち早く憧れの実務に携わったりする労働者は少なくありません。

企業側のメリット

非正規雇用が労働者にとってメリットのある働き方である一方、企業側にもあえて非正規雇用者を求人する理由があります。キーワードは「コスト抑制」と「雇用調整」。さっそく企業側のメリットを確認しましょう。

人件費の抑制

正規雇用と非正規雇用の差は主に待遇面にありますが、特に顕著なのは「給与体系の違い」です。パートやアルバイト、契約社員の場合、正社員と比較すると賃金が安く、賞与や退職金の支払対象外とされるのが一般的です。

また、会社にとって、雇用に伴い生じるコストは小さなものではありません。とりわけ、月々の社会保険料の会社負担が占める割合は、大きいものとなります。通常、社員一人あたりの給与の15%相当額は、社会保険加入に伴う会社負担として毎月支出することになりますから、時には企業経営を圧迫する要因ともなり得ます。

なお、平成28年10月および平成29年4月のルール変更により、社会保険の加入対象が拡大されていますので要注意です。

【参考】政府広報オンライン:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。

繁忙期に合わせた採用が可能

契約期間に定めのある非正規労働者の雇用は、繁忙期と閑散期を見据えた人員調整に活用できます。正社員として雇入れてしまうと、基本的には定年まで継続して雇用することが前提となりますが、非正規雇用の場合には、労使が合意の上で、労働契約期間を設定することができます。

必要な時に人を増やすことができ、業務が落ち着いている時には雇用を維持する責任がなくなる等、雇用調整のしやすさがメリットとなります。特に派遣社員の受け入れは、急な欠員対応にも適しています。

効率の良い採用活動ができる

非正規雇用の採用活動は、正規雇用と比較すると短期間かつ低コストで済みます。例えば新卒採用をしようとすれば、採用準備、募集、選考、内定までの全プロセスを経るまでに1~2年ほどかかります。

その点、非正規雇用の採用は通常3ヵ月ほどの期間で対応可能です。派遣会社経由で労働者を受け入れる場合には、さらに迅速な人員の確保が実現します。

非正規雇用のデメリット

非正規雇用を考える上では、メリットだけではなくデメリットにも目を向けておく必要があります。非正規雇用について、労使双方の問題点を検討していきましょう。

労働者側のデメリット

非正規雇用で働く労働者は、正規雇用の場合と比較すると、あらゆる面で「不安定」です。具体的には、収入面や待遇、キャリア形成の観点での課題が浮き彫りとなることが多いと言えます。

正規雇用との年収格差問題

2019年(令和元年)9月に公開された「平成30年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の1人当たりの平均年収は正規で504万円、非正規で179万円との結果が明らかになっています。正規雇用の年収は非正規雇用の年収のおよそ2.8倍との実態に、改めて両者の収入格差について考えさせられます。

同一労働同一賃金が施行されることで、非正規にも貢献度に応じた賃金ほかの待遇を検討しなければなりませんが、会社の整理次第では合理的な差を設けることも可能です。本来、正規雇用を希望する「不本意非正規労働者」にとって、正規・非正規の年収格差は重大な問題と感じられるでしょう。

【出典】国税庁:平成30年分民間給与実態統計調査

身分の保障における格差問題

正社員と比べて、期間に定めのあるパートやアルバイト、契約社員等の非正規労働者は、どうしても長期雇用の保障がなく、弱い立場となります。“正社員=安定”“パート・アルバイト=不安定”のイメージは、ごく一般的なものと言えるでしょう。

キャリア形成が困難

非正規雇用労働者は、当初の労働契約にある仕事のみに従事することとなり、新しい挑戦の機会は多くありません。また、基本的には一定期間のみの労働契約となるのが非正規雇用の特徴です。

さらに、非正規労働者向けの教育訓練制度が整っていないことがほとんどであり、パート・アルバイト労働者のキャリア形成を考える上では何かと難しさがあります。

企業側のデメリット

非正規雇用労働者にまつわるデメリットは、企業側にも想定されます。正規と非正規とを上手く区別して活用できなければ、意図せぬ問題に直面する可能性があります。

企業成長に悪影響

非正規雇用労働者に対し、長期的な観点から社員教育を施すことは困難です。期間に定めがある以上、いつ辞められてしまうか分かりませんし、非正規雇用労働者自身がキャリアアップを強く望んでいない場合もあります。非正規雇用を中心とした業態で展開する企業もありますが、「企業成長」を考える上では、課題は山積みでしょう。

また、実際のところは労働者各人の心持ちに依るものの、非正規の仕事に対するモチベーションの低さが問題となる例は珍しくなく、特に「不本意非正規」の場合にはその傾向が顕著であると言えます。

こうした状況をふまえ、最近では、非正規同様、労働時間や勤務地、職務範囲等に制限を設けつつも、正社員待遇を提供する「多様な正社員制度」を導入し、不本意非正規の正社員登用を推奨する企業が増えています。

正規雇用者との人間関係問題

すでにご紹介した通り、正規雇用者と非正規雇用者とでは待遇面で明らかな差が生じていることが多く、この点で正規・非正規の間でトラブルが生じることは多々あります。

例えば、新入社員とベテランパートとでは、どうしても後者が熟練しているものの、一方で給与は社員の方が高額となることがあります。こうした状況に対するパートタイム労働者の不満が職場の人間関係に不協和音をもたらすケースは、主に飲食店やスーパーマーケット等で多く見られます。また、非正規雇用者の仕事に対するモチベーションや意識の低さに、正規雇用者が不満を抱く場合もあります。

いずれにせよ、正規・非正規間のあらゆる格差は、職場の人間関係に確実に影響を及ぼすと言えそうです。

人材流出の危険性

期間に定めのある非正規雇用者である以上、正社員のように長く勤務してもらえる保証はありません。仮に優秀な契約社員がいたとしても、労使の合意なくして契約更新をすることはできず、労働者側がさらなる好待遇を求めて他の企業に目を向ける可能性は常に付いて回ります。

非正規雇用者を中心とした会社は、常に人材流出の危機にさらされることになります。

非正規雇用者の雇用ルール

ここからは、非正規雇用者(有期雇用者・パートタイム労働者)の雇用ルールについて確認しましょう。

同一労働同一賃金

2018年(平成30年)6月の「働き方改革関連法」の成立により、これまでの「パートタイム労働法」が「パートタイム・有期雇用労働法」に変わり、パートタイム労働者だけでなく有期雇用労働者についても対象とする法律になりました。

この法律は同一労働同一賃金の実現を図るためのもので、2020年4月1日から施行(中小企業は2021年4月1日から適用)されますが、パートタイム労働者および有期雇用労働者の待遇については次のような対応が必要になります。

  1. 不合理な待遇差の禁止
    同一企業内の正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
  2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになり、事業主は非正規雇用労働者から求めがあった場合には説明をしなければなりません。

これまでも、パートタイム労働者については不合理な待遇差を禁止する旨の規定はありましたが、有期雇用労働者も含めてより厳格なものとなっています。

【関連】2020年4月施行!「同一労働同一賃金」とは?企業の対応を徹底解説/BizHint

同一労働同一賃金ガイドライン

厚生労働省では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に待遇差が存在する場合、どのような待遇差が合理的であるのか合理的でないのかを示すため、「同一労働同一賃金ガイドライン」を公表しています。

このガイドラインでは、賃金のほか福利厚生なども含め、典型的な事例として整理できるものについて、問題とならない例と問題となる例を挙げて具体的に解説しています。

【参考】厚生労働省:同一労働同一賃金ガイドライン

雇用契約について

非正規雇用者との雇用契約は、正規雇用者と同様の手続きが求められます。

そのため、非正規雇用者を雇い入れる場合にも、正規雇用者と同様に法律に基づく雇用ルールに則った対応が求められます。

「短期のアルバイトなら、雇用契約の締結にさほど神経質になることはない」と考える方もいるかもしれませんが、こうした認識は直ちに改める必要があります。非正規雇用者の雇い入れであっても、適当で良いと考えることは出来ません。

基本原則

労働契約法第3条では、労使が雇用契約を締結する上での5つの原則が明文化されており、これは労働者の雇用形態を問わず守らなければなりません。

  • 対等な立場における合意に基づくこと
  • 就業実態に応じた均衡への配慮をすること
  • 仕事と生活への調和に配慮すること
  • 信義則にのっとり権利を行使し、義務を履行すること
  • 権利を濫用しないこと

労働条件の明示

労働時間や賃金等に関わる労働条件については、労働契約の締結時に書面などで分かりやすく伝えなければなりません。

具体的な項目については、労働基準法施行規則第5条に、下記の通り列挙されています。

  • 労働契約の期間
  • 有期雇用の場合、契約更新の基準に関する事項
  • 勤務場所及び業務に関する事項
  • 始業・終業の時刻と休憩時間
  • 時間外・休日労働の有無
  • 休日、休暇
  • 労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(退職手当及び賞与等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与、精勤手当等及び最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

有期雇用者の場合、特に重要なのが「契約期間」「契約更新の有無」「契約更新の基準」です。

これらは曖昧にしておくと労使トラブルの引き金となりかねない項目ですので、書面での明示と併せて口頭で説明をしておくと安心です。

厚生労働省では、上記の項目を網羅する労働条件通知書のひな形を公開しています。

契約期間について

有期雇用者が一度に契約できる期間の上限は原則「3年」です。この「3年」を必要以上に短期間で区切る等をして、雇用を不安定な状態にしないよう配慮すべきとされています。

ただし、例外で「5年」もしくは上限適用なしの扱いとされる場合があります。

最長「5年」の契約が可能となるのは、「一定の専門的職種に従事する者」と「満60歳以上の者」です。対象となる専門的職種については、厚生労働省が細かな基準を定めています。

契約期間に制限を設けない例としては、「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」の要件に該当するか否かが問題となります。例えば、有期の建設工事やイベント事業等、原則の3年を超えるものの明確な終期が設けられたプロジェクト形式の事業がそれにあたる可能性が高いと言えます。

ただし、判断を誤れば意図せず法違反となるため、契約に際し、契約期間に上限を設けなくとも良いかを労働基準監督署等に確認されることをお勧めします。

【参考】厚生労働省:労働契約期間の上限について

契約内容の変更はできる?

労使の契約内容は、両者の合意の元でいつでも変更できます。ですが、この場合でも法律の定め、もしくは就業規則に記載される条件を下回ることは出来ません。変更後の契約内容について、万が一これらに満たない内容があれば、その部分は無効となり、法律もしくは就業規則の定めに準じます。

就業規則自体を変更する場合、法定の基準を下回ることは出来ません。また、従前の労働条件より不利益に変更する際、「合理的理由」に加え、「労働者への周知徹底」が必要となります。

解雇時のルール

正規雇用であれ非正規雇用であれ、解雇時には原則、同様の手続きを行います。やむを得ない理由につき労働者を解雇する場合には、就業規則に定められた解雇事由を根拠とし、30日前の予告、又は解雇予告手当の支払いのルールに従います。

しかしながら、実務上は労働契約期間に定めのある有期雇用者に対しては解雇を行わず、「契約期間満了」を以て円満に退社手続きを進めるケースがほとんどです。

【参考】東京労働局:しっかりマスター労働基準法 解雇編

有期雇用労働者の無期転換ルール

平成25年4月1日施行の改正労働契約法の施行により、有期雇用労働者との雇用契約ルールに大きな変更が生じました。

最も注目されたのは「無期転換権」ですが、改正労働契約法のポイントとしておさえておくべきルールを2点、解説しておきましょう。

通算5年で無期労働契約へ

有期雇用労働者は、同一の事業主との有期労働契約が通算5年を超える場合、申し込みにより期限の定めのない労働契約(無期雇用)に転換することができるようになりました。

この「通算5年」のカウントが平成25年4月1日から始まったことから、5年後である平成30年4月2日以降、順次、無期転換権を有する有期雇用労働者が生じることになります。

企業においては、有期雇用労働者の無期転換ルールに対応するべく、人事制度の見直しや諸規程の改訂、労働者への周知徹底等が進められています。厚生労働省からも、ポータルサイトを通じて無期転換ルールに関わる積極的な情報提供が行われています。

【参考】厚生労働省:有期契約労働者の無期転換ポータルサイト

雇止め法理の法定化

有期労働契約においては「契約期間満了」による雇い止めが可能です。しかしながら、労働契約法第19条では例外として、従前の労働契約の状況が下記のいずれかに該当する場合で、労働者が使用者に対し契約更新を申し出た際には、合理的理由がない限り、使用者はこれを拒むことができない旨が定められています

  • 過去に何度も契約更新されており、実質、無期労働契約と同一視できる場合
  • 労働者が労働契約の更新を期待することに合理的理由がある場合

非正規雇用にまつわる問題解決対策

非正規雇用の待遇改善については、上記で説明したとおり同一労働同一賃金が2020年4月1日から施行されますが、ここに至るまでに政府がどのように非正規雇用問題の解決に向け、対策を打ち出してきたのかについてご紹介しましょう。

厚生労働省による対策

非正規雇用者の労働条件の向上、及び安定した雇用の実現に向け、厚生労働省では下記のような対策を講じています。

正社員転換・待遇改善実現プラン

同一労働同一賃金の法制化に先立って、厚生労働省では2016年(平成28年)1月に「正社員転換・待遇改善実現プラン」というものを公表しています。

本プランでは、平成28~令和2年度の5ヵ年を計画期間として、非正規雇用者の正社員転換や待遇改善に関わる目標値、政府としての取り組み内容をまとめています。具体的には、下記の主要目標達成に向け、主にハローワークや雇用関係助成金の活用、情報提供等の施策を打ち出しています。

  • 不本意非正規雇用労働者の割合(全体平均):10%以下(平成26年平均:18.1%)
  • 新規大学卒業者の正社員就職の割合:95% (平成27年3月卒:92.2%)
  • 新規高校卒業者の正社員就職の割合:96% (平成27年3月卒:94.1%)
  • 正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の縮小を図る。

そのほか、非正規雇用者の待遇改善の取り組みとして「同一労働同一賃金」の推進策を検討することなども掲げられました。

【参考】厚生労働省:正社員転換・待遇改善実現プランの決定について

働き方改革関連法

2017年(平成29年)3月、政府が有識者と共に議論を交わした全10回の働き方改革実現会議の内容が、「働き方改革実行計画」にまとめられました。「非正規雇用の処遇改善」は検討課題の一つに掲げられており、対応策として「同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備」と「非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進」の2点が明示されています。

そして、2018年(平成30年)6月、政府は「働き方改革関連法」を成立させました。非正規雇用労働者の「同一労働同一賃金」のほか、時間外労働の上限規制などが新たに規定されています。

「同一労働同一賃金」は、大企業については2020年4月から、中小企業については派遣労働者の「同一労働同一賃金」を除き、2021年4月から適用されることとなっています。

【関連】働き方改革関連法とは?改正内容と企業に求められる対応について徹底解説/BizHint

厚生労働省による支援策

非正規雇用者を抱える企業に向けた支援として、厚生労働省では相談窓口の設置や企業施策の具体事例を中心とした情報の提供、また、非正規雇用者対策に活用できる助成金を支給しています。

非正規雇用労働者待遇改善支援センター

企業における非正規雇用問題の相談窓口として、各都道府県に専門機関を設置し、非正規雇用者の労務管理や待遇改善に関わる相談や、賃金設計や社内規則の作成・見直しの支援に対応しています。 電話相談の他、個別訪問によるコンサルティングも行われており、無料で利用することが可能です。

【参考】全国社会保険労務士会連合会:お知らせ 【厚生労働省委託事業】非正規雇用労働者待遇改善支援センターについて

多様な人材活用で輝く企業応援サイト

現状、非正規雇用問題を抱えており、今後に向けて何かしらの取り組みに着手したい事業主が活用すべきウェブサイトです。 政府の調査結果から分かる非正規雇用の現状の解説、企業における非正規雇用者の処遇改善、人材育成、正社員転換に関わる具体事例の紹介、「多様で安心できる働き方シンポジウム」の告知と申込受付等を行っています

【参考】厚生労働省:多様な人材活用で輝く企業応援サイト

キャリアアップ助成金

雇用関係助成金には様々種類がありますが、有期契約労働者のキャリアアップのために活用できるのが「キャリアアップ助成金」です。

例えば、有期契約労働者の正社員転換や職業訓練、賃金改定等を行う際、その取り組みを計画書にまとめ労働局の確認を受けた後、制度として就業規則に規定し、制度に則った形で実施することで助成金を受け取ることができます。有期契約労働者に対し、正社員と同等に処遇する取り組みについても、助成金の対象となる場合があります。

【関連】キャリアアップ助成金とは?正社員化コース等の助成額・申請方法・条件まとめ/BizHint

トライアル雇用助成金

ハローワーク等を介して雇い入れた有期雇用者について、業務への適性や今後の常用雇用の可能性等を見極める期間(最長3ヵ月)の人件費の補助として、対象者1人あたり月額4万円(一定の要件を満たす労働者については月額5万円)の助成金が会社に支給される制度です。

実務経験のない若年者や小さなお子さんを抱えるシングルマザー等、通常、安定的な就職が難しいとされる労働者の雇用を検討できる会社であれば、トライアル雇用助成金を活用しながら求人を進めるのが得策です。

【関連】トライアル雇用とは?企業のメリット・デメリット、助成金制度について解説/BizHint

まとめ

  • 「非正規雇用者」には、パートタイム労働者やアルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員、その他臨時職員や日雇労働者等、幅広い雇用形態の労働者が存在する。
  • 全労働者に占める非正規雇用の割合はおよそ4割であり、平成を迎えて以降、リーマン・ショック翌年の21年を除けば、その数は継続して増加傾向にある。
  • 近年の非正規雇用の特徴は、「65歳以上のシニア層の増加」「定年後再雇用に多い“嘱託”の割合の増加」であり、これらは高齢化の進展を象徴するものと見てとることができる。
  • 非正規雇用のメリット・デメリットは労使双方にあり、それぞれが非正規の良さや問題点を考慮した上で、非正規という雇用形態を上手く活用する姿勢が重要である。
  • 非正規雇用者の雇い入れは、正社員と同様、法律に則って行わなければならず、待遇については同一労働同一賃金を勘案して合理的なものとしなければならない。
  • 政府・厚生労働省は非正規雇用問題について様々な施策を講じているが、働き方改革では同一労働同一賃金の法整備を行い、そのほか、企業の相談窓口の設置や有益な情報の提供、助成金の支給などを行っている。

<執筆者>
丸山博美 社会保険労務士(HM人事労務コンサルティング代表)

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。一般企業(教育系)勤務時代、職場の労働環境、待遇に疑問を持ち、社会保険労務士を志す。2014年1月に社労士事務所「HM人事労務コンサルティング」を設立 。起業したての小さな会社サポートを得意とする。社労士業の傍ら、cotoba-design(屋号)名義でフリーライターとしても活動中。


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