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短時間正社員

2020年2月3日(月)更新

短時間正社員とは、正規雇用でありながらも時間に配慮した新しい働き方の一つです。この制度が推進された事により、フルタイム正社員から自身のライフスタイルに合わせた勤務形態に変更したり、非正規雇用から正社員を目指しキャリア形成を実現するなど、多様な働き方が選択できるようになりました。今回はこの「短時間正社員制度」の概要をはじめ、企業側・従業員側のメリット・デメリット、導入手順、企業事例まで詳しくご紹介します。

短時間正社員について

ここでは「短時間正社員制度」と、短時間正社員の定義、その他の働き方との違い等について見ていきましょう。

短時間正社員制度とは

短時間正社員制度は、育児や介護と仕事の両立に対応するだけでなく、健康不全や高齢者の継続雇用など様々なニーズに対応可能な、時間に配慮した新しい正規雇用での働き方であり、厚生労働省が正社員雇用促進策の一つとして推進する取組みです。

【参考】短時間正社員制度について/短時間正社員制度 導入支援ナビ

短時間正社員とは

短時間正社員とは、フルタイム正社員と比べて1週間の所定労働時間が短い正規雇用の労働者を指します。

次の二つの要件いずれも満たすことが必要です。

  • 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に基づき雇用されている
  • 1時間当たりの基本給、賞与および退職金などの算定方法が、同種の仕事に就くフルタイム正社員と同等である

フルタイム正社員との違い

厚生労働省は、以下の就労条件の下で働く労働者をフルタイム正社員と定義しています。

  • 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に基づき雇用されている
  • 1週間の所定労働時間が40時間程度(1日8時間・週5日勤務など)である

短時間正社員は、1日5時間で週5日勤務、1日8時間で週4日勤務であるなど、フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が40時間より短い勤務とされます。

パートタイマーとの違い

厚生労働省は、パートタイマーを「同じ職場の正規雇用の労働者と比較して、1週間の所定労働時間が短い労働者」と定義していますが、労働契約形態については特に定めていません。

一般的にパートタイマーの労働契約は、期間の定めのある契約(有期労働契約)です。短時間正社員は、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に基づき雇用されるため、パートタイマーとは契約形態が異なります。

【関連】パートタイム労働法とは?今までの改正内容や現行法のポイントについて徹底解説/BizHint

短時間正社員の労働条件

短時間正社員の要件を満たす労働条件を以下に整理します。

  • 雇用形態:正規雇用の正社員
  • 労働契約:期間の定めのない無期雇用契約に基づき雇用
  • 労働時間:フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短く調整される
  • 賃金などの待遇:同じ職場のフルタイム正社員と一時間当たりの賃金、賞与、退職金などの算定方法が同等

【参考】短時間正社員制度について 短時間正社員制度 導入支援ナビ/厚生労働省

短時間正社員制度の目的

企業は、人々の就労意識の変化に合わせて、労働時間を短く調整する働き方を労働者に許容する「短時間正社員制度」を導入することにより、既存従業員の定着率向上や新たな人材の獲得を図ります。

育児・介護支援

子育てや家族の介護をしている場合、フルタイム勤務では時間に制約があり、仕事との両立が難しいとされていました。

このようなライフステージにありながら就業の継続を希望する労働者に短時間勤務を認めることで、育児・介護と両立しながら働くことを支援し、離職の防止にも役立ちます。

モチベーション向上

意欲や能力の高いパートタイマーなど、非正規雇用の労働者に「短時間正社員制度」を適用し、勤務時間に配慮した正規雇用へ転換することで、労働者のモチベーションアップと職場の定着率向上が図られます。

家庭などの事情で時間に制約があり、スキルや能力を保持しているにもかかわらず、パートタイマーとしてしか働けなかった労働者の多くは、正規雇用としての安定した就労を望んでいます。企業がこの要望に応えることで、スキルや能力を保持したモチベーションの高い新たな人材の獲得手段としての機能も期待できます。

【関連】モチベーションの意味とは?低下の要因や上げる方法、測定手法や企業施策までご紹介 / BizHint

キャリア支援

グローバル化などの社会や経済の急速な変化に伴い、労働者に求められる能力は高度化しています。スキルアップやキャリアビジョンに沿った能力開発に対する労働者のニーズは年々高まりを見せています。また、人々のライフスタイルは多様化し、社会貢献、地域貢献に対する意欲の高い労働者も増えています。

企業は、これらの自発的な自己啓発や貢献活動について、労働時間に配慮することで後押しし、社員の働き方の幅を広げ、キャリアアップを支援することができます。

心身の健康不全対策

メンタルヘルス上の理由や様々な疾病の影響で、入院や通院などによる加療が必要な労働者は、治療のために安定した収入が必要であるにもかかわらず、フルタイムで就労を続けることが困難でした。

企業は、十分なスキルや能力を保持しながら健康上の理由でフルタイムでは働けない労働者に、労働時間を短く調整し治療を続けながら安定して働くことができる環境を提供することで、病気による離職を防止できます。

また、復職する際にも、すぐにフルタイム勤務を適用することは労使ともに不安が伴います。短時間勤務により病気の再発を防止し、円滑に職業生活に復帰するための受け皿としての機能も期待されます。

シニア活用

年金給付額など社会保障が先細る中、定年後も自身のスキルやノウハウを生かして働き、生活水準を維持したいと考える労働者が多数存在します。また団塊世代の定年退職により、大量の人材流出とともに技術やノウハウの継承に支障をきたした企業の多くは、十分なスキルや能力を保持し身体的にも問題のない高齢者の雇用継続を望んでいます。

企業は、フルタイム勤務を望まない高齢者に対して、労働時間に配慮した働き方を提供することで人材の確保とスキルやノウハウの円滑な継承が可能となります。

【関連】シニア活用を成功させるコツとは?課題と今後の展望を徹底分析 / BizHint

短時間正社員制度導入のメリット

導入のメリットについて、企業側、そして人材側双方の目線で見てみましょう。

企業側のメリット

企業が短時間正社員制度を導入するメリットを以下に整理します。

優秀な人材確保・流出を防ぐ

子育てや介護、定年、健康など様々な理由で就業を継続できなかった、スキルや能力を保持する労働者の離職を防ぐことで、人材流出を予防し安定的な要員確保を行うことができます。

また、家庭の事情などで時間的な制約を受け、スキルや能力は正社員と同程度認められるにもかかわらず、アルバイトやパートなどで断続的なキャリア形成を行わざるを得なかった労働者も多く存在します。その中でも、正規雇用での就労を希望する者に、労働時間を短く調整し、採用基準のハードルを下げることで、新たな人材確保が可能となります。

生産性の向上

日本では、従来労働者は長時間労働に耐えながら、正規雇用で定年まで安定的にキャリアを形成することが当然とされてきました。こうした長時間労働を是とする職場環境が、日本を世界に類を見ない労働生産性の低い国にした、と言われています。この現状を踏まえ、企業は労働時間を適正化し、生産性の維持向上を図るよう国から求められています。

企業の労働生産性の維持向上に向けた施策の一つとして、短時間正社員制度には、労働時間の短い正社員を一定比率確保することで生産高を維持しつつ、総労働時間を逓減する効果が期待されています。

【関連】生産性向上のために行うべき5つの取組みと企業事例を紹介。個人でできる施策も/BizHint

法令改正への円滑な対応

労働契約法や労働者派遣法の改正に伴い、企業は一定の要件を満たすパートタイマーなど有期契約に基づき働く労働者を、無期労働契約へ転換させる必要があります。転換させるにあたり時間の制約がある従業員の受け皿として、短時間正社員制度導入が有効となります。

また、高年齢者の雇用継続や育児・介護に携わる労働者への対応のため、労働時間等に配慮した制度がすでに企業内に設けられている場合が多く、これらを短時間正社員制度へ一本化することで、円滑かつ効率的な労務管理が期待できます。

労働者側のメリット

次に、労働者側のメリットについて見てみましょう。

ワーク・ライフ・バランスの確保

近年、人々のライフスタイルに対する考え方は、多様化しています。それに伴い、労働者の仕事への動機も金銭的報酬やポジションだけにとどまらず、家庭生活と仕事の両立が可能である、地域貢献、社会貢献に理解がある、自身の能力開発を支援してくれるなど、様々な動機を掲げるようになっています。

短時間正社員制度では、労働者自身に労働時間を選択できるオプションを提供することで、ワーク・ライフ・バランスの推進を図ることができます。

【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?正しい意味や取り組み、企業事例などご紹介/BizHint

キャリア形成の実現

これまで、時間的な制約によりパートやアルバイトなどの非正規雇用で働かざるを得なかったケースでも、短時間正社員制度の導入により、正規雇用としての採用が可能となります。それにより、正社員と同等の責任のある職務を任されたり、評価制度や研修などの適用対象になる事で、確実なスキルの向上が見込めます。また、無期労働契約となる事で、蓄積した経験を途切れさせる事がなくなり、継続的なキャリア形成が実現できます。

処遇の改善

勤務時間に制約がある場合でも、正規雇用として採用される道が拓けた事により、正社員と同等の福利厚生や給与体型が適応されるようになります。それにより、給与面であれば安定的な基本給やボーナス支給。また、福利厚生で言えば、有給休暇や社会保険など、様々な面での処遇の改善が期待できます。

短時間正社員制度導入のデメリット

短時間正社員制度を導入するにあたり、留意しなければならない点もあります。

繁忙期などに周囲の理解を得づらい

トラブル発生時や繁忙期などの局面では、短時間正社員がフルタイム正社員として働く同僚や上司から先に帰ることの理解を得ることが難しく、職場環境を混乱させる可能性があります。正社員から不満が噴出するケースもあり、管理者は事前のルールの周知やバランスの取り方に注意が必要です。

希望する職務を任せられない場合も

経営戦略や営業企画、デザインなどの創造的な仕事では、帰宅にあたり明確な区切りをつけて仕事を同僚へ引き継ぐことが難しく、補助的あるいは定型的な仕事を割り当てられ、短時間正社員のモチベーションを下げる可能性があります。加えて、短時間正社員制度を長期間利用することで、希望の職種につけない、昇進できないなどキャリア形成に支障をきたす場合や、仕事配分への不満などから仕事へのやりがいを持てないなど、制度導入が結果的には現場の士気を下げる可能性もあります。

労務管理の負担の増大

フルタイム正社員、短時間正社員、パートタイマーなど労働時間、処遇などの条件が異なる職種を複数抱えた結果、労務管理のオペレーションが増大し、管理部門の負荷が大きくなる懸念もあります。

短時間正社員制度の導入手順

短時間正社員制度導入の手順を以下に説明します。

現状分析・課題やニーズの把握

企業ごとの人材活用上の課題は様々で、短時間正社員制度導入の目的も課題に応じて異なってきます。自社の現状分析、課題の抽出により導入目的を明確にする必要があります。

併せて、制度導入によって想定される職場マネジメント上の新たな課題や従業員のニーズなどを十分に検討し、より具体的な制度設計を行うためのベースを整えます。

制度・施策案の策定

現状分析の結果から得られた課題やニーズを踏まえ、自社の人事方針に沿った制度設計案、施策案を策定します。

策定作業においては、育児休業中の従業員など実際に制度を利用すると想定される労働者や、対象労働者の人事マネジメントを担う管理職や職場の同僚から、職場運営上の問題や公平性の観点から十分な意見聴取が望まれます。人材育成や現行の人事制度との整合性なども検証することが求められます。

短時間正社員の労働条件の決定

現状分析・課題抽出、対応策の検討などから作成した大枠の制度設計案から、より具体的な短時間正社員の労働条件を決定します。

  • 適用の範囲、期間
    制度を利用できる従業員の範囲や適用できる期間について定めます。
  • 就業時間、就業時間帯
    就業時間を一定とするのか複数のパターン認めるのか、就業時間帯を設けるのかなどを定めます。
  • 処遇
    短時間正社員の基本給は、フルタイム正社員の基本給をもとに労働時間に比例して調整した金額となります。諸手当などについては手当の役割などを踏まえ個別に検討することとなります。
  • 人事評価および昇進・昇格
    人事評価方法においては、仕事の量を評価する業績評価などは労働時間に応じた配慮が必要になりますが、仕事の質を評価する場合は、フルタイム正社員と同等の指標で評価することが可能です。人事評価に基づく昇進・昇格を決定する場合において、労働時間が短いことを理由に短時間正社員の評価を低減し、昇進昇格を調整することはできません。
  • 教育訓練
    短時間正社員に期待される役割を踏まえて実施することが求められます。職場に同じ仕事に従事するフルタイム正社員がいる場合は、同等の教育訓練機会を与えることが必要です。
  • フルタイム正社員への復帰・転換
    短時間正社員制度導入にあたり、将来フルタイム勤務への復帰や転換を見込む場合は、その基準や手続きについてあらかじめ定める必要があります。

短時間正社員制度導入を周知する

短時間正社員制度の導入にあたっては、就業規則を定め従業員に周知する必要があります。

短時間正社員制度の注意点

短時間正社員制度導入にあたり、注意すべき事項について整理します。

就業規則について

短時間正社員制度を導入する際、導入の必要性や利用することのメリット、留意点を正確に伝え、就業規則に労働条件を明記することで、処遇などにおけるトラブルを未然に防ぐことができます。

【関連】就業規則とは?作成手順や記載すべき内容、届出、周知の方法まで解説/BizHint

社会保険・雇用保険の適用について

短時間正社員に社会保険を適用するためには、以下の三つの要件を満たす必要があります。

  1. 労働契約、就業規則、賃金規定などに短時間正社員にかかわる規定がある。
  2. 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に基づき雇用されている。
  3. 賃金規定における処遇などが職場の同じ仕事に従事するフルタイム正社員同等であり、かつ、就業実態が短時間正社員にかかる諸規定に沿ったものである。

雇用保険については、1週間の所定労働時間が20時間以上である場合は適用になりますが、20時間未満であれば加入できないことに留意が必要です。

助成金の活用(キャリアアップ助成金)

企業が短時間正社員制度を導入し、就業規則などを定め、すでに雇用しているパートタイマーなど非正規雇用の労働者を短時間正社員として雇用し一定の要件を満たした場合、キャリアアップ助成金制度「正社員化コース」により一定の金額が企業に助成されることとなります。

【関連】キャリアアップ助成金とは?各コースの助成額・流れ、ポイントなど総まとめ/BizHint

導入企業の事例

短時間正社員制度導入事例をご紹介します。

IKEA(イケア・ジャパン)

イケア・ジャパンは、2014年9月に短時間正社員制度導入を導入しています。「人の力を信じる」という理念に基づき、「ダイバーシティ&インクルージョン」(多様な人材の受容と活用)「セキュリティー」(長期的な関係構築の保障)「イクオリティー」(平等な機会創出)の三つの施策を柱として、大きく四つの制度改革を行いました。

  • 全従業員が無期労働契約へ転換
    従来パートタイマーは半年ごとに契約更新を行っていましたが、一部の期間雇用の労働者を除き、全員無期労働契約へ転換しました。
  • 同一労働同一賃金を実現
    雇用形態により異なっていた賃金算定方法を統一し、時間換算した賃金を正社員と同レベルまで引き上げました。
  • 福利厚生
    休暇など従来労働時間により異なっていた福利厚生制度を統一し、平等に取得できるようになりました。
  • 雇用保険・社会保険の加入
    従来雇用保険や社会保険が適用とならなかったパートタイマー労働者は、処遇改善により全員加入することができました。

【参考】イケア・ジャパンの短時間正社員/IKEA

モロゾフ株式会社

モロゾフ株式会社は、2007年「ショートタイム社員制度」と称して短時間正社員制度を導入しています。

人口減少による労働力不足や改正パートタイマー労働法などの環境変化に対応するため、「良質な人材確保と人材流出の防止」および「就業形態・職業観の多様化への対応」を柱に、パートタイマーの戦力化を図る目的で短時間正社員制度を導入しています。制度導入により即戦力の採用ルートが一つ増え、会社の採用戦略に大きく貢献しています。

  • 正規雇用への転換ルールを整備
    フルタイム正社員に至る前段階のパートタイマーのステップアップとして、ショートタイム社員制度を設けています。ショートタイム社員への転換には勤続3年以上、上司の評価、筆記・適性試験、役員面接など六つの要件をすべて満たすことが求められます。ショートタイム社員転換後1年を経過すれば、本人の選択でいつでもフルタイム社員への転換が可能です。
  • 正社員もショートタイム社員制度の利用が可能
    ショートタイム社員制度は、パートタイマーからのステップアップのみならず、正社員が育児、介護、自己啓発や健康不全などの理由により活用することができます。

【参考】短時間正社員制度導入支援ナビ 短時間正社員制度導入企業事例一覧 モロゾフ株式会社/厚生労働省

まとめ

  • 人々の就労意識は、家庭や健康などに則した様々な働き方を自ら選択する方向へ変化しつつあり、この動きに柔軟に対応し要員確保のための制度として、企業は短時間正社員制度を積極的に導入にしている
  • 企業側にとっては、人材とのエンゲージメント強化、生産性の向上、また労働法の改正への円滑な対応など、様々なメリットがある
  • 従業員の共感を得て自律した行動を促す制度を構築するために、公平性に配慮した人材マネジメントポリシーの確立が、短時間正社員制度導入の成功の秘訣

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