連載:第41回 経営危機からの復活
日替り弁当のみで年商70億だった玉子屋。V字回復の礎は社長が15年貫いた「社員との対話」
1食500円の日替わり弁当をオフィスに宅配する「玉子屋」。日替わり弁当だけで年商70億円という事業のビジネスモデルは、アメリカの名門・スタンフォード大学のMBAでもケーススタディとして取り上げられるほどです。「正直、負ける気がしなかった」と語るのは社長の菅原勇一郎さん。しかし、2020年コロナウイルス蔓延の影響によりオフィス街から人が消え、売上は1/3、一気に月3億円の赤字に陥ってしまいました。さらに追い打ちをかけるように、重大な事故を起こしてしまいます。この危機的状況からどう這い上がっていったのか。詳しくお話を伺いました。
株式会社玉子屋
代表取締役社長 菅原勇一郎さん
1969年東京生まれ。立教大学(体育会硬式野球部所属)卒業、富士銀行(現みずほ銀行)入行。流通を学ぶため、小さなマーケティング会社に転職し、1997年「玉子屋」に入社、2004年代表取締役社長に就任。97年当時12億円程度だった売り上げを70億円まで伸ばした。2015年からは、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)にも、フォーラムメンバーズとして選出されている。2022年12月に著書 『東京大田区・弁当屋のすごい経営』(扶桑社新書)が発売。
日本一の弁当屋「玉子屋」が赤字に転落。何があったのか
――貴社は日替わり弁当だけで年商70億、まさに日本一の弁当屋としての地位を築いてこられました。中小企業でありながら、世界最高峰のビジネススクールであるスタンフォード大学MBAの教材に、事例として選出されています。非常に安定した経営を行っていらっしゃった印象ですが、2020年以降、大きな変化があったそうですね。
菅原勇一郎さん(以下、菅原): 2004年に代表取締役社長に就任してから、業績を着実に伸ばし、2019年には一日平均62,000食を売り上げていました。どこにも負けないお弁当を作っている自信はありましたし、この先もずっと右肩上がりの成長を続けられると考えていました。
一食500円(税込)の日替りオフィス弁当。高い精度の需要予測と独自の仕組み構築により、平均廃棄ロス率は0.1%未満。無駄を徹底的に排除、仕入れ原価率50%を実現(画像引用)
菅原: しかし2020年、 このまま勝ち続けられるとは限らないと、身をもって体験したのです。 想像もできないようなことで負けることもあるのか…と。
それが、2020年から感染が広がっていったコロナウイルスによるパンデミックです。
玉子屋の主要なお客様は、港区や中央区など都心15区にオフィスを構える大企業です。2020年4月に緊急事態宣言が発令され、当社のお客様である多くの企業は在宅勤務になってしまいました。当時在宅勤務を推奨した大企業は、ほぼ玉子屋の弁当を食べていたと言っても過言ではないでしょう。そういった方々が物理的に出社できなくなったので、6万食あった注文は2万食まで減り、一気に月3億円の赤字に陥ってしまったのです。それが3か月ほど続きました。
夏になって緊急事態宣言が解除されたものの、食数は1日3万食程度までしか回復せず、苦しい日々が続きました…。しかし、コロナ禍はいつか終息する。そうすれば、会社一丸になって頑張れば復活できる。そう信じていました。しかしその矢先、忘れもしない2020年8月28日。飲食業では絶対にあってはならないことを起こしてしまったのです…。
――それは一体…?
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