連載:第40回 経営危機からの復活
松下幸之助の「ダム式経営」が会社を救った。「1円でも売上を」全社で遂げたV字回復


稲盛和夫も承継した松下幸之助の「ダム式経営」。数十年前の父の代からこれを愚直に貫き、実践していたからこそ「史上最大の危機を生き延びられた」と語るのは、道頓堀ホテルなどを手掛ける株式会社王宮の橋本社長と橋本専務。インバウンド需要の波に乗り絶好調だった事業は、コロナ禍で売上ゼロに。そんな中で「社員の雇用は守る」と宣言し「1円でも売上が上がることを」と挑戦する中で、会社は一歩一歩強くなっていきます。「いつか来る逆境にも潰されず、むしろそれをバネに成長する経営」について聞きました。

父子で貫いてきたダム式経営が、数十年を経て会社を救った
――前回は、インバウンドのお客様に特化し、社員にやりがいを持って働いてもらうための改革で宿泊事業が危機を脱し躍進を遂げたお話を伺いました。今回は、史上最大の危機「コロナ禍」について伺います。
橋本正権さん(以下、社長): 王宮/道頓堀ホテルグループ(以下、王宮)は、宿泊、宴会、遊技場の3つの事業を展開していますが、コロナ禍前まで破竹の勢いだったのがインバウンドを対象にした宿泊事業です。道頓堀ホテルとザ・ブリッジホテル心斎橋が約90%、大阪逸の彩ホテルは80%前後と、ほとんど満室に近い状態が続いていました。
それがコロナ禍で一変。まさに壊滅しました。
お客様は途絶え、緊急事態宣言もあってホテルはすべて閉鎖。全事業がストップして、収入はゼロになりました。
――どうされたのでしょう?
社長: コロナ禍がいつ収束するのか、まったく先が見えない状況でした。
ただ、会社は社員あってのもの。ですから「雇用は絶対に守る」ということを最優先に、「売上ゼロが続いた場合に、手元資金でどのくらい存続できるのか」をシミュレーションしました。
並行して金融機関をまわり、運転資金借り入れの相談をしました。幸い融資が受けられることになり、手元資金と融資分をあわせると、数年間は持ちこたえられる見込みだとわかりました。
その上で、社員とアルバイトのスタッフに『雇用を保証する』こと、政府の休業補償で足りない分は会社が負担することも伝えました。その後、国から雇用調整助成金が支給されることになりましたが、ともあれここからが長い闘いの始まりでした。
当社の経営に(もし…)があるとすれば、父の代から貫いた「理念」と、松下幸之助さんが仰っていた「ダム式経営」がなければ…今こうして会社は存続していなかったかもしれません。
――貴社の「理念」と「ダム式経営」、どのようなものでしょうか?
社長: 父が貫いていた、そして私が受け継いで同じく貫いてきたのは、
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バックナンバー (41)
経営危機からの復活
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