連載:第35回 リーダーが紡ぐ組織力
「社員が休めば業績が上がる」を証明した超ホワイト企業。「会社が潰れる」警告にも貫いたリーダーの信念
社員が休めば休むほど、業務の効率がアップした。そんな会社があります。それは、大阪市に本社を置く株式会社天彦産業。同社 取締役会長 樋口友夫さんは社長就任時に「社員第一主義」を掲げ、顧客から「そんな理念では会社が潰れる」と言われても、信念を貫き通しました。そして、社員の休暇制度を充実させて以降、従業員数42名という規模でありながら堅実に成長を続け、超ホワイト企業とも言われるその働き方は、2014年に故・安倍晋三元首相も視察に訪れたほど。社員が休むことと、業績向上について詳しく伺いました。
株式会社 天彦産業
取締役会長 樋口 友夫さん
1949年滋賀県生まれ。大学卒業後、大手特殊鋼商社を経て、77年に家業である天彦産業へ入社。2005年、社長に就任。22年より現職。充実した休暇制度、がん保険や人間ドックの全額会社負担、最終利益の3分の1を社員の賞与とするなど、圧倒的な社員第一主義で知られる。天彦産業は、国内外において、特殊鋼・ステンレスなどの素材販売、加工販売を手掛ける。従業員数42名(2024年9月現在)。売上高40億円(2024年3月期)。日本でいちばん大切にしたい会社大賞など、多数の賞に選出。
社員の休暇が増えるほど業績が上がる、その理由
――貴社は、社員が休めば休むほど業績が上がったそうですね。
樋口友夫さん(以下、樋口): はい。驚かれる方も多いのですが、当社では 休暇制度を充実させ、年次有給休暇の取得率をこの10年間で48%から80%(2023年度)にまで高めましたが、並行して業績も伸ばしてきました。 最近では、毎日誰かが休んでいるような状況です。
――素晴らしい効果ですね。そもそも、なぜ休暇制度を充実させようと思われたのでしょう?
樋口: まず、僕は2005年に社長に就任したとき、経営理念に「社員第一主義」を掲げ、同時に「お互いさま精神」の大切さを伝えながら、社員が働きやすい風土づくりに力を注いできました。そんななか、ある事件が起こりました。
部下から「子どもの入学式があるので、休ませてください」と言われた現場のリーダーが、 「嫁さんが行くのに、なんでお前まで行かなければならないんだ」 と断ったというのです。しかもそれを、僕に誇らしげに報告してきた……。これには、怒りを覚えました。すぐに、入学式、卒業式、運動会… あらゆる子どもの行事での休暇を義務づけました。
それ以降、年々有給休暇取得率は上がり続けました。しかし、気づけば 連動するように業績もアップしていた んです。僕自身、「社員第一主義」を実現するための施策のつもりで、まさか業績に連動するとは思っていなかった。だから、その理由を検証してみることにしたんです。
すると、そこには納得の要因がありました。そしてそれは、 当社が変化の激しい現代を生き抜くための礎 となるものだったのです。
――それは、何だったのでしょうか?
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