連載:第29回 成長企業 社長が考えていること
リーダーはカリスマじゃなくていい。父に勝てないと悟った3代目が売上を7億円増加させた「顧客満足=従業員満足」の方程式
創業67年を迎える金属加工会社・山本精工の3代目・山本正人さんは、入社して初めて前社長である父親の凄さに気が付きます。リスクを先読みする才気とカリスマ性に圧倒され、「このまま自分が継いでも父と同じようにはできない。社員の力も借りて会社を成長させていこう。」と決意し、ボトムアップ型の組織を目指します。リーマンショック後の業界を取り巻く様々な変化と危機を乗り越えながら、売上は5億円から12億円に240%、経常利益は3000万円から1億4000万円に460%アップしました。「顧客満足度の向上には従業員満足度の向上が不可欠なんです」と語る山本さん。その理由を伺いました。
山本精工株式会社
代表取締役 山本正人 さん
大学卒業後、駆動系の専門商社で営業として2年間研鑽を積み、2008年に家業の山本精工に戻る。2016年に常務取締役に就任し、2021年より現職。社長業に加え、ラジオのパーソナリティーや中学校での講演者、持病である血管腫を認知するためのインスタモデルとしても活躍。
大きすぎる父の背中……できない自分には「社員の力」が必要だった。
――貴社の事業内容について教えてください。
山本正人さん(以下、山本): 当社は昭和30(1955)年に創業した金属加工会社です。金属を削り、さまざまな産業機械の部品を作っています。また、「技術商社」としての側面も大きく、生産管理から納期管理、品質管理までを一貫して行い、取り扱う製品の約95%は取引先様から仕入れてお客様にお届けしています。
大きな特徴は、全国的な取引先ネットワークを活かして「全国でものづくりをしていること」です。2016年の常務就任時、当社で扱う製品の約95%は、関西で製造されていました。当時のお客様からBCP(Business Continuity Plan)について教わり、「このままでは自然災害が起きた時や後継者問題、廃業リスクに対応できなくなる」とリスクを感じ、全国から新しい仕入先を探すことにしました。
常務就任時に父が「お前の好きにやれ」と実権をほぼ譲ってくれたため、どんどん全国展開を進めることができました。今では北海道から鹿児島まで約250の町工場と取引を行っており、関西とその他の地域の製造割合は半々になっています。
出典:https://www.yamasei21.co.jp/
――家業に入って気づいたことはありますか?
山本: 率直に、楽しくなさそうな会社だなと感じました。なぜなら、スタッフみんなが社長のイエスマンだったから。父は経営者としての能力が圧倒的に高かったので、“トップダウン型”の組織にならざるを得なかったのかもしれません。
しかし、僕は「人に言われてやるのは楽しくない」と考えており、若手社員にとってもこの状況が続くのは良くないだろうと感じました。そこで、自分の意見を言えて、少しでもやりたいことができる“ボトムアップ型”の組織にしたいと考えました。
僕の能力が父より圧倒的に低かったことも、ボトムアップ型組織を目指した大きな理由です。僕は、入社して初めて父の経営者としての手腕の凄さを知りました。いずれ会社を継いだとしても、父には経営者として絶対に勝てない。でも、経営者になれば、従業員を不幸にしないために会社を成長させ続けなければいけません。父のようにたった1人のカリスマ性で全員をリードするのではなく、従業員の知恵を借りながら全員で会社を成長させていくしかないと思ったのです。
3代目である僕がもっとみんなに歩み寄ってコミュニケーションを取り、意見を言いやすい環境を作ろうと決めました。
「愚痴」の中にこそ改善のヒントは隠れている
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