連載:第59回 成長企業 社長が考えていること
企業成長に導くリーダー2つの要素。若き社長を奮い立たせた社員の涙、どん底から県内屈指の企業へ
「社員の涙を見て、絶対に会社を立て直そうと覚悟を決めました」。そう語るのは、株式会社オアシス・イラボレーションの川渕誉雄社長です。会社としての信頼を失う大きな問題を起こし経営危機に陥る中、弱冠23歳で事業を承継。社長自ら必死に奔走し、どん底からの再起を果たします。2017年には東京に進出。組織の拡大により新たな課題に直面し、思い切った「破壊」と「再構築」を行って組織を変革しました。果敢に実行し続ける川渕社長に、これまでの道のりとリーダーの求心力についてお話を伺いました。
株式会社オアシス・イラボレーション(建設業/従業員数約130名)
代表取締役 川渕 誉雄さん
1982年生まれ、高知県出身。2005年に先代の父から事業を継承し、オアシス・イラボレーションを設立。資金繰りが厳しい中、社員一丸となって経営を軌道にのせ、ビジネスモデルと組織の両輪を整えることで業績を右肩上がりにする。2022年早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。次世代の企業家育成にも力を入れている。
経営危機の最中、社長に就任。「絶対に諦めない」と覚悟を決めた
――オアシス・イラボレーション創業の経緯について教えてください。
川渕誉雄さん(以下、川渕): まず、当社の前身となっているのは、1960年に高知で創業した西部工業という企業です。私の祖父が創業し、父が2代目として経営のバトンを引き継ぎ、私で3代目となっています。
先代である父の時代では、産業廃棄物処理業や解体工事、土木工事を中心に事業を行っていましたが、2005年、会社としての信用を失うほどの大きな問題が起きてしまいます。
――どんな問題が起きたのでしょうか。
川渕: コンプライアンス違反が発覚し、事業継続が困難となってしまったのです。当時、新聞にも取り上げられるほど、地元では話題になりました。
そのままでは事業の継続は難しく…。同社の解体部門を分社化させる形でオアシス・イラボレーションを創業。私が代表取締役に就任しました。それが2005年のことです。
コンプライアンス違反の状況を是正するために多額の費用がかかり、手元に残った現金は数百万のみ。問題を起こした会社に融資してくれる銀行はありません。さらに借金も抱えていて…。まさに、どん底からのスタートでしたね。
――「廃業」という選択肢は検討されなかったのでしょうか。
川渕: 廃業については考えませんでした。 むしろ「絶対に潰さない」と覚悟を決めていました。
この問題が起きてから、離れていった社員もいる一方、それでも残ってくれた社員たちがいました。そして、父が会社の状況を伝えた際、涙を流している社員がいたのです。
その涙にはきっと、自分が働いてきた会社がなくなってしまう悲しさや不安、怒りなど、さまざまな感情があったと思います。ただ、となりでその様子を見ていた私は、残ってくれた社員をこの先絶対に悲しませてはいけない、守らなくてはいけない。そして、そのために「絶対に会社を潰さない」と固く決意をしたのです。
そしてもうひとつ。家業のビジネスを守りたいという気持ちも大きかったです。祖父が立ち上げ、父が引き継いで育ててきた事業なのですから。家族会議でも「私が絶対に立て直す」という強い意志を伝えました。
どん底から県内屈指の企業へ。
――「どん底」と言える状態から、どのように経営を軌道にのせていったのでしょうか。
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
-
{{comment.comment_body}}
{{formatDate(comment.comment_created_at)}}
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}
関連記事
バックナンバー (61)
成長企業 社長が考えていること
- 第61回 「社員に見せられませんよ!」経営会議の怒号からV字復活。目の前にあった、本当に大切なもの
- 第60回 メンバーの離脱で目が覚めたリーダー。「人の役に立たなければ、仕事をする意味はない」の言葉でクラウドワークスを生み出した
- 第59回 企業成長に導くリーダー2つの要素。若き社長を奮い立たせた社員の涙、どん底から県内屈指の企業へ
- 第58回 1人あたりトヨタの3倍稼ぐ中小。主体性しかない社員を生み出す組織づくりの要諦
- 第57回 “信念”を貫いてV字回復。リーダーがやってはいけないこと