連載:第60回 成長企業 社長が考えていること
メンバーの離脱で目が覚めたリーダー。「人の役に立たなければ、仕事をする意味はない」の言葉でクラウドワークスを生み出した
日本のフリーランス市場に革新をもたらした株式会社クラウドワークス。創業者・代表取締役社長の吉田浩一郎さんは、ベンチャー企業の役員としてIPOを経験後、独立してベトナムで新たなビジネスを立ち上げます。しかし、ビジネスの不調、仲間の離反などにより最初の起業は大失敗に終わります。たった一人になった吉田さんは大きな挫折を味わい、ビジネスの本質について深く考えさせられることになります。その後、とある経営者の言葉から「人の役に立つ」ビジネスを手掛けることを決意、そこから再起をかけた挑戦が始まります。吉田さんがこれまで歩んだ道のりについてお話を伺いました。
株式会社クラウドワークス
代表取締役社長 兼 CEO 吉田 浩一郎さん
1974年生まれ、兵庫県出身。東京学芸大学卒業後、パイオニア、リードエグジビションジャパンを経て、ドリコムでは執行役員として東証マザーズ上場を果たす。2008年に独立。いくつかの事業を起こした後、2011年にクラウドワークスを創業。業界のパイオニアとして、国内最大手の地位を築いた。
上場企業の役員を辞し、新天地ベトナムで事業を興す
――クラウドワークスの立ち上げ前、最初の起業は2008年だと伺いました。どのような経緯で起業されたのですか。
吉田浩一郎さん(以下、吉田): 当時、私はドリコムという会社の執行役員として上場を経験したばかりでした。その時の経験を持ってすれば自分も事業を起こせるはずだと、とりあえず独立をしたのです。
独立してしばらくの間は、一緒に起業した仲間とIPOのコンサルティングや、他社の社外取締役を引き受けながら新たなビジネスプランを練っていました。
国内外でいろいろ調査した結果、最終的にベトナムでアパレル事業を手掛けることにしました。アジアの中でも成長の余地があるベトナムで、日本の大企業がまだ進出していなかったアパレル分野なら勝ち目があると踏んだのです。
テストとしてベトナムで開かれたイベントに出展、仕入れた衣服を販売すると、3日で1500万円も売り上げることができ、ビジネスの成功を確信しました。それからハノイに店舗を構え、ECサイトも立ち上げ本格的にベトナムでの事業を展開することにしたのです。
――ベトナムでの事業展開はいかがでしたか。
吉田: まったくうまくいきませんでした。原因は私にあり、外国で異業種に挑戦するにはあまりに無知でした。
例えば、同じベトナムでも南に位置するホーチミンは年中温暖な地域ですが、北に位置するハノイには明確な四季があります。ダウンジャケットが必要なほど冷え込む時期もあり、夏と冬では売れる服がまったく違うのです。調べたらすぐわかりそうなものですが、ハノイでビジネスを始めた当時はそんなことすら予想外でした。
そして、アパレル業界の商習慣について無知だったことが、最も致命的な敗因でした。シーズンごとの商品の入替やディスカウントのタイミング、在庫処分の方法などアパレル業界では当たり前のノウハウすらわからないまま経営していたのです。
肝心の売れ行きも伸び悩みました。日本から仕入れた商品のうち約7割は売れ残り在庫になる有り様。ビジネスを立ち上げてから1年で、気づけば億単位の在庫を抱え込んでいました。
――それでも事業を続けられたのですね。
吉田: ベトナムでは赤字続きでしたが、日本に残した役員、社員によるコンサル事業、ホームページ制作などの売上があったためになんとか成り立っていたんです。しかし、日本で稼いだ利益をすべてベトナムに突っ込む状況。
稼ぐ側と使う側という歪な関係はとうとう1年で限界を迎えます。日本側の事業を担当していた役員が、社員と取引先を連れて独立してしまったのです。
さらにベトナムで一緒に働いていた日本人役員も、これ以上は勝算が見えないと出ていってしまい、私はベトナムで1人取り残されていました。
その時、私は単なる金儲けでは人はついてこないと痛感したのです。
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}
関連記事
バックナンバー (61)
成長企業 社長が考えていること
- 第61回 「社員に見せられませんよ!」経営会議の怒号からV字復活。目の前にあった、本当に大切なもの
- 第60回 メンバーの離脱で目が覚めたリーダー。「人の役に立たなければ、仕事をする意味はない」の言葉でクラウドワークスを生み出した
- 第59回 企業成長に導くリーダー2つの要素。若き社長を奮い立たせた社員の涙、どん底から県内屈指の企業へ
- 第58回 1人あたりトヨタの3倍稼ぐ中小。主体性しかない社員を生み出す組織づくりの要諦
- 第57回 “信念”を貫いてV字回復。リーダーがやってはいけないこと