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連載:第21回 成長企業 社長が考えていること

社員の本音で目が覚めた。年商2億→50億に至る14年間で社長は何をしたのか

BizHint 編集部 2022年6月22日(水)掲載
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福井県内で急成長を遂げている会社があります。業務用ユニフォームの販売を手掛けるユニフォームネクスト株式会社です。2007年に横井康孝さんが社長に就任した当時は売上高2億円、従業員数わずか10数名の組織が、10年で東証マザーズに上場。現在は従業員数200名以上、2021年度の売上高は50億超え、その成長率は14年間でなんと25.5倍にものぼるそうです。快進撃を続ける裏側には、どんなことが起きていたのか。横井社長にお話を伺いました。

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ユニフォームネクスト株式会社
代表取締役社長 横井 康孝さん

1972生まれ。金沢大学卒業後、平和堂入社。1997年にワイケー企画(現在のユニフォームネクスト)に入社。2007年に社長就任。同時にEC事業に舵を切り、全国的にシェアを拡大した。2017年、福井県内企業では10年ぶりとなる東証マザーズ上場を果たす。「注目の西日本ベンチャー100」としても注目を集めている。


たった10数名の地方中小企業が、なぜ上場を目指したのか

――まず、入社されてから社長に就任されるまでのことを教えてください。

横井康孝さん(以下、横井): 当社は父が1994年に創業した会社です。私は1997年に入社したのですが、当時は父と先輩、事務員さんの3人だけ。10年ほど県内でユニフォームの営業に携わり、会社として従業員は10数名に増え大きくなったものの、このままの事業では限界が来る…そう感じるようになっていました。

――そう感じたのはなぜでしょうか?

横井: 福井県内で営業をやっているだけでは、売れる金額が限られてくるからです。さらに当時は競争が激しく、見積もり合戦になっていました。どんどん値下げをせざるを得ないので、売上を計上できたとしても利益がほとんど残らないという状況で。

どんなに優秀な営業社員がいても利益を出せず、これでは掛ける労力の割に合わない と感じていました。みんなで良い結果を出そうと一生懸命仕事しているのに、給料もそこまで出せないし、休みも増やせないし、同じことを続けていてもいつか頭打ちになるな…と思ったんです。

――そして、社長に就任されたタイミングで大きな決断をされたのですね。

横井: はい。社長に就任したタイミングで、一般の方向けに衣類などにプリントを行う「プリントショップ事業」と「ユニフォームのEC事業」のどちらかで突破口を開こうと思いトライした結果、ユニフォームのEC事業が成長し始めたので、思い切って対面販売からネット通販に振り切ったのです。

これが功を奏し、1年目で月1000万を売り上げることができ、「これはいける」という手ごたえがありました。この成功の背景には、 「ランチェスター戦略」 との出会いがあります。大手企業が真似できないようなニッチな市場を開拓する、一点集中の局地戦を展開するといった、弱者が強者に勝つための戦略です。当社のEC戦略も、特定の業界に焦点を絞ったうえで販路拡大を狙いました。

「まずは4000万円の経常利益を上げる」という目標を当初掲げていたのですが、 その目標は2年で達成。そしてその翌年には1億円の経常利益を達成し、従業員数は30名ほどに増えていました。

最初に掲げた目標を達成したことで、これ以上の成長は望まなくてもいいのでは…とも考えました。「周りはすごいって言ってくれているし、従業員の給料も上げられたし、これでいいんじゃないか」…と。

――そこから気持ちの変化があったのでしょうか?

横井: はい、私の右腕となって奮闘してくれた従業員と一緒に飲みに行ったとき「僕の目標は給料3000万もらうことです!」と言われたんです。ぽろっと本音が出てしまったのでしょうね。しかし、それを聞いたときハッとしました。 「自分はここで満足しようとしていたが、従業員は満足していなかった」 と。ここで立ち止まってはいけないと思い直したのです。

とはいえ、利益や売上高を目標にしてもモチベーションはあがらないな…と考えていた時、「上場」の話を耳にしました。福井県内で上場しているのは、名だたる企業10数社しかありません。そして何年も上場企業が生まれていない中、 当社のような中小企業が達成したら、どれだけインパクトや影響力が大きいか。そして従業員の皆はどんな顔をするのだろう… そう思ったら、すごくワクワクしました。

「会社が大きくなって皆の喜ぶ顔が見たい」その気持ちから、次の目標として「上場」を掲げることにしたんです。

――「上場」という目標を目の前にした、従業員の皆様はどのような反応でしたか?

横井: 最初に掲げていた「4000万円の経常利益」も、達成不可能だと思われていたけど達成できたということもあり、「大変になるな…」と感じていたようですが、なんだかんだ皆ついてきてくれました。とはいえ、後々「今だから言うけど、ほんとやめてくれ。勘弁してくれって思っていた」と聞かされたこともありましたが(笑)。

ユニフォームの販売だけでなくししゅう加工や、ヘルメット加工などのサービスも行っている

「会社のことは好き。でも仕事は…」従業員の声に危機感。ボトムアップ型の組織づくりを決意

――上場までの道のりは決して簡単なものではないと思います。

横井: そうですね。あの頃は本当に大変でした。とにかく圧倒的なスピードで成長し続けるため、トップダウンで物事を進めていきました。売上はその分伸びていきましたが、採用が追い付かず、人材不足のため残業の日々が続き…。いろんなトラブルが発生してパニック状態に陥ることも一度ではありませんでした。さらにそこに上場準備も加わるわけですから、従業員には本当に苦労をかけていましたね…。

それでも、ひとつひとつ困難を乗り越えていく中で、従業員たちのチームワークが強まり、組織一体となって目標に向かって突き進むことができました。あれだけ大変な日々だったのに、離職者もほとんどいませんでした。

そして 2017年7月。東証マザーズへの上場を果たすことができたのです。

――上場という目標を達成したときのお気持ちはいかがでしたか?

横井: もちろん嬉しかったですよ。一方で、従業員たちからは「社長、おめでとうございます」「社長、よかったですね!」といった声が届きまして。それは、自分たちが喜んでいるというよりは、私をお祝いしてくれている雰囲気で、案外他人事なんだなと少し拍子抜けしてしまうところはありました。

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