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連載:第1回 流通小売の未来

NYの最先端店舗に見る、日本の百貨店再生へのヒント

BizHint 編集部 2020年3月12日(木)掲載
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国内10兆円という市場規模を誇り、かつては流通の雄であった百貨店も、現在は6兆円規模にまで縮小しています。近年は食で集客しファッションで稼ぐ戦略を続ける一方、その立地を活かしSC(ショッピングセンター)への業態転換を図る例も。百貨店再生の鍵はどこにあるのか?今回は、日米の小売・流通に精通する角田正博氏が、NYのハドソンヤードで展開する2大百貨店の新店の取り組みから、日本の百貨店の未来を模索します。

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米国の百貨店業界の救世主。2大百貨店による業態ルネサンス

米国のGDP(国内総生産)の7割を占める個人消費の底堅さによって、2019年の年末商戦の売上高は、前年比4.2%増のおよそ1兆ドル(約105兆円)の大台に乗った。

こうした中、ニューヨーク市民や観光客からマンハッタンの新たなランドマークとして脚光を浴びているのが、マンハッタン再開発プロジェクトの一環として2017年に着工し2019年3月15日にオープンした複合施設ビルの「ハドソンヤード」。中でもひときわ人気を博しているのが高さ46メートルの蜂の巣型モニュメントの「ベッセル(Vessel)」だ。

ハドソンヤード「ベッセル」。蜂の巣モニュメントの内部。

別名New Yorks Staircase(ニューヨークの階段)と呼ばれるベッセルと共に、ハドソンヤードに進出して注目を集めているのは、 ニューヨーク百貨店業界の救世主と言われている高級百貨店、「ニーマン・マーカス」と「ノードストロム」の2大巨頭 である。

もともと、メーシーズやブルーミングデール、サックス・フィフス・アベニューといった、ニューヨーク以外に起源をもつ百貨店はマンハッタンではそれほど身近な存在ではなかった。しかしここ1年の間に、シアトルやダラスから高級百貨店がハドソンヤードに続々と集結し、市場環境は瞬く間に変貌を遂げている。

創業118年の歴史を持つ老舗百貨店ニーマン・マーカスの新店は複合施設の5階から最上階の7階までを占有し、延べ面積は1万7500平方メートル(約5300坪)におよぶ。マンハッタン進出第1号店であり、43店目に当たるプロトタイプである。

マンハッタン区ミッドタウン西端に位置する複合施設 ハドソンヤードの周辺は、市内で最も新しい高級居住エリアとして注目を集めている地区。 ハドソン川を一望できる最新鋭のジムで毎日汗を流し、週に数回は高級レストランで食事を摂り、愛犬は送迎サービス付きの犬の保育所を利用するなど、「ニューヨークのリトルドバイ」と称される華麗な生活を満喫できる。1部屋の販売価格は、平均4億円を超えると言われている。

ニーマン・マーカスの最高経営責任者(CEO)ジェフロイ・ヴァン・ラムドンク曰く、「ハドソンヤード店はラグジュアリー・プラットフォームを構築する当社の方向性を反映しており、ラグジュアリー志向の顧客を引き付けるに十分な、過去に経験したことのない買い物体験やサービスが享受できる、競合他社とは全く異なるプロトタイプ店である」。

ハドソンヤードにオープンしたニーマンマーカスの新店

異次元のラグジュアリー「ニーマン・ワールド」

ニーマンマーカスは、アパレル製品のパーソナライズやグルメ、旅行、ヘルスケアなど、さまざまな分野で新たなコンセプトを生み出す“アイデア・ファクトリー・プロジェクト”を2018年に発足。これまで 富裕層が体験したことのないサービスやショッピングを提供する“ニーマン・ワールド” を作りあげた。

同店にはファッションショーやサイン会などが開催できる“ニーマン・マーカス・ライフ”という広大な広場が設けられているほか、料理のテイスティングやカクテル作りが体験できるオープンキッチン“クック&マーチャント”コーナーが設置されている。しかも、店内には「バー・スタンレー(BAR STANLEI)」と「ゾディアックルーム(Zodiac Room)」、そして「クック&マーチャント」といった高級レストラン&カフェが、全米の百貨店内で最も多い3カ所も導入されている。

また、タッチパネルで店員を呼びだしたり、照明を変更できたりするハイテクな試着室を設置し、モバイルアプリによる支払いもその場でできる。パーソナルショッピング用のスイートルームやオンラインの“デジタルスタイリスト”によるスタイリングサービスも受けられる。

さらには、LEDライトセラピー機能を持ったベッド“ライトスティム(Lightstim)”によるトリートメントが受けられるほか、ヘアサロン、ネイルサロン、エステサロンはもちろん、洋服やレザーグッズの修理やカスタマイズができるアトリエ、店内のBGMを顧客がリクエストできる“ロックボット(Rockbot)”サービス等も提供している。

芸術面でも、画家のロイ・リキテンスタイン、写真家のロクサーヌ・ロウィットなどのアーティストによる作品や、ニーマン・マーカスの二代目社長であり、後に会長を務めた故スタンレー・マーカスが「ニーマン・マーカス・コレクション」のために収集した美術品など、305点もの芸術作品が置かれ、来店顧客の知的マインドを刺激している。

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