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連載:第2回 流通小売の未来

コンビニ限界説は本当か?10年前の飽和議論と次なる打ち手

BizHint 編集部 2020年3月19日(木)掲載
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コンビニ限界説がささやかれています。2019年(1月~12月)の店舗売上高は11 兆 1,608 億円(前年比 1.7%増)(7チェーン、日本フランチャイズチェーン協会調べ)と増加したものの、店舗数は55,620(▲123)と前年を下回る結果となりました。コンビニは本当に限界なのか?再成長の軌道に乗せるには何が必要なのか?大手3チェーンの動向からその可能性を紐解きます。

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コンビニ加盟店の継続意欲に黄信号

まず最初に、コンビニ限界説の元となった「出店抑制」の経緯から見ていきたい。

コンビニ大手3チェーンは19年度に大幅な出店抑制を打ち出した。19年度末(20年2月末)の実績を見るとセブン-イレブンが純増(出店数-閉店数)79店舗(別法人の沖縄県含む)、ファミリーマートが同181店舗、ローソンが同▲215店舗となり、3チェーン合計の増減を見ると45店舗増とほぼ横ばいである。18年度の純増は、セブンは616店舗、ローソンは652店舗だったから、この2社は急ブレーキをかけたと言ってよい。

ファミリーマートは16年9月のサークルKサンクスとの統合により、店舗の統廃合を進めており、18年度は▲800店舗。しかし19年度は純増が181店舗と一気に増加している。ただいずれにせよ、往時のような出店の勢いは感じられない。

一方で2019年2月、東大阪市のセブン-イレブン加盟店がチェーン本部の同意なしに深夜帯の休業を断行する 「反乱」 を起こした。この騒動をきっかけに、メディアやSNSを中心にチェーン本部への批判が高まった。

経済産業省は、18年末から19年3月にかけて、コンビニ加盟店に大規模なアンケート調査を実施、1万1307件の回答を得た中で、5年前の同様の調査と比較して、明らかな経営意欲の減退があると提示した。当時の世耕弘成経済産業大臣は、調査結果と(恐らく)東大阪市の加盟店の 「反乱」 から、4月にコンビニチェーンのトップと意見交換し、コンビニ加盟店の安定的な経営を求める行動計画書の提出を各チェーンに迫った。

世耕弘成(当時)経済産業大臣の呼びかけで発足した「新たなコンビニのあり方検討会」

あわせて、経産省が主宰して「新たなコンビニのあり方検討会」を立ち上げた(2019年6月、第1回会合)。「コンビニの今日的な課題および今後の方向性を議論し、コンビニが社会的期待に応えつつ持続可能な成長を実現するためのあり方を検討」する趣旨で、検討会の有識者、加盟店オーナー、およびコンビニ本部へのヒアリングが実施され、さまざまな論点が提示されてきた。2020年2月10日に最終報告書が提出されている。

以上のような経緯から分かるように、 コンビニ業界は持続可能な成長を模索している状況にある。 その土台となるのが「既存店」だ。チェーン本部が、店舗純増数を競ったり、売れたか、売れないかに一喜一憂したりするのではなく、既存店の安定的な経営を第一優先課題にすること、つまりは加盟店の支援体制をチェーン大手3社が強化した1年でもあったと言える。

飽和説から10年で店舗数は35%増

一方の『コンビニ飽和説』。ファミリーマート社長の澤田貴司氏が「コンビニは飽和している」と18年の春頃から指摘している。あえて「飽和」を口にする意図を澤田氏に筆者が問い掛けたところ、他の大手2チェーンも含めて「既存店の客数が伸びていない、この実態を飽和と呼ぶのではないか」と返された。

「既存店強化の徹底」を提唱するファミリーマート代表取締役社長の澤田貴司氏

セブン&アイ・ホールディングス社長の井阪隆一氏は、09年から16年まで、セブン-イレブン・ジャパンのトップを務めてきた。その井阪氏は19年10月の会見で「コンビニは飽和しているとは考えていない」と明言している。飽和か飽和でないかは、今後数年の店舗数や既存店の売上高の推移を待つしかない。

ただし、ここで思い出すのが 「コンビニ飽和説」は今から10年以上前にも語られていたこと だ。08年当時、ローソンの社長だった新浪剛史氏は、この頃幾つかのメディアにコンビニの飽和を口にしていた。08年2月末の全コンビニ店舗数は4万3001店(「月刊コンビニ」調べ)、18年2月末が5万8443店舗であるから、10年間で1万5442店舗、35%増加したことになる。この結果を見ると、新浪氏の心配は杞憂に過ぎなかったことになる。ローソンに限っても10年間で8554店舗から1万3992店舗へと5438店舗も増店。伸び率は63%、毎年500店舗以上が純増している。

確かに当時、店舗数でトップのセブン-イレブンも停滞していた。07年度には平均日販が60万円を下回った。08年度は7月にtaspoに対応した成人識別たばこ自動販売機が義務付けられたことで、面倒な手続きを嫌った愛煙家がコンビニを利用するようになり平均日販が伸長し、平均日販65万6000円となったものの、09年にはその反動で再び降下するなど低空飛行を余儀なくされた。

09年、セブン-イレブンの社長に就任した井阪隆一氏は、コンビニ業態のコンセプトを再定義した。

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