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中小企業の強みとは?把握の必要性、分析・活用法や成功事例をご紹介

BizHint 編集部 2019年2月21日(木)掲載
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中小企業の強みは、意思決定の速さ、社内コミュニケーションの容易さ、専門性、経営の柔軟性などがあります。大企業と比較して経営資源は限られますが、中小企業経営では自社の強みと弱みを正確に把握して戦略に役立てることが重要です。本記事では中小企業の一般的な強みや把握する必要性、分析して経営に活用する方法や、成功事例を紹介します。

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中小企業の強みとは

中小企業の一般的な強みについて、大企業と比較しながら紹介します。中小企業は人・モノ・カネといった経営資源の量や事業規模の点で大企業と違いがありますが、中小企業ならではの強みは多数存在します。

意思決定のスピード

中小企業の強みには意思決定のスピードが挙げられます。

大企業では意思決定を行う決裁者と、現場で業務を行う担当者が別人物であることが一般的です。現場担当者は顧客の生の動向や意見を間近で把握できるため、最適な改善策を思いつきやすい状況ですが、実行に移すためには上司やその他決裁者の理解と承認を得なければならず、その手続きに時間がかかることもあります。

一方で、中小企業では決裁者である経営者・管理者と現場担当者との垣根が低いことが多く、あるいは社長自らが現場責任者を兼ねているケースもあります。そのため現場レベルや商談の場でも、迅速な意思決定がしやすい点が中小企業の強みです。その結果、顧客満足度向上や市場シェアの先行も期待できます。

社内コミュニケーションの容易さ

中小企業では社内のコミュニケーションが容易なことも強みです。

大企業であれば、上司と部下といった縦関係の階層が区切られているだけでなく、営業部や製造部といった機能ごとでも、組織が明確に分離されているケースが多くみられます。また、同じ営業部であっても、課ごとに法人・個人や顧客の業種など担当する分野が違うために、部署を超えて情報が共有されないケースもあります。

一方、中小企業では社長・管理者と現場社員との距離が近いことが強みです。また、担当者ごとに業務領域が明確に分かれておらず、企画と営業など複数の業務を一人の社員が兼務するケースが大企業に比べて頻繁に起こります。そのため、中小企業では役職や業務分野にとらわれず、社員同士のコミュニケーションが取りやすいという特徴があります。

【関連】なぜ社内コミュニケーションが重要なのか?改善施策・事例まとめ10選/BizHint

特定分野への専門性

特定分野への専門性も、中小企業の強みのひとつです。

大企業は経営資源が豊富なため、新事業への参入や新製品開発を行う際、社内にリソースが不足していれば、下請けや異業種提携など外部の力を利用することが可能です。ただし、外部のリソースを活用する場合は、自社内に専門知識が残らないという課題もあります。

一方で、中小企業では大企業のように経営資源の余裕がなく、外部リソースを活用できないことも。そこで、多くの分野で勝負するのではなく、「選択と集中」の考え方で専門分野に一点特化する戦略を取ることがあります。その結果、専門性が高まり事業が拡大し、さらに専門性が高まるスパイラルが起こるケースも考えられます。

経営の柔軟性

中小企業では、経営の柔軟性も強みです。

大企業では大規模な事業を行うため、大量の資金や人員を投入し、取引先、顧客といった利害関係者も多くなることがあります。そのため、事業が動き出すまでに市場の事前調査や取引先との関係構築に充てる準備期間が必要な上、事業の途中で市場環境が大きく変化した場合の対応も容易ではありません。

一方、中小企業では投入コストや人数も小規模で、利害関係者も限られることがほとんどです。新しい施策や方針転換の際も社内での調整や変更がしやすく、事業開始までのスピードや環境の変化への対応が柔軟で、小回りの効く経営が行いやすいと言われています。

中小企業が自社の強みを把握する必要性

中小企業経営では自社の強みを把握することが必要です。自社の特徴や強みを正確に理解することは、マーケティング戦略でも生産性の面でもメリットがあります。

得意分野への集中

限られた人員・予算で事業を行うことが多い中小企業では、特定の分野に集中して専門性を高めることが必要だと言えます。

ただし、自社の強みを正確に把握していないと得意分野への集中は困難です。自分では強みと認識していた点でも他社と比較するとそれほど差がなく、むしろ当たり前だと考えていた点が意外な強みであるケースもあります。

誤った認識で戦略を策定すると、経営で致命的な失敗につながるリスクがあります。

中小企業では得意分野を伸ばすことが大切ですが、そのための前段階として正確に強みを認識することが重要なのです。

顧客目線の経営

顧客目線の経営を行うためにも、自社の強みを理解することが必要です。

どんな企業でも、技術力や納期力、サービス品質などの強みは一朝一夕に身につくものではないため、長い時間・予算を投資する必要があります。ただし、自社の能力が顧客ニーズとミスマッチを起こしていたり、他社との違いが顧客から見て分かりづらければ顧客の獲得は困難だと言えます。

自社の強みとは、技術力や生産性といったサプライサイドから考えることもできますが、安心感や新鮮さといった、顧客にとっての価値から発想することが重要です。このように自社の強みを理解することは顧客志向につながり、戦略失敗の可能性を減らすことができます。

弱みを補うことが可能

自社の強みを把握すれば、弱みを補うことも可能です。

中小企業では大企業のような規模の経済性を発揮することが困難です。価格競争では勝ち目が薄く、また広い分野のノウハウや大量データの蓄積が難しいという点も、大企業と比較した際には弱みと考えられます。

しかし中小企業では、自社の得意分野(強み)に特化することで専門知識を保有・蓄積できるだけでなく、自社にしかできない製品・サービスの付加価値づくりの実現も可能です。

さらに、大企業では顧客が多すぎて対応しきれないような顧客・取引先の細かい要望やニーズに対しても、中小企業では柔軟に対応したりカスタマイズ化した製品・サービスが提供しやすいという強みがあります。

自社の強みを把握することは、弱みを補うことにもつながる重要なポイントです。

中小企業が自社の強みを分析・活用する方法

中小企業が自社の強みを分析し、経営に活用する方法を紹介します。強みを活用して成功する条件は、自社の特徴を正確に分析し、現実的な戦略策定を行うことです。

「SWOT分析」で自社の強みを把握

SWOT分析とは、自社の内部要因や外部要因を分析し、現実的な視点から事業機会を発見するためのフレームワークです。SWOTとは以下の4つの要素の頭文字で構成されています。

  • 強み(Strengths)
  • 弱み(Weaknesses)
  • 機会(Opportunities)
  • 脅威(Threats)

「強み」「弱み」とは自社の内部要因で、生産性、納期対応力、技術力、取引先とのネットワークなど、自社でコントロールが可能なものです。「機会」「脅威」とは外部要因で、景気、人口動態、競合他社動向、業界トレンド、顧客ニーズの変化といった自社でコントロールが難しいものになっています。

【関連】SWOT分析とは?やり方や事例、役立つフレームワークもご紹介/BizHint

自社の特徴の棚卸し

自社の内部要因である強みや弱みを発見するためには、自社の特徴を棚卸しする作業が有効です。棚卸しとは、自社の具体的な特徴を思いつく限りひとつひとつ列挙していくことを指し、主な方法としてはトップダウン方式と、ボトムアップ方式が挙げられます。

【トップダウン方式】

創業のきっかけ、企業理念や事業コンセプト、社風といった、企業に根ざしている価値観から強みを探る方法です。

例えば、チャレンジ精神が活発な社風の企業では、新しいニーズの発見や時代の変化への対応が早く、他社に先駆けて新しい企画を創出できることが強みであることなどが考えられます。

【ボトムアップ方式】

営業・生産・開発といった現場レベルから強みを探る方法です。

例えば飲食店では、笑顔での接客や清潔さといった一見当たり前のことが、忙しい時にも常に完璧にこなせる店はそれほど多くありません。これは強みのひとつになります。その他、人材、サービス提供の迅速さ、ITツールへの精通度合いや、日常的な心がけ・注意といった特徴でも、大切な強みである可能性があります。

顧客の反応を観察

顧客の反応を観察することも、強み分析と市場機会の発見に有効です。顧客とフェイストゥーフェイスで対面する接客や営業で分かるものはもちろん、WEBサイト内の回遊やECサイトの購買履歴、メールの反応率といったデータも、顧客の反応の把握に有効な情報です。

この方法で洗い出した特徴を「強み」「弱み」に分類する際のポイントは、自社が顧客から選ばれている理由を基準にすることです。例えば技術系メーカーで、独創的な技術力によって選ばれていることが明白であれば技術力が強みと言えますが、外食業界のように立地、価格、サービス、品質、品揃えなど様々な要素がある場合、顧客は意外な点で自社を選んでいる可能性もあります。

何を強みとして捉えるかによって戦略が大きく変わるだけでなく、顧客ニーズを誤解すると致命的な失敗につながる恐れもあります。SWOT分析を行う際は、顧客目線を意識しながら生の反応やデータも活用していきましょう。

自社と競合他社との業務を比較

自社と競合他社との業務を比較することも、強みの分析や戦略策定に役立ちます。

業務の効率性、質や方法など、さまざまな観点から比較することで、自社内の洗い出しだけでは分からなかった強み・弱みを発見できることがあります。例えば、飲食店であればメニュー構成、客席数に対するスタッフ数、来客から退店までの回転時間といった、目に見える特徴から業務の流れや仕組みまで比較してみるとよいでしょう。

中小企業では顧客ニーズと自社の強みとのマッチングが重要です。また、差別化戦略のためにも自社の強みを正確に把握することが不可欠です。業務の比較を行えば他社の発想も参考に広い視野を持つことができるため、強みの発見だけでなくマッチングや差別化にも役立つ発見ができる可能性が高まります。

【関連】3C分析とは?目的ややり方、テンプレートから事例までご紹介/BizHint

専門分野を強化

中小企業が自社の強みを理解した上で戦略策定を行う際は、専門性の強化を目指すことが有利です。強みの種類は大きく分けると「マーケティング面」と「組織面」の2つに分けられますが、それぞれの専門性を伸ばす方法はやや異なります。

マーケティング面の強みを持つ企業は、差別化戦略が重要視される流通、飲食、アパレルやメディアといった業種に多く存在します。このようなケースでは、市場を細かく分析した上で狙っていく市場セグメントを決めて自社の立ち位置を明確化することが重要で、言い換えれば顧客ニーズに合わせて自社の専門分野を強化していくことが必要となります。

組織面に強みを持つ企業は、技術力や生産性が重要視される機械、建設、資源、ITといった業種で多く見られます。このような場合は、強みである専門分野の維持・向上や、人材の確保を行うことで競争優位性を磨くことが重要です。

【関連】マイケル・ポーターの3つの基本戦略/BizHint

強みをブランディングに活用

中小企業経営では、自社の強みをブランディングに活用することも有効です。一般的に強みは自社の個性や社外からのイメージと結びついていることが多く、自社の品質へのこだわりや丁寧な顧客対応といった特徴を訴求することは、マーケティング戦略にも役立ちます。

自社のブランド価値を向上させるメリットは、新規顧客の獲得や既存顧客のリピートにも貢献するだけでなく、差別化も容易になることです。自社の強みが独自性、専門性、信頼性といった何らかのブランドイメージに結びつけば、それが顧客にとっての付加価値になり、価格競争の回避や高収益化も期待することができます。

【関連】ブランディングとは?必要性や役割、方法、成功事例などご紹介/BizHint

中小企業の強みを生かした成功事例

中小企業の強みを活用した成功事例を紹介します。技術・生産面での強みを生かして独創的な地位を確立した事例と、マーケティング面での強みを活用して脱下請けによる事業拡大に成功した事例です。

岡野工業

岡野工業は、東京都墨田区向島にある社員数4名の町工場で金型・プレス技術に強みを持っています。インシュリン用に極細の「痛くない注射針」を開発・製造したことで広く知られたほか、自動車や電気製品のバッテリーケースといった幅広い製品の実現を支えた実績を持っています。(社員数は2018年3月時点)

岡野工業の強みは、その技術力の高さと困難な依頼にも取り組み続ける姿勢です。

岡野工業は創業以来金型技術に特化していましたが、現トップがプレス加工技術も習得しました。両方の領域に踏み込むのは当時では珍しいことでしたが、それによって金属加工の幅が広がり、医療機器製造テルモ社の注射針「ナノパス33」が持つ精密な針先の開発製造に成功しました。

また、岡野工業はテルモ社から打診を受けて簡単に注射針が完成したわけではなく、他のどの技術者も引き受けられなかった困難な依頼であったにも関わらず、試行錯誤を繰り返してやっと完成にこぎつけたという経緯があります。

このように、特定の専門技術が必要とされるメーカー業では、企画の実現を支える技術力や、難しい課題にも取り組み続ける粘り強さが、大企業から指名を受けるほどの強みになることもあります。

【参考】日本経済新聞:「痛くない注射針」の岡野工業、家族に引き継がない理由
【参考】東京商工会議所:「第4回勇気ある経営大賞 岡野工業株式会社」
【参考】B-plus:岡野工業株式会社 代表社員 岡野雅行「挑戦するから仕事はおもしろい 世界が驚愕した金型技術の秘密」

マツブン

マツブンは、東京都足立区六町にある、パート・アルバイトを除いて従業員数6名の総合刺繍メーカーです。もともとアパレルメーカーの下請けを行なっていましたが、取引先が海外に生産拠点を移して受注が減る中、下請け以外の領域にも活路を見出し脱下請けに成功した中小企業です。

マツブンの強みは高品質な刺繍技術ももちろんですが、広い市場で事業機会を発見し顧客を増やしていったマーケティング力が挙げられます。

例えば、現在マツブンは一般企業向けユニフォームへの刺繍、ノベルティ、オリジナルのワッペン作りといったサービスも手がけており、企業のブランドイメージ向上を目指すニーズに対して刺繍技術が役立つとの発想を生かして成功した好例です。

また、幅広い顧客を集客するために2001年からWEBサイト運営にも力を入れており、品質へのこだわり、明快な価格設定、豊富な実績を効果的に訴求しています。WEBサイトから、ポロシャツや今治タオルといった商品を確認することができるだけでなく、営業担当者との綿密な打ち合わせも可能な体制です。

中小企業では大口の受注一本で経営が成り立つこともありますが、いざ受注が減ると経営が立ち行かなくなるリスクがつきものです。マツブンは、そのような危機に直面しても、コア技術である刺繍とマーケティングを強みとして新事業の構築に成功した事例と言えます。

【参考】総合刺繍メーカー 株式会社マツブン刺繍
【参考】東京商工会議所:第14回勇気ある経営大賞 株式会社マツブン

まとめ

  • 中小企業が一般的に持つ強みは、意思決定の早さ、コミュニケーションの容易さ、特定分野の専門性、そして経営の柔軟性です。
  • 中小企業が自社の強みを把握するメリットは、経営資源を特定分野へ集中し、顧客目線の経営、弱みの補完といった効果が期待できます。
  • 中小企業が自社の強みを分析する方法には、業務の棚卸し、顧客の反応の観察、他社との比較があります。
  • 中小企業経営に強みを活用する方法には、SWOT分析による内外要因の把握、専門分野の強化、ブランディングがあります。

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