連載:第82回 経営危機からの復活
存続の危機に直面した老舗企業のV字回復。組織を蘇らせた社長の勝ち筋


創業100年を超える表面処理・めっき加工の老舗企業・真工社が直面したのは、コロナ禍とサイバー攻撃という未曽有の二重危機。売上は激減し、幹部社員は全員退職…。「このままでは会社が存続できない」という瀬戸際で、既存のやり方を捨て、ゼロから構築し直すという、大胆な社内改革に着手します。その結果、社員一人ひとりの主体性が飛躍的に高まり、人員半減にもかかわらず生産性は倍増。見事なV字回復を実現しました。危機的状況を好機に変えた、「ある施策」とは? 代表取締役社長 眞子 岳志さんにお話を伺いました。

「コロナ」と「サイバー攻撃」という二重の危機に、営業赤字は膨らむ一方…
――はじめに、2020年以降に起きた経営危機についてお聞かせください。
眞子 岳志さん(以下、眞子): 2020年、新型コロナウイルス感染症の大流行により対面での営業活動が制限され、受注が激減。2019年度には16億円あった売上が、2020年度は9億円まで落ち込んでしまったのです。
それまで大変だった現場の課題をやっと解決できて、「ここから次のステージに向けてチャレンジしていこう!」と掲げたタイミングでのコロナです。挑戦に向けて人員を増員していたこともあり、本当に大きな痛手でした。
そして忘れもしない2021年2月28日。ランサムウェアによるサイバー攻撃を受けました。生産管理システムとファイルサーバーに格納されたデータ一式が全部記号に変わっていて、「直したければ身代金を払え」というメッセージが…。
データの復旧を外部に依頼できるか確認したところ、「データが戻るか保証できないが、費用は1000万円以上かかる」とのこと。身代金を払うか、復旧するかわからない作業に1000万払うか、データを諦めるか…。
非常に難しい選択でしたが、「データを復旧させない」という選択肢を取りました。 「古いデータにしがみついているよりは、ここで一度全部捨てて、会社のあり方を考えた方が前向きだ」 と思い、すべてをリセットする決断をしました。結果、生産管理のデータはすべて消失。お客様に事情を説明して注文データを送り直してもらうなど、ゼロからの再スタートを切りました。
この2つの影響で、2020年度以降は営業赤字が膨らむ一方…。会社の存続さえ危ぶまれる、いまだかつてない危機でした。さらに苦しかったのが、危機を乗り越えていく中で、幹部社員の全員が退職、現場社員もたくさん辞めていったこと。赤字が続く中で賞与を十分に出せなかった年もありましたし、会社の将来に不安を覚えた人が多かったのだと思います。特に2022年は社員約50人のうち14人が退職し、非常に厳しい状況でした。
――そんな状況から、V字回復を遂げられています。
眞子: はい、2023年度は売上が13億円まで回復。赤字から脱却し大幅な営業黒字を達成することができました。特にわかりやすいのが労働生産性で、コロナ前と現在を比べると、倍近くに伸びています。人員は半分近くに減ったにもかかわらず、効率よく稼げるようになりました。
当社がV字回復を達成できた一番の理由、それは、危機を乗り越えていく中ではじめた「ある施策」にあります。社員一人ひとりの主体性が高まり、意思決定の質が格段に上がりました。 社員が自ら考えて行動するようになったことで、少人数でも強い組織に変わった と感じています。
経営危機を乗り越える礎となった「ある施策」
――経営危機を乗り越えるための「施策」について、教えてください。
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}
バックナンバー (82)
経営危機からの復活
- 第82回 存続の危機に直面した老舗企業のV字回復。組織を蘇らせた社長の勝ち筋
- 第81回 「“無礼”が組織を壊す」覚醒からのV字回復。リーダーが確信した組織づくりの本質
- 第80回 「社長のようにはなれません」で目覚めたリーダー。V字回復できたマネジメントの要諦
- 第79回 稲盛氏の厳しい叱咤で目が覚めた。負債43億企業を再建させた2つの決断
- 第78回 年商同等の8億円被害から4年でV字回復・過去最高益。絶対に諦めなかったリーダーの貫徹力