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連載:第83回 経営危機からの復活

「自分が改革しないと会社は潰れる」の驕りから目覚めた一言。V字回復を実現したリーダーが気づいた大切なこと

BizHint 編集部 2025年4月10日(木)掲載
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哺乳瓶の洗浄機や滅菌機器を製造する三田理化工業は、少子化による市場縮小の懸念や、高い離職率など、複数の課題を抱えていました。27歳で妻の家業を継ぐために入社した千種社長は、当初「俺がいないと会社は潰れる」という焦りと驕りで空回りしてしまいます。しかし、先輩管理職の「ある一言」をきっかけに、リーダーシップの本質に目覚め、組織改革を実行。その結果、離職率は21.5%から2.4%へと大幅改善、2017年に8億円から5億円にまで落ち込んだ売上高も現在は7億3000万円と、V字回復を遂げています。千種社長が体験から気づいた「大切なこと」とは。詳しく伺います。

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三田理化工業株式会社
代表取締役社長 千種 純さん

1989年、大阪府大阪市生まれ。京都大学法学部を卒業後、2012年にイービストレード株式会社に入社。妻の家業を継ぐため、2016年にグロービス経営大学院へ入学。2017年に三田理化工業に入社し、翌年3月にMBAを取得。2023年12月、社長に就任。


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先輩のある一言が組織改革の要に。リーダーが過ちに気づいた瞬間

――千種社長が入社された2017年当時、組織はどのような課題を抱えていたのでしょうか?

千種純さん(以下、千種): 入社した頃、会社はいくつもの課題に直面していました。特に深刻だったのは、 入社前の1年間で9人もの中核社員が退職していたこと。 設計のリーダーや工場の品質管理担当など、会社の要となる人材が次々と去っていったんです。

この大量退職には複合的な要因がありました。まず、 2014年から売上が年々下がり続けていた ことが大きいですね。8億円あった売上が徐々に減少し、2017年には5億円程度まで落ち込んでいました。当社は哺乳瓶の洗浄機や滅菌機器を製造しているのですが、少子化の影響による市場縮小の影響で会社の進むべき方向性が見えず、将来に不安を抱く社員が増えていたんだと思います。当時の離職率も21.5%と高く、社員のモチベーションも低くなっていましたね。

また、 組織のリーダーシップにも課題がありました。 当時、先代社長は強いリーダーシップで組織を率いていて、社長の指示で全社員が動く「文鎮型組織」だったんです。多くの意思決定がすべて社長に集中していて「部長以上の役割は全部社長がやる」といった状況で。

ただ、年齢とともにそのパワーも弱まっていました。そのため、営業会議などにおいて、例えば、「訪問件数を増やそう!」と社長が言っても、それが組織としての行動につながっていませんでした。営業チームは訪問件数を増やしても即時的な売上アップにつながらないことはわかっていましたが、社長の指示が実態と違う場合に、それを社長に直接意見するのではなく、その場を流してしまう組織になっていたんです。

結果的に、文鎮型組織がうまく機能しなくなってしまいました。

――その状況をどのように改善していったのでしょうか?

千種: 「会社をなんとかしたい」「この状況を自分がなんとかしなければ」という思いから、入社2ヶ月目に参加した部課長会議で「生産性の低い製品はやめるべきだ」「この部分がボトルネックだから、設備投資をした方がいい」といった改善案を提案したのですが…この方法は大失敗でした。

自分が調べたデータだけを頼りに、一方的に意見したんです。そしてかなり強い口調で「こんなことを放置しているなんて許せない」とまで言ってしまいました。

実は当時の私の中には、 「今すぐ自分が改革しないとこの会社は潰れてしまう」という焦りと、「自分の提案で会社をV字回復させなければ」という義務感が入り混じっていました。 次期社長を見据えて経営に関する勉強に打ち込んで入社した自分を、どこか特別だと思い込んでいたのでしょう…。目先の数字だけを見て「これはダメだ」と決めつけていたんです。

会議後、その場にいた設計課長が屋上に呼び出してくれました。てっきり厳しく叱られると思ったのですが、 そこで掛けてくれた言葉が、私を目覚めさせてくれたんです。 そしてこの言葉こそが、私の転換点となりました。

――その一言とは?

この記事についてコメント(1)

  • 拝読させていただきました。今の時代にそぐわない習慣なども
    過去の導入経緯を理解した上で改善していくと言うのはとても良いと
    思いますし、そうする事でのコミュニケーションも図れますね
    私も今の会社に転職してきた身ですが、否定するのではなく、過去の経緯もしっかりと理解した上で行動したいと思います
    (記事を読んで思いました)
    また会社の方向性・VISION・等みなさんが一致団結して行動できる指針も単なる記載だけに終わらず、地道なコミュニケーションが必要と思いましたし、それがチーム(会社)の土台になるんだと感じました
    (物流業 MK)
    2025年04月14日
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