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連載:第42回 リーダーが紡ぐ組織力

「マイナスをなくせば組織はよくなる」は経営者の幻想。自律型組織を築いたリーダーがたどり着いた“指針”

BizHint 編集部 2024年12月13日(金)掲載
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工場ではベテラン職人の怒鳴り声が響き、泣いているスタッフがいるのも日常茶飯事、毎年赤字が続いているような経営状況…。「入社時はとんでもないところに来てしまったと思った」と話すのは、谷川クリーニングの谷川祐一社長です。マイナスだらけの組織を変えるためにルールを徹底し、いい会社にすべく奮闘する日々。しかしその先に待っていたのは、工場の8割のスタッフが辞めるという大量退職でした…。同社はどのようにして、社員一人ひとりが助け合い、主体的に考え行動する組織に変わっていったのでしょうか。そこには、谷川社長が迷い、悩み続けた末に見つけた「組織でいちばん大事な指針」がありました。そして「そもそも自律的じゃない人は存在しない」と語る、その本質とは?詳しく伺います。

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そもそも自律的じゃない人はいない

――貴社は50年以上の歴史をもつ企業でありながら、上下関係がなく、従業員が主体的に働く組織なのだとか。

谷川祐一さん(以下、谷川): そうですね。そもそも店長をはじめとした役職がありません。なので、役職による上下関係はありませんし、雇用形態による差も、ただ働く時間が違うだけ。社内のルールはあいまいで、仕事上の判断はほとんど個人の裁量任せです。仕事で必要なものであれば、承認など不要で勝手に買ってもらって構いません。

また、基本的に私が現場に口出しすることはありません。何かトラブルが起きても、スタッフ同士で考えて解決にあたるような組織風土です。シフトについても、私は一切関与していません。把握すらしていないので、今日誰が出勤しているかわからないくらいで(笑)。現場で自由に決めてもらって、お互い助け合いながら、シフトの交代も柔軟にやっています。

紆余曲折ありましたが、今はこのスタイルでうまくいっています。昔はまったく人が定着しない会社でしたが、今は離職率5%程度に。ありがたいことに、業界が抱える人手不足とも無縁となりました。

――とはいえ、「社員が主体的に動いてくれない」「社員が自律的になるにはどうしたら?」と悩んでいる企業が多いのも実情です。貴社の場合、どのようにアプローチしているのでしょうか?

谷川: 私の場合はそもそも、スタッフに主体性を求めないところから始まっています。昔の当社は、職人の怒鳴り声が響いているのは日常茶飯事。「いらっしゃいませ」すら言わない店舗。人はどんどん辞めていく…。そんな環境下でスタッフを信用できず、組織のマイナスをなくすためにルールを徹底し、今考えると、自律とは無縁の組織づくりをしていたと思います。

しかし2015年、私の概念が覆されるような大きなターニングポイントがありました。一人ひとりの主体性が発揮される組織の底力を体感し、同時に 「自律的じゃない、他律的な人なんて世の中にいない」 と気づかされたのです。

そして、自律的に見えない人がいるとしたら、そこにははっきりとした原因があります。

――それは何でしょうか?

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