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連載:第54回 リーダーが紡ぐ組織力

超トップダウンから自律型組織を実現させたリーダーが貫いた、たった一つの概念

BizHint 編集部 2025年3月27日(木)掲載
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ステンレス薄板溶接のスペシャリストとして成長してきた株式会社精和工業所。創業者のカリスマ性と幹部の技術力で発展してきた同社が直面した課題は、典型的なトップダウン型組織ゆえの「当事者意識の欠如」「部門間の分断」でした。3代目社長として就任した原克彦さんは「このままでは会社が衰退する」と危機感を抱き、自律型組織への変革を決意します。その改革の核心には、ある一つの「概念」がありました。その概念を軸に、自律型組織への変革を進めていきます。その結果、部門を越えた自発的な連携が生まれ、過去最高の業績を達成できました。超トップダウンだった組織を自律型組織へと導いたリーダーが貫いたこととは。詳しく伺います。

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株式会社精和工業所
代表取締役社長 原 克彦 さん

1975年生まれ、兵庫県出身。大学卒業後はシステムコンサルティング会社に就職し、2004年に祖父が創業した精和工業所へ入社。2018年に社長就任。同社はステンレス薄板溶接のスペシャリストとして住宅設備機器・家電・産業環境試験器向けの溶接製品を手がけ、「他社では実現できない溶接」をキーワードに、OEM製造から自社商品開発まで展開している。


「諦め」が蔓延していた組織を変えた、たった一つの気づき

――精和工業所は現在、売上高も好調に推移し、部門間の連携も活性化していると伺いました。

原 克彦さん(以下、原): 創業から継続して黒字経営を達成しており、2024年9月期の売上高は52億円と過去最高業績となりました。社員の離職率も約4.8%と低水準を維持しています。 特に嬉しいのは、部門の壁を越えた自発的な連携が社員間で日常的に生まれるようになり、自律型組織として成長できたことです。

ただ、最初からそうだったわけではありません。私が2004年に入社した当時はいわゆる典型的な「超トップダウン型」の組織でした。創業者である祖父の堅実な経営とカリスマ性、そして高い技術力を持つ幹部社員に支えられ、売上高も右肩上がりに推移していました。

また、得意先からの信用を最も重視していた先代社長は、組織内部においても「信頼できる人に権限を集中的に与える」という判断を軸にしていて、ほとんどの意思決定は社長と幹部社員たちに集中していたんです。迅速な意思決定ができるという点でメリットはあったものの、当時180人いた社内には 「言われたことを実行するだけでいい」 といった「諦め」の雰囲気が蔓延していたように思います。

業績は悪くなく、給料も保証され、大きなミスがなければ昇給も続く環境。 そのため「事なかれ主義」が浸透し、「余計なことをすると評価が下がる」という風潮もありました。 また、「ここからここまでは自分の仕事、ここからはあなたの仕事」と境界線が明確で、 他部門への関心も低く、部門間のコミュニケーションはほとんどない状態だったんです。

実際に社長就任前から、組織に対する不満の声は私に直接届いていて。部門間のコミュニケーションや連携が希薄だったことによる業務バランスの不公平さなどからくる「ハードワークがつらくて心が折れそう」や、「余計なこと言うなという風潮に耐えられないから、原さんの代で組織が変わらなかったら会社を辞めたい」という声が、特に私が中間管理職になったタイミングで増えていきました。

「このままでは会社は衰退する」。私はそんな危機感を抱き、何度も提案書を作成しては先代社長に変革の必要性を訴えかけました。ですが、当時の組織構造上、自分が思う正解を通そうとすると幹部社員からの反発を招くばかり。とはいえ従うだけでは何も変わらない…。こうした板挟みの状況が、社長に就任する直前まで続いていたんです。

長年の葛藤で頭を悩ませていた頃、先代から社長を引き継ぐことになります。実は、かなり突然の話でした。先代が20年間社長を務めた後、切りが良いこともあったのでしょうか。「来月から社長になれ」といきなり言われたのです。私自身はあまりプレッシャーを感じておらず、むしろ「やっとこの時がきた!」という感覚で。長年抱えていた組織改革への思いを実現できるチャンスだと思いました。

――どのように組織改革を進めていったのでしょうか?

原: ある 一つの概念 を貫いて、組織改革を実行していきました。 この概念の重要さに気づけたことが、その後の組織づくりに大きく影響することになっていったのです。

――その概念とは何だったのでしょうか?

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