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連載:第55回 リーダーが紡ぐ組織力

社長の未熟さが混乱を招いていた。リーダーが15年で確信した「経営者の正しい在り方」

BizHint 編集部 2025年4月1日(火)掲載
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秋田県を拠点に送電線保守を手がける東北用地測量社。3代目の岸野綾子社長は、父の突然の失踪という壮絶な経験から債務超過の会社を立て直し、V字回復を成し遂げました。その後は、経営も順調。組織運営もうまくいっているように思っていたものの、いつの間にか社員との間に軋轢が生まれ、退職者が続出するように…。組織の成長を止めていた「正体」に気づいたのは、2022年のこと。その気づきにより社長自身が変化し、組織の心理的安全性が向上。業績も右肩上がりに成長しているそうです。同社が歩んだ試行錯誤の道のりと、ターニングポイントについてお聞きしました。

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父の失踪と経営危機。V字回復を成し遂げるも、気づけば組織は崩壊寸前に…

——岸野社長は2001年、家業である東北用地測量社に入社しています。当時は苦労の連続だったそうですね。

岸野 綾子さん(以下、岸野): そうですね。当時の売上は2億円台で、営業利益率は5%ほどでした。ただ内実は厳しく、銀行からの借り入れが1億円弱、下請事業者への未払いも6,000万円ほど残っていました。キャッシュフローはギリギリの状態、さらに自己資本はマイナスで、債務超過に陥っていたんです。そんな中、ある事件が起きます。

——ある事件とは?

岸野: 2004年、当時の社長である父が失踪したのです。突然秋田から姿を消して、家には勝手に判が押された離婚届が母宛てに送られてきて…。

実はその前から、父の動きに「何かおかしいな」という違和感がありました。会社が債務超過の状態なのに、私には父が何もしていないように見えていたんです。そのため「会社がこんな状況なのに、何やってるの?」と言い合いになり、大喧嘩したことも。とにかく当時は父に対する怒りしかわいてこなかった。そんな状況に耐えられなくなったのでしょう。父はいなくなってしまったのです。

父の失踪後しばらくは、祖父がピンチヒッターを務めました。当時は、父がいなくなっただけでなく、地権者からの内容証明や、業務ミスによる損害賠償請求、下請けへの未払い問題…あらゆるトラブルが会社に押し寄せていたんです。祖父と私の2人で、そういったトラブル対応や借入金の返済、銀行との交渉などに奔走していました。

そして2009年にやっと、長年の債務超過を解消させ、安定した経営に戻すことができました。そしてその年に、私が社長に就任しました。特に直近2年間は営業利益が右肩上がりに伸び、16名という少人数で会社がうまく回っている実感があります。

ただ、私の社長就任以降は順調だったかと言えば、そうではありません。試行錯誤の連続でした。一番のターニングポイントは、 「自分の未熟さが組織を混乱に陥れていた」 という強烈な気づきです。

――詳しく教えてください。

岸野: 私はもともと社長になるつもりはなかったので、理想の経営者像や組織像を持ち合わせていませんでした。一方で「二度と経営危機に戻りたくない」「安定した経営を行いたい」そんな不安をずっと抱えていました。

だからこそ「正解」や「正しいやり方」を求め、社外で経営の勉強に没頭していくのですが、気づけば組織に軋轢が生じていて、退職者が続出…。決定打は、会社を支えてくれていたベテラン社員の退職です。

私は会社を良くして、社員を幸せにしたいと思っていただけなのに、どうしてこうなってしまったのか…。そう悩む中で、組織がこうなってしまったのは、私の「正しさ」への執着が原因だったと気づきました。

――どういうことでしょうか?

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