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就業規則の変更が必要となるケースとは?ケース別対応法や必要な書類、手続きのポイントをご紹介

BizHint 編集部 2017年9月19日(火)掲載
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就業規則を変更する必要があるケースには、社内ルールの変更・法改正への対応・助成制度への対応の3種類が挙げられます。今回は、ケース別の検討内容や経営陣の決裁まで、順を追った対処法を説明します。そして、最近の法改正情報や助成制度への対応例もあわせて紹介した上で、決裁後の対応や変更届け出に必要となる書類も解説していきます。

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就業規則を変更する場合

就業規則は、いったん作成すれば完了というものではありません。さまざまな事情にあわせて内容を見直し、変更を行わなければならない場合が多々あります。今回は、すでに作成済みの就業規則を変更するケースについて、順を追って解説をしていきましょう。

就業規則とは

就業規則とは、会社側が社員側に向けて社内で遵守して欲しいルールを明示するためのものです。形式に決まりはなく、厚生労働省によるテンプレート「モデル就業規則」を初めとした雛形を活用する場合もあれば、マンガやDVD形式など、社内で独自性をもたせた就業規則も存在します。

【関連】 就業規則とは?作成~届出までの手順・ポイントをご紹介 / BizHint HR

※就業規則の意見書について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【関連】 就業規則の届出に必要な意見書の書き方や記入例、注意点を徹底解説 / BizHint HR

変更の必要があるケースとは

就業規則を変更しなければならないケースには、主に次の3種類があります。それぞれの事象が単独で発生する場合もあれば、複数の事象に対応するため、大規模な変更作業に取りかかる場合もあります。

ケース1:社内ルールを変更する場合

まず挙げられるのが、社内のルールを変更する場合です。たとえば、業務時間の変更や新たな奨励制度の導入、賃金規程の見直しなどが挙げられます。

また、パートタイマーを新たに雇う際に「パートタイマー規程」を新たに作成する場合や、定年退職後の社員を再雇用する際に「嘱託社員規程」を作成する場合など、新規で別規程を設けるケースも、この「社内ルールを変更する場合」に該当します。

ケース2:法改正に対応する場合

国で施行されている法律が変更・改正された場合、その最新内容に沿った形で就業規則を変更しなければならないケースがみられます。

たとえば、育児・介護休業法の改正に基づき、新たに育児・介護休業の制度を取り入れる場合や、労働基準法の改正内容に合わせて割増賃金の率を変更する場合などが挙げられます。

ケース3:助成制度に対応する場合

雇用関係の助成制度には、多くの場合で就業規則の提出を義務付けている、という特徴があります。これは、助成金を受け取る資格があるのは、会社側が社員をきちんとした環境で働かせている場合のみ、という考え方から成り立っています。就業規則の整備することで、適切な社内管理を実施していると証明することができることから、提出が求められるのです。

【参考】BizHintホームページ:就業規則(就業規則によるメリットとは 助成金対策)

ここからは、前述した3種類のケースの内容や具体的な対応方法について、順に説明をしていきます。自身の会社内容をイメージし、当てはめながら読み進めてみて下さい。

就業規則の変更ケース1:社内ルールを変更する場合

社内ルールを変更するにあたり最も重視しなければならないのが、労働者側の同意を得るための努力を行うことです。就業規則には、労働者が会社で働くにあたって守るべきルールや労働条件が記されています。したがって、就業規則を変更する場合は、労働者側の意見を聴き、双方が納得のいく内容にすることが重要となります。

もしも、労働者側が不満を持つ形に規則を変更し、それを押し通した場合は、不要な労使トラブルのもととなり、社内の足並みが乱れる結果となります。

不利益変更の禁止

労働契約法9条では、使用者は、労働者の合意なく就業規則を変更し、労働者の不利益となる内容で労働条件を変更することはできない、と定めています。どうしても変更しなければならない必要性が生じる際には、同法10条により、変更後の内容を労働者に周知させた上で、労働者の受ける不利益の程度や変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが求められています。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働契約法(平成十九年十二月五日法律第百二十八号)

変更内容の検討

社内ルールを変更する場合、まずは現状の内容からどのように変更し、就業規則へ反映させるかをじっくりと検討しなければなりません。その際には、前述の通り変更後の規則が労働者側に不利益な内容とならないよう、配慮する必要があります。また、当然ながら、労働基準法を初めとした法律を遵守した内容で就業規則を変更しなければならない点も覚えておきましょう。

経営陣による決裁

内容がまとまったところで、次は経営陣に対して確認の依頼を行います。社長を初めとした経営幹部の成り立ちは会社に応じて異なるため、自社の手順に沿って就業規則変更の許可を取ることになります。

就業規則の変更ケース2:法改正に対応する場合

法改正に対応する場合は、前述の社内ルールを変更する場合とは異なり、必然的に行わなければならない行為となります。したがって、比較的変更の作業がしやすいケースであるといえるでしょう。

就業規則の見直し

法改正に対応する場合、まず初めに行うこととしては、自社の就業規則の作成日(すでに改正済みの場合は最終改定年月日)を確認することです。日付を確認することで、対応していない法改正の内容を明らかにすることができるためです。会社によっては、長期にわたり内容を変更していないケースがありますが、変更をしてない期間と対応しなければならない内容量は比例しますので、注意が必要です。

度重なる法改正の実施

昨今では、長時間労働にまつわる過労問題や未払い残業問題、非正規雇用者の雇用条件問題など、労使間におけるさまざまなトラブルが顕在化しています。国でも、ワーク・ライフ・バランスや働き方改革など、労働者がより働きやすい環境で就労することができるよう、さまざまな取り組みを打ち出しています。

それに伴い、雇用関係の法律の改正が近年は頻繁に繰り返されており、各社では社内環境の整備が急務とされています。

【関連】「働き方改革」とは?実現会議と働き方改革実行計画について / BizHint HR
【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?企業の取り組み事例と実現のポイント / BizHint HR

【主な法改正内容】

ここからは、平成10年以降の主な法改正内容について紹介していきます。自社の就業規則の整備が適切に行われているか、確認をしてみて下さい。

  • 平成11年:労働基準法の改正(労働条件の明示・年次有給休暇日数の加算・変形労働時間制の要件緩和など)
  • 平成11年:育児・介護休業法の改正(介護休業設定の義務化など)
  • 平成14年:育児・介護休業法の改正(不利益取扱いの禁止・看護休暇制度の創設・時間外労働の制限など)
  • 平成16年:労働基準法の改正(有期労働契約の契約期間延長・解雇規程の整備・裁量労働制の改正など)
  • 平成17年:育児・介護休業法の改正(育児休業期間の延長・介護休業期間の変更・看護休暇制度の義務化など)
  • 平成18年:高年齢者雇用安定法の改正(定年年齢の引上げ(65歳)、継続雇用制度導入の義務化など)
  • 平成19年:男女雇用機会均等法の改正(性差別禁止の範囲拡大・妊娠出産に基づく不利益取扱いの禁止・セクハラ対策など)
  • 平成20年:労働契約法の創設(労働契約の基本ルールやトラブル発生時の対処法など)
  • 平成20年:パートタイム労働法の改正(雇入れ時の労働条件明示化・正規転換制度の義務化など)
  • 平成22年:労働基準法の改正(時間外労働の作戦・割増賃金の引き上げ・年次有給休暇の時間単位取得制度創設など)
  • 平成24年:育児・介護休業法の改正(短時間勤務制度・所定外労働の制限・介護休暇の義務化対象拡充など)
  • 平成25年:高年齢者雇用安定法の改正(継続雇用制度対象限定制度の廃止など)
  • 平成25年:労働契約法の改正(無期労働契約への転換・雇止め法理の法定化・不合理な労働条件禁止など)
  • 平成27年:パートタイム労働法の改正(正社員との差別化禁止対象者の拡大・短時間労働者の待遇原則の創設・雇入れ時の説明義務など)
  • 平成29年:育児・介護休業法の改正(育児休業期間の延長・介護休業の分割取得・介護休暇の取得単位緩和・介護に基づく所定労働時間の短縮など)

見直しに適した頻度とは

前述のように、ここ数年ではほぼ毎年のように法律の改正が行われていることが分かります。そのため、就業規則の見直しも、理想としては一年に一度が良いものと思われます。

ただし、就業規則の見直し作業にはそれなりに時間や手間がかかるものです。したがって、2~3年に一度の法改正を目安にした上で、大規模な法改正が実施された際には対応するという形を取ると良いでしょう。

見直し後の手順とは

修正内容を洗い出した後の手順としては、前述の「社内ルールを変更する場合」と同じく、経営陣の指示を仰ぐこととなります。その際には、決裁までの流れがスムーズになるよう、あらかじめ変更の基となる法律の改正情報を添えておくと良いでしょう。

就業規則の変更ケース3:助成制度に対応する場合

助成制度を利用するために就業規則を変更する場合も、前述の「法改正に対応する場合」と同じく、必然的な変更となります。助成制度を利用する旨の決定権は、社長をはじめとした経営幹部陣にあります。したがって、助成制度に対応するための就業規則の変更作業は、当然ながら上層部の指示により行われる行為となります。

つまり、助成制度に対応するための変更作業は、3種類の中でも最も変更までの流れがスムーズになるケースといえるでしょう。

変更内容の検討

助成制度に対応する場合、まずは自社で検討している助成制度において、就業規則をどのように変更するかを確認しなければなりません。

厚生労働省のホームページでは、雇用関係の助成制度を利用する手順が掲載されたリーフレットを掲載しています。対象となるリーフレットをダウンロードし、活用する方法が有効となります。

【参考】厚生労働省ホームページ:雇用・労働(事業主の方のための雇用関係助成金)

就業規則に関係する助成制度とは

雇用関係の助成制度にはさまざまなものがありますが、主に次の種類に分類されます。

  1. 従業員の雇用維持を図る場合の助成金(雇用調整助成金)
  2. 離職者の円滑な労働移動を図る場合の助成金(労働移動支援助成金)
  3. 従業員を新たに雇い入れる場合の助成金(特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金など)
  4. 障害者等の雇用環境整備関係の助成金(障害者雇用安定助成金・障害者職業能力開発助成金など)
  5. 雇用環境の整備関係の助成金(職場定着支援助成金・人事評価改善等助成金など)
  6. 仕事と家庭の両立に取り組む場合の助成金(両立支援等助成金)
  7. キャリアアップ・人材育成関係の助成金(キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金)
  8. 労働時間・賃金・健康確保・勤労者福祉関係の助成金(職場意識改善助成金・中小企業最低賃金引上げ支援対策費助成金など)

【関連】 キャリアアップ助成金とは?チェックリストや申請書のポイントまでご紹介 / BizHint HR
【関連】 テレワーク導入で助成金が?受給までの方法やその他支援体制を導入事例も交えてご紹介 / BizHint HR

就業規則「変更」の重要性

上記からも分かるように、労働者の就業環境の改善や教育訓練などのキャリアアップ支援、待遇改善などを行った場合に受け取ることができる助成制度が多くみられます。これらの助成制度を利用する場合、各制度で定められている要件を満たすための取り組みを社内で行わなければならず、その取り組みを新たに導入するという証明になるのが、就業規則となります。

つまり、助成制度を利用するにあたり、就業規則の変更作業は非常に重要な行為なのです。

見直し後の手順とは

就業規則の具体的な変更内容を洗い出した後の手順は、前述の「社内ルールを変更する場合」や「法改正に対応する場合」と同様です。この場合も、決裁までの流れがスムーズになるよう、あらかじめ変更の基となる助成制度の概要と就業規則の変更義務がある旨を伝える方法が効果的となります。

ここからは、具体的な助成制度の内容を紹介した上で、どのように就業規則を変更していくかの手順を見ていきます。

助成制度への対応事例①:両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)

まずは、「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」の例を挙げてみましょう。両立支援等助成金とは、労働者が仕事と家庭を両立するための支援を実施した中小企業が利用することができる助成制度です。

どのような制度か

両立支援等助成金には6種類のコースが設定されていますが、そのうち介護離職防止支援コースとは、その名の通り家族の介護を理由とした離職を防ぐための対策を取った企業が対象となります。具体的には、仕事と介護生活を両立するための「介護支援プラン」を作成し、介護休業などの取得や介護制度の利用により職場復帰を果たした労働者が発生した際に助成金を受け取ることができます。

支給対象となる要件とは

この制度にはさまざまな要件が設定されていますが、そのうちの一つとして、次のような「就業規則の整備」が挙げられています。

  • 介護支援プランにより、介護休業の取得及び職場復帰並びに介護制度の利用を支援する措置を実施する旨の規定と労働者への周知

この一文では、取り組みを実施する前にあらかじめ就業規則に介護休業の取得や職場復帰支援についての制度を導入し、届け出を行った上で労働者へ内容の周知を行うことが記されています。

就業規則の変更内容とは

具体的には、次のような一文を就業規則に加える必要があります。 なお、育児・介護休業規程を別規程として設けている会社の場合は、別規程内に次のような一文を盛り込むことになります。

==================================

第○○条 円滑な取得及び職場復帰支援
 会社は、育児休業又は介護休業等の取得を希望する従業員に対して、円滑な取得及び職場復帰を支援するために、当該従業員毎に育休復帰支援プラン又は介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施する。
なお、同プランに基づく措置は、業務の整理・引き継ぎに係る支援、育児休業中又は介護休業中の職場に関する情報及び資料の提供など、育児休業又は介護休業等を取得する従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施する。

==================================

この一文を盛り込んだ就業規則一式を労働基準監督署へ届け出た上で要件を満たす取り組みを実施することで、両立支援等助成金を受け取ることが可能となるのです。

【参考】厚生労働省リーフレット:両立支援等助成金(介護離職防止支援コース 支給申請までの流れ)

助成制度への対応事例②:職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)

次は、「職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)」の場合について説明をします。職場定着支援助成金とは、労働者の離職率を低下させるため、雇用管理制度を導入するなどの取り組みを行った事業主に対して行われる助成制度です。

どのような制度か

取り組みの内容となる雇用管理制度には、評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主のみ)の5種類が設定されています。一つの制度を導入するごとに10万円、従業員の離職率が低下し、目標が達成された場合には60万円の助成金が支給されます。

支給対象となる要件とは

この制度には、雇用管理制度整備計画の策定や実施など、さまざまな要件が設定されていますが、そのうちの一つとして、次のような「就業規則の整備」が挙げられています。

  • 認定を受けた雇用管理制度整備計画に基づく雇用管理制度の導入 (労働協約または就業規則に明文化することが必要)

この一文では、取り組みを実施する前にあらかじめ就業規則に対象となる雇用管理制度を導入し、届け出を行った上で労働者へ内容の周知を行うことが記されています。

就業規則の変更内容とは

具体的には、次のような一文を就業規則に加える必要があります。ここでは、5種類ある制度のうち、「研修制度」を導入する場合の就業規則記載例を見ていきましょう。

==================================

第○○条 教育訓練
 会社は、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、労働者の勤続年数、 勤務成績、役職等に応じて教育訓練を行う。
2 教育訓練の対象者および種類は次のとおりとする。
(1)入社1年目の労働者:新入社員研修
(2)勤続5年を経過する労働者であって、直近の評価がAクラス以上の労働者:リーダー候補者研修
(3)初めて管理職となる労働者:新任管理職研修
(4)第○○条に定める人事評価における直近の評価結果が、2期連続してC評価以下の者:フォローアップ研修
3 労働者は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合には、特段の事情がない限り教育訓練を受けなければならない。
4 教育訓練は、毎年○月から○月の期間の間で実施するものとし、前項の指示は、該当労働者に対し、教育訓練開始日の少なくとも○週間前までに、書面により通知する。
5 会社は、教育訓練に要する費用の全額を負担する。
6 会社は、教育訓練に関する書類は、3年間保管するものとする。

==================================

この一文を盛り込んだ就業規則一式を労働基準監督署へ届け出た上で要件を満たす取り組みを実施することで、職場定着支援助成金を受け取ることが可能となるのです。

なお、上記の一文を「教育訓練規程」という別規程とし、別途就業規則に下記の一文を加える方法も認められています。

==================================

第○○条 教育訓練
 会社は、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、別途定める「教育訓練規程」に基づき、労働者の勤続年数、勤務成績、役職等に応じて教育訓練を行う。

==================================

【参考】厚生労働省リーフレット:職場定着支援助成金(個別企業助成コース)のご案内

決裁後の対応について

ここまでは、就業規則の変更が必要となる3種類のケースの詳細について説明をしてきました。経営陣による決裁を受け、就業規則の変更作業にゴーサインが出た場合の手順は、いずれのケースの場合でも同様の内容になります。

ここからは、決裁を受けた後の対応方法について述べていきます。

意見の聴収

まずは、就業規則の変更内容について、労働者側の意見を聴収し、意見書へ記載してもらう必要があります。労働者側に内容を確認してもらい、意見書にその内容を記す行為は、労働基準法により定められた事業主に対する義務となります。

聴収対象者とは

意見聴収の対象となる者については、労働基準法90条により、次のように指定されています。

《労働基準法90条》
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

この内容からすると、意見聴収の対象者は「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」になります。

同意の必要はあるのか

意見を聴く際に、労働組合または労働者の代表に変更内容についての同意を得られなかった場合についても、就業規則の届け出を行うことが可能です。

労働基準法で義務づけられているのはあくまでも「意見を聴くこと」であり、同意を得ることではないため、異議や意見ありとして提出した就業規則でも、労働基準監督署により受け付けてもらうことができます。

意見書の記入

労働者側の意見を聴収したところで、実際に意見書へ記入をする段階へと入ります。意見書の意見記載欄や署名欄には、労働組合または労働者の代表に記載を依頼することになります。

【関連】就業規則の届出に必要な意見書の書き方や記入例、注意点を徹底解説 / BizHint HR

就業規則の変更届け出

意見書に意見を記載してもらった段階で、労働者側への聴収作業が終了します。ここからは、実際に労働基準監督署へ届け出るための準備に入ることになります。

変更の届け出は義務なのか

就業規則を変更した場合の届け出は、就業規則の作成義務がある会社の場合は義務となります。

労働基準法89条によれば、「常時10人以上の労働者を雇用する会社」には、就業規則の作成義務があるため、内容を変更した場合も届け出を行わなければなりません。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

届け出をしなくても内容は有効なのか

就業規則は、労働基準監督署へ届け出た段階ではなく、作成後に労働者側へ内容を周知させた時点で有効になります。したがって、就業規則の内容を変更した場合でも、労働者側へ内容を確認してもらった時点で変更後の就業規則は「一つの規則」として成り立つことになるため、注意しましょう。

変更届け出に必要な書類とは

就業規則の変更届け出を行う際に必要な書類は、次に挙げるものとなります。就業規則の新規届け出のケースとは若干内容が異なるため、気をつけながら見ていきましょう。

就業規則・別規程

まず、変更をした就業規則や別規程の準備をします。変更をしていない別規程などがある場合は、提出をする必要はありません。なお、就業規則や別規程は、原本ではなくコピーでも構いません。

就業規則変更届

就業規則を変更する場合は、就業規則の新規作成時に活用した「就業規則届」ではなく、「就業規則変更届」に記入をします。就業規則変更届には、書式の定めはありません。就業規則届の場合と同じく、各都道府県の労働局や社労士事務所などのホームページより無料ダウンロードを行うことが可能です。

意見書

労働者側の意見を聴いた際に作成した意見書のことです。日付や意見の内容、署名や押印が的確に記載されているかを確認しましょう。

新旧対照表

新旧対照表とは、就業規則または別規程をどのように変更したかを記す書類です。通常の場合、表の左側に変更前の内容を、右側に変更後の内容をそれぞれ記載します。

また、「改正箇所一覧」として、箇条書きで変更前後の内容を記載するケースもみられます。形式に定めはないため、変更前後の内容が確認できれば、どのような書式を活用しても構いません。

届け出におけるポイント

就業規則を変更する場合も、新規作成の規則を提出する場合と同じく、労働基準監督署へ持ち込む方法や郵送による方法を取ることができます。ただ、助成制度に対応するための変更を行う場合などは、他の書類作成に追われてなかなか就業規則にまで時間を取ることができないケースが多くみられます。

このような場合は、まずは就業規則変更届・意見書・新旧対照表・変更対象となる就業規則一式をすべてコピーし、2部ずつにします。その上で、切手を貼った返信用封筒を同封して郵送する方法を取ることで効率を良くすることができます。

労働者への周知

就業規則の届け出・受理がなされたところで、次は会社に勤める労働者に対して変更内容の周知を行います。意見書を記載する際に聴収した労働者側の代表のみならず、すべての労働者が対象となることがポイントです。

周知方法とは

就業規則を労働者へ周知する方法は、次のように指定されています。基本的には、就業規則の新規作成時の対応と同様になります。

  1. 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
  2. 書面で労働者に交付する
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法施行規則(昭和二十二年八月三十日厚生省令第二十三号)

なお、磁気テープや磁気ディスクを扱わず、就業規則をデータ変換してメールで添付する方法や、その他記録メディアを活用する方法も許されています。また、社内ネットワーク上で管理し、常時閲覧可能な状態にしておく方法なども有効です。

まとめ

  • 就業規則を変更する必要があるケースには、社内ルールの変更・法改正への対応・助成制度への対応があり、それぞれ内容を検討後、経営陣による決裁を受けることになる。
  • 就業規則の作成義務がある会社は、就業規則の変更時には労働基準監督署への届け出が必要。ただし、届け出をしなくても労働者への周知が完了した時点で内容は有効になる。
  • 就業規則の変更時には、変更した就業規則や別規程、就業規則変更届、意見書、新旧対照表を準備した上で労働基準監督署へ届け出る。その後は、全労働者に対して周知を行う。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


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