はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2019年1月9日(水)更新

過重労働

過重労働と言えば、電通やNHKの事件が思い浮かびますが、この事件以前から同様の事例は多数発生しており、過労死に至らないまでも、うつ病などの精神障害も増加傾向にあります。この流れを受けて政府では様々な対策が講じられていますが、それに応じた現場である各企業での意識改革、徹底した労働者の健康管理が求められています。

過重労働 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

過重労働とは

何が「過重」であるのかについては、本質的には一概に言えるものではありませんが、労働である以上、それを管理する国や企業においては時間数などで何かしらの定義付けが必要になります。

過重労働の定義

一般的には、長時間労働などにより、労働者に身体的、精神的に過度な負荷を負わせる労働のことを言います。

対象となる労働時間とは

過重労働で問題とされる労働時間は、原則として、法定労働時間、法定休憩時間、法定休日を超える部分になります。

労働基準法では、労働時間、休憩時間、休日を以下のように定めています。

  • 労働時間:休憩時間を除き、原則、1日8時間以内、1週間40時間以内(商業などでは44時間)
  • 休憩時間:労働時間が6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上
  • 休日:毎週1日以上または4週を通じて4日以上

上記の法定部分を超える時間外労働、休日出勤がどのくらいになっているのかを考えて、過重労働を判断していくことになりますが、上記の法定労働時間なども36(さぶろく)協定の締結により、上限ではなくなってしまいますので、実労働時間を正確に把握、認識しておく必要があります。36協定については後述します。

過重労働の社会問題化

過重労働を原因とした過労死などが、日々、報道されているとおり、過重労働は社会問題化しています。最近の主な過重労働事件を見ていきます。

電通

広告大手ですが、この企業について報道された大きな事件は2つあります。

ひとつめは、1991年8 月に入社2年目の男性社員(当時24歳)が自殺したことについて、長時間労働などが原因であるとして遺族が電通を民事で提訴、2000年3月に最高裁は電通の責任を認めて労災認定するとともに、賠償金約を支払うことで結審したものです。この男性社員の1カ月あたりの残業時間は147時間にも及んでいたと言われています。なおこの判例は、過労自殺について企業の安全配慮義務違反を認めた最初のものとなり、政府における過労死の判断基準を見直す契機にもなりました。

そしてもうひとつは、2015年12月に入社1年目の女性社員(当時24歳)が自殺したことについて、2016年9月に労働基準監督署が自殺の1カ月前には過重労働によりうつ病を発症していたとして労災認定、2017年10月に東京簡易裁判所は電通に対して有罪判決を言い渡したものです。(民事では和解成立済)この女性社員のうつ病発症前1カ月の残業時間は105時間であったと言われています。

【参考】1991年 電通事件 最高裁判例/裁判所・裁判例情報
【参考】過去の重要判例 1991年 電通事件最高裁判決/大阪過労死問題連絡会
【参考】「高橋まつりさん過労自殺事件」と26年前の「電通事件」、共通点と相違点/仕事にゅうす
【参考】電通の過労自殺「命より大切な仕事ない」/産経ニュース
【参考】罰金50万円の電通に「業務上過失致死だろ」の声 過労死で刑事責任は問えない?/弁護士ドットコムNEWS

NHK

2017年10月にNHKが自ら発表したものですが、2013年7月に入社9年目の女性記者(当時31歳)が心不全で死亡したことについて、2014年4月に労働基準監督署は過重労働が原因であるとして労災認定していたというものです。この女性記者の亡くなる直前1カ月の残業時間は159時間であったと言われています。

【参考】女性記者の過労死問題で、なぜNHKはウソをついたのか/産経ニュース
【参考】NHKの31歳女性記者が過労死 残業、月159時間/朝日新聞DIGITAL

過重労働による健康障害

過重労働により、労働者の健康は損なわれていきます。過重労働は、まず以下の3つに繋がり、その結果として下記図表1のとおり、様々な健康問題の一因となる可能性を高めます。

労働負担の増加

労働量、労働時間の増加により、休息時間やプライベートな時間を圧迫していき、疲労を回復させる時間を減少させていきます。

休息時間の不足

仕事中に休憩が取れなかったり、帰宅が毎日深夜ともなると、睡眠時間も不足し疲れた体を回復させることができなくなります。そのまま仕事を続けていると、病気につながることはもちろん、事故やケガにつながる可能性も高くなります。

プライベート時間の不足

休日出勤まで続くようになるとプライベートな時間も不足していき、ストレスも解消できなくなります。

【図表1】長時間労働と関連する健康問題

【出典】【独立行政法人労働安全衛生総合研究所】長時間労働者の健康ガイド

過重労働災害リスクの基準時間

過重労働による労働災害の適用に関しては、厚生労働省の認定基準で定められている一定の時間を基準に判断されます。つまり、労働時間がその基準時間の前後ともなれば、過重労働災害のリスクは高まると言えます。

目安ラインは80時間

認定基準では、脳・心臓疾患の発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働があった場合には、業務と発症の関連性が強いとされています。この80時間がひとつの目安ラインと言えます。

危険ラインは100時間

認定基準では、脳・心臓疾患の発症前1カ月間におおむね100時間を超える時間外労働があった場合にも、業務と発症の関連性が強いとされています。

この100時間は、危険ラインと言われることもありますが、80時間の方は評価期間が長いため、どちらも同程度に危険と考えるべきものです。80時間、100時間ともに「過労死ライン」と言われることもあります。

【参考】脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について/厚生労働省

過重労働は違法?

長時間労働という観点で違法性を考える場合、その会社において36(さぶろく)協定という労使協定の締結があるかどうかが重要なポイントになります。

【関連】36協定とは?時間外労働の基礎知識から記載内容、届出のポイントをご紹介/ BizHint HR

36協定の締結

会社が労働者に、1日8時間、1週間に40時間を超える時間外労働や休日出勤を命じるためには、会社側と労働者側の代表者との間でこの36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければならないことになっています。よって、この手続きがない場合の超過勤務命令は違法ということになります。

時間外労働の限度基準

36協定の締結をもって、時間外労働が無制限になるわけではありません。この協定を締結する際には、法定労働時間から延長できる時間を決めておく必要があります。

具体的には、下記図表2の限度時間の範囲内で設定しなければなりません。

【図表2】36協定の延長の限度時間(一般労働者の場合)

【出典】【厚生労働省】時間外労働の限度に関する基準

なお1日の限度時間については労働基準法上定められていないため、会社側と労働者側とで適切な時間を設定することになります。

【参考】36協定届の記入例/東京労働局

特別条項付き36協定

36協定では、上記のように延長できる限度時間が決められてはいるものの、業務上の特別な事情があれば、特別条項付きの36協定とすることで、さらに延長させることが可能になっています。

原則としての延長時間(限度時間以内)を超えるためには、あくまで一時的、突発的なものとして、1年の半分は超えることができなかったり(逆に1年間に6回は月45時間を超えられるということ)、割増賃金率を法定割増賃金率(2割5分以上)よりも高くする努力義務があるなど、一定の条件があります。

限度基準の適用除外

36協定の限度基準がそもそも適用にならない事業や業務もあります。以下については適用除外になります。(36協定の締結、届け出は必要です。)

  1. 工作物の建設等の事業(建設業など)
  2. 自動車の運転の業務(運送業など)
  3. 新技術、新商品等の研究開発の業務(企業の研究開発部門など)
  4. 厚生労働省労働基準局長が指定する事業または業務(ただし、1年間の限度時間は適用)

なお、上記の事業、業務は、その特殊性から限度基準を適用除外にされているだけであって、36協定の適用そのものを除外されているわけではありません。当然ながら、過重労働とならないよう適正な時間管理は求められます。いわゆる「管理監督者」と言われる者(社長、役員など)が、36協定そのものの適用がないこととは整理が異なります。

限度基準を超えた場合の罰則

特別条項がない場合で、原則としての延長時間(限度時間以内)を超えた場合や、特別条項がある場合に、その設定した延長時間を超えた場合には、労働基準法第119条により、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。

適切な割増賃金の支払

過重労働を考えるうえで、その長時間労働による健康問題のほか、その時間に見合った割増賃金が正しく支払われているのかという点も問題になります。

割増賃金率とは

割増賃金率とは、法定労働時間を超える労働、法定休日、深夜に労働があった場合に支払わなければならない通常の賃金に対する割合になりますが、具体的には下記図表3のとおりです。

【図表3】割増賃金率

【出典】【東京労働局】しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編

中小企業の適用猶予措置

上記、図表3中の「時間外労働が1か月60時間を超えたとき」における割増賃金率「50%以上」については、平成22年4月に労働基準法が改正された際に導入されたものですが、現状は大企業のみに適用されており、中小企業は当面の間、適用が猶予されています。

なお中小企業の定義については、下記図表4のとおりです。

【図表4】猶予される中小企業の範囲

【出典】【厚生労働省】2.法定割増賃金率の引上げ

企業の取るべき過重労働対策

過重労働による健康障害の防止に関しては、政府において、企業の講ずべき措置がまとめられています。

過重労働による健康障害防止のための総合対策

過重労働の排除、労働者に負荷のかからない職場環境づくりには、まずは事業主での対策が不可欠です。そこで、政府では事業主が講ずべき措置を明確にし、リーフレットなどを作成するなど、その推進に努めています。

【参考】過重労働による健康障害防止のための総合対策について/厚生労働省
【参考】過重労働による健康障害を防ぐために/厚生労働省

1.時間外・休日労働時間の削減

過重労働においては、何よりもまず長時間労働が問題になりますので、企業は、時間外労働、休日労働の時間を正確に把握したうえで、その削減に取り組む必要があります。

適正な勤務時間の管理

時間外労働、休日労働の時間を正確に把握するためには、使用者が労働者毎の勤務時間を管理できていなければなりません。

政府が平成29年1月に定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、使用者の適正な確認、記録方法として、原則としては「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録」などの客観的な記録により確認するべきであるなど、その他適正な勤務時間管理のための手法が示されています。

【参考】労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン/厚生労働省

【関連】勤怠管理の意味とは?方法やクラウド・ソフトの特徴など / BizHint HR

具体的な対策内容

社内各労働者の時間外労働、休日労働の時間を36協定とも照らして確認したあと、それらの削減に向けた取り組みを実施します。例えば、以下のような対策が考えられます。

  • 時間外労働、休日労働が多い部門、労働者の業務内容や量の見直し
    →業務を分散させることにより、特定部門、特定労働者の過重な負荷を減らす。
  • 部門毎の適正な労働者の配置
    →マッチングした労働者を配置することにより、業務効率化、生産性向上を図る。
  • 年次有給休暇の取得促進
    →計画的に取得させるなど、年次有給休暇を取得しやすい環境をつくる。
  • 衛生委員会などでの時間外労働に関する定期的な審議
    →定期的なチェックを行うことにより、時間外労働の常態化を防ぐ。
  • ノー残業デー・ウィークなどの導入
    →計画的に業務を遂行させ、オンとオフのメリハリを付けさせる。

【関連】「生産性向上」は日本経済の課題!知っておきたい法律や改善方法、導入事例をご紹介/ BizHint HR
【関連】「ノー残業デー」とは?働き方改革の一つの手段?メリットデメリットを合わせてご紹介/ BizHint HR

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

この憲章は、平成19年12月の関係閣僚、経済界、労働界、地方公共団体の代表などからなる官民トップ会議において策定されたもので、日本は以下のような社会を目指すべきとし、労使、国民、国、地方公共団体の果たすべき役割などをまとめたものです。

  1. 就労による経済的自立が可能な社会
  2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
  3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会

【参考】仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章/内閣府

【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?企業の取り組み事例と実現のポイント/ BizHint HR

仕事と生活の調和推進のための行動指針

この行動指針は、上記の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」とあわせて策定されたもので、目指すべき社会の実現のために、労使、国民、国、地方公共団体に求められる具体的な取り組みなどをまとめたものです。

なお、そこでは2020年までに行うべき数値目標も挙げられており、例えば、年次有給休暇の取得率については、70%が目標とされています。

【参考】仕事と生活の調和推進のための行動指針/内閣府

2.年次有給休暇の取得促進

過重労働による健康障害防止のための方策として、事業者には、年次有給休暇の取得促進も求められています。

年次有給休暇については、前述の「仕事と生活の調和推進のための行動指針」においても取得率が目標として掲げられていますので、特に中小企業においては社内環境の整備が求められています。

年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、労働の義務がある日にその義務を免除し、有給とすることで、身体および精神的な休養を取ることができるようにした制度で、労働基準法第39条により定められているものです。

これを付与されるための条件は以下の2つです。(もちろん、この条件より緩い基準で会社が付与することは可能です。)

  • 雇い入れの日から6カ月が経過していること。
  • 算定期間の8割以上、出勤していること。

通常の労働者の具体的な付与日数は、下記、図表5のとおりです。

【図表5】有給休暇の付与日数(パートタイム労働者を除く通常の労働者の場合)

【参考】年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています/厚生労働省

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説/ BizHint HR

3.健康管理体制の整備

過重労働による健康障害防止のための方策として事業者は、社内産業医の選任、健康診断の実施など、健康管理体制を整備しなければなりません。

産業医・衛生管理者等の選任、衛生委員会の設置

事業者は、労働安全衛生法に基づいて、以下を実施する必要があります。

  • 労働者の健康管理のため、事業場において選任した産業医、衛生管理者、衛生推進者などに健康管理に関する職務を適切に行わせる。
  • 産業医を選任する義務のない事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)では、地域産業保健センターの産業保健サービスを活用する。
  • 衛生委員会などを設置し、労働者の健康管理について、適切に審議調査する。

健康診断の実施

事業者は、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法に基づいて、以下を実施する必要があります。

  • 常時使用する労働者に対し、1年以内の1回、定期に健康診断を実施する。
  • 深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6か月以内に1回の特定業務従事者健康診断を実施する。
  • 血圧など一定の健康診断項目に異常の所見がある労働者には、労災保険制度により二次健康診断等特定保健指導に関する給付(二次健康診断等給付)制度を活用する。
    (これに該当する労働者は、自己負担なく受診することができます。)

健康診断実施後の措置

事業者は、労働安全衛生法に基づいて、健康診断において異常の所見があった者については、健康保持のために必要な措置についての医師の意見を聴き、必要な事後措置を講じる必要があります。

過重労働者への面接指導

事業者は、労働安全衛生法に基づいて、長時間労働者に対して、医師による面接指導を実施しなければならない場合があります。また、必要に応じて、医師による面接指導または面接指導に準ずる措置(保健師による保健指導など)を実施するよう努める必要があります。

細かな実施ルールがありますが、簡単に整理すると以下のようになります。

  • 時間外・休日労働時間が月100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合には、該当労働者に対して、医師による面接指導を実施する。
  • 時間外・休日労働時間が月80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められ、または、健康上の不安を有している労働者から申し出があった場合には、該当労働者に対し、医師による面接指導または面接指導に準ずる措置を実施するよう努める。

以上のように、月100時間を超えている場合には、医師による面接指導の実施が義務とされ、月80時間を超えている場合には、医師による面接指導または面接指導に準ずる措置の実施が努力義務とされています。

4.過重労働による疾病発生後の措置

事業者は、過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、産業医などの助言を受け、原因の究明および再発防止の徹底を図らなければなりません。

原因の究明

労働時間や労働環境の状況、精神的緊張の度合い、健康診断及び面接指導等の結果などについて、多角的に原因を究明しなければなりません。

再発防止のためには

上記で明らかにされた疾病発生の原因や、衛生委員会などの調査審議も踏まえて、再発防止対策を樹立し、その対策を適切に実施しなければなりません。

専門家の活用

疾病発生後の措置を講じるにあたっては、産業医の助言を受けるとともに、必要に応じて保健衛生、労働衛生工学に関する専門家である労働衛生コンサルタントの活用を図ることも必要とされています。

「過重労働撲滅特別対策班」とは

厚生労働省が2015年4月に発足させた、過重労働が疑われる企業の調査、監督指導を行うための過重労働対策組織です。違法な企業を書類送検する権限も持っており、実際に電通、ABCマート、ドン・キホーテなどを書類送検しています。通称「かとく」と言われています。

発足の経緯

厚生労働省では、上記対策班の発足前に「長時間労働削減推進本部」を省内に設けて悪質企業に対する監督指導などを行っていましたが、この取り組みをさらに強化するために、過重労働撲滅特別対策班が発足しました。

組織について

過重労働撲滅特別対策班およびその周辺の組織体制は以下のとおりです。

過重労働撲滅特別対策班の設置場所

発足当初は東京労働局と大阪労働局の2カ所に設置されていましたが、2016年4月に厚生労働省内にも設置され、広域捜査の指導調整を行うなど「司令塔」の役割を果たしています。

過重労働特別監督監理官

2016年4月に過重労働撲滅特別対策班が厚生労働省内に設置されたのと同時期に、この過重労働特別監督管理官が全国47都道府県労働局に置かれることになり、これまで以上に管轄労働基準監督署による企業への立ち入り検査が行えるようになりました。

過重労働特別対策室

2017年4月に厚生労働省内の過重労働撲滅特別対策班から組織変更を行ったものです。それまでは、6人が他業務と兼任して対策に当たっていましたが、全国的な指揮命令系統を強化するため、室長以下5人の専任体制として過重労働特別対策室としたものです。

構成メンバー

過重労働撲滅特別対策班のメンバーはすべて労働基準監督官で構成されており、東京7人、大阪6人が専従として配置されています。メンバーは、基本的に、監督官歴10年以上のベテランであり、特に長時間労働問題に強い者が多いと言われています。厚生労働省内の対策室の体制については前述のとおりです。

過労死防止にまつわる法律

昨今の過労死が多発している状況を受け、政府では、その対策法も成立、施行させています。

過労死等防止対策推進法

平成26年11月に施行された法律で、過重労働による脳・心臓疾患を原因とする死亡や強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、また、過重労働による脳・心臓疾患もしくは精神障害(以上のくくりでこの法律上、「過労死等」とされています。)を防止するために、国、地方公共団体、事業主、国民の責務をまとめたものです。

具体的な対策の柱としては、国の過労死等に関する調査研究、国および地方公共団体の啓発活動、相談体制の整備、民間団体の活動に対する支援などが挙げられています。

過労死等防止対策推進協議会

上記、過労死等防止対策推進法では、政府は、過労死等防止対策を効果的に推進するため、対策に関する大綱を定めなければならないとされていますが、その際の諮問機関として置かれているのが、この過労死等防止対策推進協議会になります。

委員は20人以内とされ、過労死等により死亡した者の遺族を代表する者、労働者を代表する者、使用者を代表する者、過労死等に関する専門的知識を有する者のうちから厚生労働大臣が任命することとされています。

【参考】過労死等防止対策に関する法令・過労死等防止対策推進協議会/厚生労働省

広報サイトの公開

厚生労働省や関係機関のホームページでは、過労死から労働者を守るための多くの個別サイトが公開されています。厚生労働省で取りまとめている「STOP!過労死」というものもありますが、個別に説明していきます。

【参考】STOP!過労死/厚生労働省

メンタルヘルス対策の推進

ストレスの蓄積は、うつ病などのメンタルヘルスの不調へとつながる可能性があります。平成27年12月から、労働者のストレスチェックや面接指導の実施が各企業において義務づけられた(従業員50人未満の事業場は当面の間は努力義務)こともあり、事業主はメンタルヘルス対策を積極的に推進し、各労働者においてもセフルケアに努める必要があります。

ストレスチェック

厚生労働省では、企業での労働者ストレスチェック用システムとして、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」というものを公開しています。各労働者にチェックさせることで、高ストレス者を自動的に判定できたり、チェック結果を集計、分析する機能もあります。

もう少し簡易なチェックを実施したい場合には、同じく厚生労働省が開設している「こころの耳」というサイトがあります。こちらはメンタルヘルスのポータルサイトになりますが、WEB上でチェックすることが可能です。

【参考】「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト/厚生労働省
【参考】5分でできる職場のストレスセルフチェック/こころの耳:厚生労働省

【関連】ストレスチェック義務化の対象者・スケジュールを徹底解説 /BizHint HR

ストレスチェック制度サポートダイヤル

各企業での労働者のストレスチェックや面接指導の実施が義務づけられたことを支援するため、独立行政法人労働者健康安全機構では、各企業のチェック実施者である産業医や、事業主などからの相談を受け付ける「ストレスチェック制度サポートダイヤル」を開設しています。

【参考】ストレスチェック制度サポートダイヤル/独立行政法人労働者健康安全機構

産業保健関係助成金

独立行政法人労働者健康安全機構では、各企業におけるストレスチェックや面接指導の実施、また、職場の環境改善などに関して、以下の助成制度を設けています。平成29年度の助成額としては、おおむね各5万円~10万円程度とされています。

  • 職場環境改善計画助成金(従業員数の制限なし)
  • 心の健康づくり計画助成金(従業員数の制限なし)
  • ストレスチェック助成金(従業員50人未満の事業場が対象)
  • 小規模事業場産業医活動助成金(従業員50人未満の事業場が対象)

【参考】平成29年度 産業保険関係助成金のご案内/独立行政法人労働者健康安全機構

産業保健総合支援センター

独立行政法人労働者健康安全機構が各都道府県に設置している機関です。ここでは各企業の産業医、衛生管理者、企業の労務管理担当者など対して、メンタルヘルス対策をはじめとする産業保健に関する相談、研修、情報提供などの支援を原則、無料で行っています。

【参考】産業保健総合支援センター/独立行政法人労働者健康安全機構

パワハラ対策の導入

職場のパワハラなどを理由とする精神障害での労災適用も増えており、企業においてはその対策も求められています。この問題に関しては、以下のようなサポートサイトがあります。

あかるい職場応援団

厚生労働省が開設しているパワハラ対策についての総合情報サイトです。パワハラ被害者、管理職、人事担当者の別にパワハラ状況をチェックして、対策を検討できるようになっています。

【参考】あかるい職場応援団/厚生労働省

パワーハラスメント対策導入マニュアル

上記のサイト内にアップされているもので、企業での必要な取り組みや、労働者からの相談対応法なども詳細にまとめられています。社内研修用の資料なども収録されており、すぐに導入できるような内容になっています。

【参考】パワーハラスメント対策導入マニュアル/あかるい職場応援団:厚生労働省

労働条件相談窓口の設置

労働条件や健康管理に関する相談は以下の窓口で受け付けています。(開庁時間は、すべて平日8時30分から17時15分までです。)

都道府県労働局労働基準部監督課

都道府県毎に設置されていて、全国に47局があります。

【参考】都道府県労働局所在地一覧/厚生労働省

労働基準監督署

全国に321署及び4支署があります。

【参考】全国労働基準監督署の所在案内/厚生労働省

総合労働相談コーナー

各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの380カ所に設置されています。

【参考】総合労働相談コーナーのご案内/厚生労働省

働き方・休み方見直し取組支援

厚生労働省では、適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することが、労働者の仕事に対する意識やモチベーションを高め、業務効率の向上にもつながるとして、働き方、休み方の改善にも力を入れています。

働き方・休み方改善コンサルタント

ワーク・ライフ・バランスの実現のため、働き方や休み方の見直しに取り組む場合には、各都道府県労働局に置かれている「働き方・休み方改善コンサルタント」に原則、無料で相談できます。個別訪問や社内説明会の講師として来てもらうことも可能です。

【参考】働き方・休み方改善コンサルタント/厚生労働省

働き方・休み方改善ポータルサイト

こちらは、厚生労働省が開設している、働き方・休み方改善のためのポータルサイトです。企業、社員別に、現状の働かせ方、働き方や、休ませ方、休み方が適切なものであるのかなどを自己診断できたり、他企業の改善事例などを検索することもできます。

【参考】働き方・休み方改善ポータルサイト/厚生労働省

過労死防止活動団体

全国には、過労死で亡くなられた方の遺族や弁護士などで組織される、過労死防止活動団体がいくつもあります。

過労死等防止対策推進全国センター

2014年10月に過労死を防ぐための啓発活動や労働環境の相談を行うために、過労死が原因で亡くなられた方の遺族や弁護士などが設立した組織です。過労死などに関して、サイト内から無料で相談できたり、講演を依頼することなども可能です。

【参考】過労死等防止対策推進全国センター

全国過労死を考える家族の会

1989年に全国各地で「過労死を考える家族の会」が結成されはじめ、その後、1991年11月に各地の団体が結集したものが「全国過労死を考える家族の会」です。過労死防止の取り組みを継続して行っています。

【参考】全国過労死を考える家族の会

過労死弁護団全国連絡会議

1988年4月に大阪で弁護士が集まって、「過労死110番」として過労死に関する電話相談受け付けを開始し、その後、相談受け付けを全国に広げ、同年10月に結成されたものが「過労死弁護団全国連絡会議」です。電話による相談を受け付けています。

【参考】過労死110番/過労死弁護団全国連絡会議

まとめ

  • 政府においては、時間外労働の上限規制や、違法残業の罰則強化など、法律面でのさらなる見直しが望まれる。
  • 過重労働に関しての政府でのルールづくりや規制が強化されても、各企業の意識が見直されない限りは労働環境の改善は難しい。
  • 企業経営者は、過重労働により失うことになる従業員の健康はもちろん、企業価値としても大きなマイナスになることを十分に理解し、早急に対策を講じなければならない。
  • 過重労働を防ぐため、各企業においては、時間外労働・休日労働の削減、労働者の健康管理体制の整備を進めなければならない。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計190,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

過重労働の関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

安全衛生管理の記事を読む

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次