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2018年1月20日(土)更新

ラインケア

ラインケアとは、管理監督者が実施主体となり、職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応などを行っていく、職場のメンタルヘルス対策の1つです。「4つのケア」の中の1つですが、この中でも、労働者自身がストレス対策を行う「セルフケア」と同様に、「ラインケア」が特に重要だと考えられています。当記事では、ラインケアが重要視される理由や、ラインケアを充実させるために理解すべきポイント、具体的な実施内容や研修についても紹介します。

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ラインケアの意味

ラインとは、指揮・命令系統に属する立場、つまり管理監督者のことです。そして、ラインケアとは、管理監督者が実施主体となり、職場環境等の状況把握と改善、労働者からの相談対応などを行っていく、職場のメンタルヘルス対策の1つです。

「4つのケア」について

2000年代以降、世界経済は急速にグローバル化が進み、市場は複雑性を増し、変動や競争も激化しています。それに伴い、仕事や職場環境において、不安や悩み、ストレスを強く感じる労働者の割合も高くなっています。企業には適切なメンタルヘルス対策の推進が求められています。

厚生労働省は、メンタルヘルス対策として大きく次の4種類のケアがあると示しており、これらはまとめて「4つのケア」とも呼ばれます。

セルフケア

労働者本人が実施主体となるメンタルヘルスケアです。ストレスやメンタルヘルスに関する知識を正しく習得し、自らストレスに気づいて対処していきます。

ラインケア

管理監督者が実施主体となるメンタルヘルスケアで、「ラインによるケア」とも呼ばれます。詳細は次の「管理監督者が行うラインケア」で解説します。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

人事担当者や産業医などが実施主体となるメンタルヘルスケアです。セルフケア及びラインケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行います。

また、企業のメンタルヘルス増進を目的とした「心の健康づくり計画」の中心的な実施主体となります。具体的には以下のようなことを実施します。

  • 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
  • 個人の健康情報の管理
  • 事業場外資源とのネットワーク形成や窓口役としての業務
  • 事業場内産業保健スタッフとしての休職者の職場復帰支援

事業場外資源によるケア

事業者外の専門機関や専門家などが実施主体となるメンタルヘルスケアです。主に事業場内産業保健スタッフ等に対し情報提供を行ったり、相談内容を会社内には知られたくない労働者からの相談に対応したりといった役割があります。

「セルフケア」「ラインケア」が特に重要とされる理由

4つのケアの中でも、「セルフケア」「ラインケア」が特に重要だと考えられています。

一定規模の企業となると、人事担当者や経営者のみで社員の状況を確認することは非常に困難です。また、メンタルヘルスケアに関しては、早期発見・早期対処が重要といわれています。そのため、自律的にメンタルヘルスケアができるような仕組みが必要とされます。

従って、自分自身をケアできるようにするための「セルフケア」、身近な管理者が客観的にサポートする「ラインケア」が重要となるのです。

管理監督者が行うラインケア

前述の通り、ラインケアとは「4つのケア」の一つで、管理監督者が実施主体となります。普段から労働者とコミュニケーションをとり、労働者それぞれの個性や特徴、労働環境などを把握した上で、相談対応を行っていきます。その他職場環境改善に取り組んだり、休職希望者へ対応したり、職場復帰への支援を行ったりします。

管理監督者とは

これまで「ラインケア」は管理監督者が実施主体であると解説してきましたが、管理監督者とはどのような人のことなのでしょうか。

管理監督者とは、経営者と一体的な関係にある立場の人物を意味します。管理監督者には、使用者である事業主(経営者)から、労働者である従業員に対して、指揮や命令を行うための権限が委譲されています。その権限に併せて、部下である従業員の健康を守る義務も課されています。この義務を果たすためにも、管理監督者はラインケアを実施する義務と責任があるのです。

【参考】こころの耳:e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」

【関連】BizHint HR:「管理監督者」の定義とは?労働基準法の適用範囲や注意点、判例まで詳しく解説

ラインケアの重要性

ラインケアはなぜ重要なのでしょうか。

健やかな組織作り

ラインケアは、健やかな組織作りに役立ちます。

ビジネス環境においては、納期の設定や難易度の高い仕事など、適度なストレスはつきものであり、また、適度なストレスは労働者の生産性や創造性を高める大切な要因であるともいえます。ですが、大きなストレスを抱える職場環境では、高い生産性や創造性を発揮しながら業績を挙げ続けていくことは、非常に困難といえるでしょう。

ラインケアが上手く機能すると、労働者は過剰なストレスから解放され、仕事に打ち込みやすい状態を作ることができる可能性があります。のびのびと働くことができ、活発なコミュニケーションが生まれていくような、健やかで風通しの良い職場を作ることができるのです。

企業のリスクマネジメント

ラインケアは、企業のリスクマネジメントにも重要な役割を果たします。

前述の通り、使用者や管理者には指揮・命令を行う権限がある代わりに、労働者の心身の健康を守る義務が課せられています。これを「安全配慮義務」といいます。

《労働契約法第5条》
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

【引用】労働契約法第5条

企業においてメンタル不調者が発生した場合、企業側がこの「安全配慮義務」に違反していたと判断され、責任が発生する可能性があります。そのような事態を避けるため、企業のリスクマネジメントとして、総合的なメンタルヘルス対策、そしてラインケアが重要とされるのです。

ラインケアの実施すべき内容

ラインケアで実施すべき内容は、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

職場環境の把握と改善

一つには、職場環境の把握と改善が挙げられます。具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

「ストレス要因」をチェックする

一般社団法人日本産業カウンセラー協会が運営する「こころの耳」(平成29年度厚生労働省委託事業)では、仕事に関するストレス要因を、「周囲からの支援」「仕事の自由度」「仕事の要求度」の3つに分類できるとしています。そして、「周囲からの支援」「仕事の自由度」が小さく、「仕事の要求度」が大きいほど人はストレスを感じやすい、と説明しています。

【図表1】職場ストレスのベクトル

【出典】こころの耳:e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」

職場環境全体の雰囲気、及び可能な限り部下一人ひとりのストレス要因をチェックし、改善策を検討できると良いでしょう。

なお、ストレス要因のチェックに関しては、2015年12月から義務付けされた「ストレスチェック制度」についても理解しておくことも有効です。

ストレスチェック制度では、基本的に管理監督者が部下一人ひとりのストレス内容を把握することはできません。ですが、高ストレスに該当した労働者本人からの申し出を元に、労働者が医師による面接指導を受けたり、統計的に集計された結果を事業者が受け取り、職場改善の参考材料としたりすることができます。

【関連】BizHint HR:ストレスチェック制度とは?概要やチェックの流れ、罰則、助成金まで徹底解説

部下の「いつもとの違い」に注目する

「いつもと比べて変わったことがないか」といった視点で部下をチェックします。詳細は後述の「部下の健康状態の把握」の項で解説します。

職場環境を総合的に見直す

その他、職場環境の改善には、例えば勤務時間や有給消化率、裁量権や仕事の達成感の存在、職場の温度や湿度、採光や騒音、人間関係など、様々な視点が挙げられます。総合的な課題を把握し、改善点を考えたい場合は、一つ一つ、しらみつぶしにチェックしていくのも良いかもしれません。

例えば、東京産業保健総合支援センターによる「職場環境改善のためのヒント集」(メンタルヘルス アクションチェックリスト)などが参考になります。

【図表2】「職場環境改善のためのヒント集」(メンタルヘルス アクションチェックリスト)

【出典】東京産業保健総合支援センター 調査研究:職場のメンタルヘルス対策~一次予防の重要性~

部下との面談(相談・指導など)

ラインケアでは、部下一人ひとりとの面談も重要となります。

面談には、以下の点がポイントとして挙げられます。

健康な人も含めて定点観測する

職場環境を観察して、異変に気づいた場合はもちろんですが、それ以外のタイミングでも、ラインケア的な視点で部下一人ひとりの様子をチェックできるような機会を持つことが大切です。

例えば評価面談や1on1ミーティングなどにおいて、メンタルヘルスケアとしての観点も盛り込み、定点観測をしていきましょう。

【関連】BizHint HR:人事考課の意味とは?評価との違いと、ポイントをわかりやすく解説
【関連】BizHint HR:1on1の意味とは?話す内容や注意事項、効果を最大化するポイントをご紹介

声をかける

部下が上司に相談をもちかける頃には時すでに遅く、状態が悪化してしまっているケースも見受けられます。早期発見、早期対処を行うためにも、管理監督者は日ごろより部下に気を配り、積極的に声をかけるようにしましょう。

リラックスした雰囲気をつくる

上司と部下の関係にはどうしても緊迫感が伴いがちです。ラインケアの面談時には、静かで落ち着いた、声が周りに聞こえにくいような環境を用意し、管理監督者も穏やかな表情で接するよう努めるなど、できるだけリラックスした雰囲気を作っていくことが大事です。

傾聴する

面談時には、特に積極的な傾聴が重要です。傾聴には、話し手の心を開き、通常の聴き方では気がつかなかった相手の考えや感情が理解できる効果があります。

相手の話をしっかり聴かないまま、励ましや説教といったコミュニケーションをとることは逆効果に働くことが多いです。ラインケアの面談時には、まずは傾聴に徹することが重要です。

【関連】BizHint HR:「傾聴」の意味とは?傾聴力が必要な理由や基本スキル&技法を解説

対処する

傾聴した内容を元に、対処を行います。対処には大きくわけて「上司としてのアドバイスを行う」か「人事担当者や専門家への相談を促す」の2つが挙げられます。

相談に対して、管理監督者が全て対処しなければならないわけではありません。特に健康面に関わる内容などは、話を聴いた上で、人事担当者や専門家への相談を促すことも一つの手段と言えます。

また、「精神的な悩みを他人に相談することに抵抗がある」「家族や同僚の目が気になる」といった考えから、部下が産業医や専門家への相談に抵抗を示す場合があります。この場合、無理強いをしたり、相談に行くことを指示した後放置したりすると、問題が悪化してしまう可能性があります。この場合は本人に伝えた上で、管理監督者自身が人事担当者や専門家に直接相談するようにしましょう。

休職者の職場復帰への支援

ラインケアとは、部下の心身の健康状態に気を配り、悪化を未然に防ぐことで、休職者を少なくするメンタルヘルス対策であるともいえます。ですが、休職者が出てしまった場合は、スムーズに職場復帰できるようにサポートする役割もラインケアにはあります。

管理監督者としては「復帰したからには即戦力としてバリバリ活躍してほしい」という気持ちを持つ方もいるかもしれません。しかし、いきなり休職前と同じパフォーマンスをすぐに発揮することは無理な注文であるともいえます。復帰後しばらくは助走期間であると割り切るほうが良いでしょう。

また、復帰者は職場の人間関係や仕事の失敗など、様々な心配をしながら復帰します。管理監督者は復帰者の理解者となれるよう、継続的な信頼関係の構築に努めるようにしましょう。

復帰者に対しての配慮事項としては、以下のような項目が例として挙げられます。

  • 特別な理由がない限り、基本的には元の職場に戻す
  • 納期の厳しい仕事やトラブル処理、顧客との交渉といった仕事はしばらくの間見送る
  • 短時間勤務の推奨(但し過度に業務内容を軽減すると逆効果の場合も)
  • 残業や深夜業務の禁止
  • 通院の奨励(長期間に渡る定期的な診療が必要な場合が多い)

ラインケアのポイント

ラインケアのポイントについて解説します。

部下の健康状態の把握

管理監督者は、部下の健康状態を日頃から観察するよう心がけてもらえることが重要となります。不調を早期発見するためには、部下の「いつもとの違い」に注目することが有効です。

例えば、以下のような様子は不調のサインであるといえます。

  • 遅刻、早退、欠勤の増加
  • 残業や休日出勤が増える
  • 表情に活気がない、元気が見られない
  • 不注意やミスが増える
  • 服装が乱れていたり、不潔であったりする
  • 急激に痩せたり、太ったりする
  • 口数が急に減る、もしくは増える
  • 対人トラブルが増える

文字にするとわかりやすい「いつもとの違い」ですが、実際は普段との違いがわかりにくいケースもあるでしょう。可能な限り、いつもの部下の状況を理解しておくようにし、異変に気がつけるようにしましょう。

はやめの対処が重要

メンタルヘルス対策には、早期発見、早期対応が重要といわれています。メンタルヘルスの不調が軽度なうちに治療を受けたり対処したりする方が、一般的に回復が早いためです。

逆に重度の不調の場合は長期間に渡る治療が必要となり、労働者本人や家族、職場にも負担が大きくなってしまう可能性があります。このように、ラインケアの充実により早期対応が取れることは、労働者と使用者双方にとってメリットがあるのです。

部下の意思を尊重する

自分の意思が無視された上司からの命令は、誰にとっても大きなストレスとなることでしょう。ラインケアのプロセスにおいて、上司と部下間でのストレスが発生してしまうと、それ自体が負荷となってしまいます。

例えば医師への相談に無理やり行かせたり、本人の了承無く症状を誰かに伝えたりすることは、大きく本人を傷つけてしまうことにもつながります。ラインケアのプロセスにおいては、部下の意思をできるだけ尊重するようにしましょう。

個人情報保護への配慮

ラインケアのプロセスでは、部下の健康情報や個人情報など、プライバシーに関する情報を多く知ることになります。その為、管理監督者は、部下の健康情報を含む個人情報の保護に努めなければなりません。

「ラインケア研修」について

ここまでは、ラインケアのポイントについて解説してきました。具体的にラインケアの知識や手法を管理監督者に習得させ、組織に浸透させるためには「ラインケア研修」が有効です。ここからはラインケア研修について解説します。

研修の目的

研修実施の目的について解説します。

メンタルヘルス基礎知識の習得

ラインケア研修実施の目的としては、まずメンタルヘルスに関する基礎知識の習得が挙げられます。

メンタルヘルスに関しては徐々に理解が広まってきたとはいえ、まだまだメンタルヘルスに関しては誤解や偏見が多く見受けられます。また、デリケートな内容を扱うため、ラインケアにはしっかりした基礎知識の習得が必要とされます。

管理監督者の教育

管理監督者の教育を行うことも、ラインケア研修の目的の一つです。

内容としては、部下の「いつもとの違い」の気づき方や、ストレスチェックの方法、面談の仕方や専門家へのつなぎ方など、ラインケアのプロセスに従った内容を学んでいきます。

また、管理監督者自身も、ストレスを大きく感じやすく、セルフケアが必要な対象です。そのため、管理者自身のストレスケアのポイントについてもレクチャーしてくれる研修もあります。

研修内容の一例

これまで解説してきた内容を踏まえ、研修内容としては例えば以下のようなコンテンツを入れられると良いでしょう。

  • メンタルヘルスに関する基礎知識のレクチャー
  • 部下や管理監督者自身のセルフケア方法の習得
  • 職場環境の状況把握や声かけのケーススタディ
  • 面談や傾聴のワーク、トレーニング
  • 復帰支援の具体的手法とポイントのレクチャー

研修会社紹介

ラインケア研修をサービスとして実施している研修会社を紹介します。

株式会社インソース

株式会社インソースは東証一部上場の研修会社です。株式会社インソースの特徴として、多くの講座において「公開講座」「講師派遣型研修」「eラーニング」の3種類の手法で研修を提供していることが挙げられます。

株式会社インソースの提供するラインケア研修では、実際に現場でメンタルヘルスケアの経験を積んだ講師による講義とワークにより、より実践的な知識を学ぶ機会があります。

【参考】研修会社インソース~講師派遣型研修/公開講座:メンタルヘルス研修~管理職向けラインケア編(1日間)

中央労働災害防止協会

中央労働災害防止協会とは、労働災害の絶滅を目指すことを目的とし、1964年に設立された組織です。メンタルヘルスケア領域では、各種研修会やセミナーの開催、講師派遣、ストレス調査などを実施しています。

中央労働災害防止協会の提供する研修プログラムでは、メンタルヘルス対策と管理監督者の役割に関するレクチャー、傾聴に関する講義と実習が中心となっています。

【参考】中災防:管理監督者・職場リーダーのためのラインケアセミナー

株式会社ホリスティックコミュニケーション

株式会社ホリスティックコミュニケーションは2008年にスタートした、大阪を本社とした会社です。

ラインケアに関する体験型研修にくわえ、管理監督者自身のセルフケアについても学ぶ機会があるようです。

【参考】株式会社ホリスティックコミュニケーション:ラインケア研修

まとめ

  • ラインケアとは管理監督者が実施主体となるメンタルヘルス対策のこと
  • 普段から労働者とコミュニケーションをとり、労働者それぞれの個性や特徴、労働環境などを把握した上で、相談対応やフォローを行っていく
  • 部下の個人情報を扱ったり、むやみな励ましは逆効果だったりと、正しい理解が必要。ラインケア研修を充実させるなど、管理監督者への教育をしっかり実施することも重要である

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