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平成29年度のストレスチェック助成金は?要件や申請方法などもご紹介

BizHint 編集部 2017年11月30日(木)掲載
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近年、うつ病に代表されるメンタルヘルス不調に陥る労働者が急増していることが社会問題化しています。メンタルヘルス不調者が急増している原因は、労働力不足による労働者一人当たりの負荷の増大や職場での人間関係の複雑化にあると言われています。そのため、一定規模以上の事業場を対象にした従業員に対するストレスチェックの実施が2015年12月から義務付けられ、企業のメンタルヘルス対策を後押しするための支援制度としてストレスチェック助成金が存在します。

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ストレスチェック助成金とは

ストレスチェック助成金(「ストレスチェック」実施促進のための助成金)は、ストレスチェックを実施した事業者や、ストレスチェック実施後の面接指導等を受けさせた事業者に対して支給される助成金です。

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、労働者のストレス有無の検査と、検査後の医師による面接指導等を受ける機会の提供を事業者に義務付けた、労働安全衛生法の改正により生まれた制度です。

ストレスチェックの対象事業場

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェックを必ず実施する必要があります。事業場というのは、事業を行う拠点単位のことを言います。

常時使用する労働者数が50人未満の事業場に対しては、努力義務という扱いになっています。

ストレスチェックの実施時期

対象となる事業場は、毎年1回以上、使用する労働者全員に対してストレスチェックを受ける機会を与える必要があります。実施する時期についての決まりはありませんが、精神面における健康を意味する《メンタルヘルス》対策を徹底することを考えた場合、毎年同じ時期に実施することが望ましいです。

ストレスチェックの実施者

産業医が行うことが望ましいとされていますが、外部の機関に委託する形で実施することも可能です。

ストレスチェックの実施ルール

ストレスチェックは、希望する労働者だけが受けることができ、希望しない者を強制的に受けさせることはできませ。また、実施者は結果を事業主に報告する義務はなく、事業主は労働者の同意なく結果を入手することはできません。

さらに、ストレスチェックを受けた労働者の中で希望する者は、結果に基づいた面接指導を受けることができます。

ストレスチェックの報告

常時使用する労働者数が50人以上の事業場の事業主は、ストレスチェックの実施結果を、労働基準監督署に報告する必要があります。報告義務を怠った場合は、50万円以下の罰金に処せられます。

【参考】ストレスチェックの義務化/ドクタートラスト

【関連】ストレスチェック義務化の対象者・スケジュールを徹底解説/BizHint HR
【関連】ストレスチェック制度とは?概要やチェックの流れ、罰則、助成金まで徹底解説/BizHint HR

ストレスチェック助成金の目的

ストレスチェック助成金は、法律上努力義務とされている労働者数50人未満の事業場に、自発的にストレスチェックを実施させることで、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を推進することを目的としています。

ストレスチェック助成金の要件

ストレスチェック助成金は、以下の5つの要件を満たした事業場が受給することができます。

労働保険の適用要件

ストレスチェック助成金を受給するためには、申請事業場に労働保険が適用されている必要があります。

労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険のことを言います。正社員やアルバイトなどといった雇用の形態とは関係なく、労働者を1人以上使用している事業場は労働保険への加入が法律上義務付けられており、その要件に該当する事業場は労働保険の適用事業場となります。労働者数が5人未満の個人経営の農林水産の事業は、任意加入となっています。

従業員50人未満の要件

ストレスチェック助成金を受給するためには、申請事業場の従業員数が50人未満である必要があります。

従業員数には、継続して使用しているパートタイマーやアルバイト、日雇い労働者、派遣労働者の人数も含まれます。

従業員数が50人以上の場合

ストレスチェック助成金は事業場単位での申請となるため、常時使用している従業員数が50人以上である事業場は対象にはなりません。

ストレスチェック実施者の要件

ストレスチェック助成金を受給するためには、ストレスチェックの実施者があらかじめ決まっている必要があります。

ストレスチェックの実施者とは、医師、保健師、所定の研修を受けた看護師もしくは精神保健福祉士に限られています。

産業医の要件

ストレスチェック助成金を受給するためには、申請事業場と契約した産業医がストレスチェック活動に参加する必要があります。

【関連】産業医の選び方・契約の仕方、報酬の相場とは? / BizHint HR

実施後の面接指導者の要件

ストレスチェック助成金を受給するためには、申請企業の使用者や労働者以外の者がストレスチェック実施後の面接指導を行うことが必要です。

法律上ストレスチェック実施後の面接指導を行えるのは、医師、保健師、所定の研修を受けた看護師もしくは精神保健福祉士に限られています。それらの資格を有する人間が企業内にいた場合であっても、その者が直接面接指導を行った場合は、ストレスチェック助成金は受給できません。

ストレスチェック助成金の対象・金額

ストレスチェック助成金の対象には、「ストレスチェックを実施したことに対する助成」と「ストレスチェック実施後の面接指導などの医師による活動を受けたことに対する助成」の2つがあります。

それぞれの助成額には、上限が設定されています。上限額を下回る場合は、実費額が支給されます。

ストレスチェックを行った場合

年に1回のストレスチェックを実施した場合に、対象となった従業員に対して会社が負担した費用に関して、対象者一人当たり500円を上限とした助成が行われます。

なお、助成の対象となるのは、ストレスチェックの検査に直接かかった費用であり、結果を管理する目的でソフトウェアやシステムを購入した場合などの費用は助成の対象にはなりません。

ストレスチェック後の面接指導などの医師による活動を受けた場合

ストレスチェック実施後に行われる医師による活動において、ストレスチェックを実施した企業が費用を負担した場合、1事業場あたり1回につき21,500円を上限とした助成が行われます。「医師」とは、企業が契約している産業医資格を有する医師を指します。

ここでいう1回というのは、1日当たりの活動のことを意味しており、年間3回までが上限となっています。助成の対象となるのは、謝金の支払いとして負担した費用であり、交通費などの実費は助成の対象にはなりません。

なお、助成の対象となる医師による活動とは、以下の二つです。

  • ストレスチェックを受けた従業員に対して行う面接指導
  • 面接指導の結果に基づいた事業主への意見陳述

平成29年度の申請における注意点とは

ストレスチェック助成金を使いやすくするために、平成29年度申請分より、以下の内容が変更になりました。

  • 小規模事業場登録の届出について
  • 実施対象期間について
  • 申請期間について
  • 助成対象となる医師の活動について

【参考】ストレスチェック実施促進のための助成金の概要/平成28年度からの変更点

小規模事業場登録届出における変更

平成28年度の申請までは、ストレスチェックを実施する前に、前章「ストレスチェック助成金の要件」でご紹介した5つの要件を満たしていることを確認できる書類を提出する必要がありましたが、平成29年度の申請分からは必要なくなりました。

実施対象期間の変更

平成28年度の申請までは、前に解説した小規模事業場登録届を提出してから3か月以内に実施されたストレスチェックが助成の対象となっていましたが、平成29年度の申請分からは、当年の4月1日から翌年の3月31日までの年度単位での対象に変更となりました。

申請期間の変更

平成28年度の申請までは、申請期間が当年の4月15日から翌年の1月31日までの間でしたが、平成29年度の申請分からは、申請期間が当年の4月15日から翌年の6月30日までの間に延長されました。

これにより、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に実施されたストレスチェックに対して、平成29年4月15日から平成30年6月30日までの間に申請すればよいということになりました。

助成対象となる医師の活動における変更

平成28年度の申請までは、ストレスチェックを実施することに対する事業主への助言やストレスチェック結果の集団分析なども含めた幅広い医師の活動が助成の対象になっていましたが、平成29年度の申請分からは、ストレスチェック実施後の面接指導と面接指導結果に基づく事業主への意見陳述のみが助成の対象となりました。

助成金申請の流れ

ストレスチェック助成金が支給されるまでの流れは、以下の通りです。

【参考】ストレスチェック実施促進のための助成金の概要/手続きの流れ図

ストレスチェック実施における審議

ストレスチェックの実施方法などに関して、医師からの助言を受け、あるいは労使間での審議を行ったうえでルールを決定し、事前に従業員に対する説明や通達を行います。

ストレスチェックの実施

医師などのストレスチェック実施者が内容を確認した質問表を、ストレスチェックを受ける従業員に配布、あるいはITシステムによる検査などの方法で、ストレスチェックを実施します。その後、結果を実施後の事務従事者が集計し、集計された内容をストレスチェック実施者が分析したうえで、分析結果を、ストレスチェックを受けた従業員に対して個別に通知します。

なお、検査を受ける労働者に対して解雇や昇進、異動などに関する直接的な権限を持っている人間は、事務従事者になることができません。

面接指導の実施

ストレスチェック実施者が面接指導を行う必要があると判断した者に対しては、実施者から面接の通知を行います。対象の従業員が面接を希望した場合、事業者は希望者全員に面接指導を受ける機会を与えます。さらに、面接指導を行った結果、実施者からメンタルヘルス不調を防止するために業務の見直しや作業の軽減などの就業上の措置を行う必要があるという助言を受けた場合、助言された内容を遵守することが求められています。

支給申請

ストレスチェック実施後に「独立行政法人労働者健康安全機構」に対して、必要な書類を揃えたうえで助成金の受給申請を行います。申請は、ストレスチェックの実施後6カ月以内に行う必要があります。

なお、必要な書類の内容は、以下を参考にしてください。

【参考】ストレスチェック実施促進のための助成金の手引(平成29年度版)/2 ストレスチェック助成金支給申請)

助成金の支給

助成金の受給要件を満たしている場合は、労働者健康安全機構から申請者のもとに「助成金支給決定通知書」が送付され、申請者が指定した金融機関の口座へ助成金が振り込まれます。助成金の受給要件を満たしていなかった場合は、労働者健康安全機構から申請者のもとに「助成金不支給決定通知書」が送付されてきます。

職場環境改善計画助成金

ストレスチェックに関する助成金は他にもあります。

「職場環境改善計画助成金」は、ストレスチェック実施後に職場環境の改善に取り組んだ事業者に対して、費用の一部を負担する助成金制度です。職場環境改善計画助成金は、専門家の指導に基づいて職場環境改善を行った場合(Aコース)と、各都道府県に設置されている産業保健総合支援センターの指導に基づいて職場環境改善を行った場合(Bコース)の2種類の助成制度があります。

この助成金は、従業員数が50人以上の事業場も受給することができます。

職場環境改善計画助成金(Aコース)

ストレスチェック実施結果に基づく集団分析で明らかになったメンタルヘルスに関する傾向を踏まえて、事業主が専門家指導のもとで職場環境改善計画書を作成し、職場環境改善の実施に必要な費用を負担した場合に、助成を受けることができます。

職場環境改善計画助成金(Aコース)の要件

職場環境改善計画助成金(Aコース)は、以下の6つの要件を満たした事業場が受給することができます。

  • 労働保険の適用事業場である
  • ストレスチェック実施後に集団分析を実施している
  • 平成29年度以降、新たに専門家との間で職場環境改善計画の作成に関する指導契約を締結している
  • 契約した専門家から、集団分析の結果以外の職場環境に関係する情報も勘案した職場環境の評価を得たうえで指導を受けている
  • 契約した専門家の指導に基づいて職場環境改善計画を作成し、計画に基づいた職場環境の改善を実施している
  • 契約した専門家から、職場環境改善計画に基づいた職場環境の改善が実施されたことの確認を受けている

職場環境改善計画助成金(Aコース)の対象・金額

Aコースには2つの助成対象があります。それぞれ上限額が設定されており、上限額を下回る場合は、実費額が支給されます。

  1. 職場環境改善に係るコンサルタント費用に対する助成:上限10万円
  2. 職場環境改善に係る機器や設備の購入費用に対する助成:上限5万円

職場環境改善計画助成金(Aコース)の詳細は、以下のページにてご確認ください。

【参考】職場環境改善計画助成金(Aコース)の概要/手続きの流れ図

職場環境改善計画助成金(Bコース)

産業保健総合支援センターに所属するメンタルヘルス対策促進員の助言や指導を得ながら、ストレスチェック実施結果に基づく集団分析で明らかになったメンタルヘルスに関する傾向を踏まえた「職場環境改善計画書」を事業主が作成し、職場環境改善の実施に必要な機器や設備を購入した場合に、助成を受けることができます。

職場環境改善計画助成金(Bコース)の要件

職場環境改善計画助成金(Bコース)は、以下の5つの要件を満たした事業場の事業主が受給することができます。

  • 労働保険の適用事業場である
  • ストレスチェック実施後に集団分析を実施している
  • 平成29年度以降、新たに事業場を訪問したメンタルヘルス対策促進員から集団分析結果の見方や集団分析結果を踏まえた職場環境改善手法について助言や支援を受けている
  • 職場環境改善計画を作成し、計画に基づいた職場環境の改善を実施している
  • メンタルヘルス対策促進員から、職場環境改善計画に基づいた職場環境改善のための機器や設備が購入されたことの確認を受けている

職場環境改善計画助成金(Bコース)の対象・金額

職場環境改善計画に基づいて職場環境改善を実施するために、労務管理用の機器や設備などを購入した場合に、5万円を上限とした助成が行われます。助成の対象となるのは単価が5万円以下の機器や設備に限定され、単価が5万円以内であれば複数の機器や設備を対象とすることができますが、職場環境改善計画助成金(Aコース)と併せて将来にわたって1回限りしか助成を受けることができません。

職場環境改善計画助成金(Bコース)の詳細は、以下のページにてご確認ください。

【参考】職場環境改善計画助成金(Bコース)の概要/手続きの流れ図

まとめ

  • 近年、うつ病に代表されるメンタルヘルス不調に陥る労働者が急増していることが社会問題化している。
  • 常時使用している労働者数が50人以上の事業場は、年に1回以上従業員のストレスチェックを行うことが義務付けられている。
  • 労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を推進するために、法律上ストレスチェックの実施が義務付けられていない小規模事業場に対するストレスチェックの実施や実施後の面接指導を後押しする目的でのストレスチェック助成金が存在する。
  • ストレスチェック助成金は、平成29年度申請分からは、より使いやすくなるような変更がされている。
  • ストレスチェック実施後に職場環境の改善に取り組んだ事業者に対して、職場環境改善のためのコンサルタント費用や機器や設備の購入費用の一部を助成する職場環境改善計画助成金がある。

<執筆者>大庭真一郎 中小企業診断士・社会保険労務士(大庭経営労務相談所)

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