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連載:第57回 成長企業 社長が考えていること

“信念”を貫いてV字回復。リーダーがやってはいけないこと

BizHint 編集部 2024年5月14日(火)掲載
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コロナ禍で売上が半減する中、すべての取引先に「利益を返上」した企業があります。その背景には「道徳的資本主義の追求」という理念を掲げ、“逆境の時にこそ信念を貫く姿勢”にありました。結果、15億円にまで下落した売上を2年後には31億円とし、見事に過去最高売上を更新してのV字回復。コロナ禍の出来事をきっかけに、それまでバラバラだった組織に理念が浸透し、今では同じ方向を見据えて動ける組織に成長しつつあります。今回は、インプルーブ株式会社 代表取締役社長 尾張伸行さんに、大きな決断の根底にあった「やらないこと」。そして、「道徳」と「経営」の関係性について詳しくお聞きします。

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会社が掲げる企業理念。本当に実践できていますか?

――貴社は、企業理念に「道徳的資本主義の追求」を掲げていらっしゃいます。経営の中心に「道徳」を掲げられているのが印象的です。

尾張伸行さん(以下、尾張): そうですね。私は「人として」という部分をすごく大事にしたいと考えています。誰しも嫌な人間とは付き合いたくないですよね。これは会社間でも同じだと考えていて、 「良い企業」と付き合うためには、まず自分たちが「良い企業」にならなくてはいけない。 そのためには、経営者である私自身をはじめ、働いている社員も良い人間にならないといけない。そのために“人としての基本”である「道徳」を大事にしているんです。

現在の世の中は資本主義社会であり、資本主義の原理原則は「Give & Take」です。それに対し、道徳は「Giveオンリー」となります。しかし当然ながら「Give」だけでは会社として成り立ちません。ですが、資本主義も道徳も「初動がGive」という部分は共通しています。したがって、資本主義である「Give&Take」をしっかりと「Giveから始めること」で後から自然に返ってくる(Takeできる)、それが「道徳的資本主義」という考え方です。“相手の利益”を最優先に動くことで、最終的には自社の利益に繋がると信じています。

当社の企業理念を最も体現することになったのが、コロナ禍での一件でしょう。

――詳しく教えてください。

尾張: 当社は、工場・サービス業を中心とした人材派遣業を展開しています。2020年、新型コロナの感染拡大により、人材派遣業界はリーマン・ショック以来の大きな打撃を受けました。当社は創業より12期連続増収を記録していましたが、2020年度は初の減収となりました。前年対比では最大で売上49%減の月もあったほどです。

そんな中で当社が行った主な施策は2点。すべての取引先へ対し「利益の返上」を行ったこと。そして休業補償を行ったすべての取引先に対し、「国から支給された雇用調整助成金の大半を返上」しました。「利益の返上」は一般的な派遣会社の数ヶ月分の営業利益額に相当し、「助成金の返上」はその何倍もの金額となります。

――貴社も大幅に売上を下げていた時期。なぜ、あえてこのような施策を実行されたのでしょうか?

尾張: 理念として「道徳的資本主義の追求」を掲げているため、相手が困っているときこそ手を差し伸べなければ「嘘つき」になると思ったんです。企業理念は、どの会社も耳触りのいい言葉を掲げていますが、「それを本当に貫き実践していますか?」と疑問に思うことがあります。 会社の基軸である理念を貫き実践しなければ、世間やステークホルダーに嘘をついているのと同じ だと思っています。それでは良い会社とは言えませんよね。

当時、派遣会社は多くの派遣先(取引先)からの休業補償を受け取ることができ、さらに国からは雇用調整助成金を得られるという、いわば「二重取り」のような状況にありました。当社も苦しい状況にありましたが、取引先である派遣先企業は、受け入れ派遣社員分の雇用調整助成金を申請できず、当社以上の苦境に立たされていたんです。

「順境は友をつくり、逆境は友を試す」とあるように、人は、困ったときこそ本性が出るもの。こういうときこそ理念を貫き実践すべきだと思いました。もちろん、当社も売上が大幅に下がり、利益が出るか不安でしたが、それまでお世話になった取引先も困っている状況で自ら犠牲を払って血を流してでも、相手方を助けることこそが自分の求める信念であり、理念である「道徳的資本主義を追求」する姿勢であると決意しました。

結果的に、この一件で取引先との信頼関係を深めることができ、コロナ禍が明けたと同時に、ほぼすべてのお客様が段階的に戻ってきてくれました。さらに、新たな企業からもお声がけいただくことも増え、2020年度には15億円まで下落した売上も、2022年度には過去最高売上を更新し、売上31億円とV字回復を果たしました。ピンチはチャンス。苦境のときにこそリスクを負った決断と自己犠牲を通じ、信用を得て、結果それが売上という形で後から返ってくる。まさにこれが「道徳的資本主義の追求」であり、「Give&Take」をしっかりと「Giveから行った成果」だと思います。

とはいえ、全く無計画で行ったわけではないんですよ。当社の売上も大幅に減少しているときに、利益を返上する。それでも会社は大丈夫という勝算はありました。

――どういうことでしょうか?

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