連載:第56回 成長企業 社長が考えていること
「このままでは緩やかに死んでいく」茹でガエル組織を蘇らせた唯一の“指針”。社長の覚悟がV字回復の基盤に
3年間で営業利益7倍、平均年収24%アップと、驚異的な成長を遂げている日本コムシンク株式会社。しかし、同社代表である山里真元さんが入社した当時は、根拠のない目標のもと、完全に「受け身」に振り切った社員が言われたことをやるだけの組織…。徐々に人が減っていることにも気づいていないほど、まさに「茹でガエル」状態と語ります。しかし、現在は優秀な人材が集まり、離職率も業界では異例の2%台に。組織は大きな変化を遂げました。その根幹にあったものとは?詳しく伺います。
受け身体質の「茹でガエル組織」に大きな危機感
――貴社はここ3年で営業利益7倍、平均年収24%アップを実現されています。驚異的なスピードで改革を進められていますが、その背景には何があったのでしょうか?
山里真元さん(以下、山里): ありがとうございます。ただ、私が入社した2018年当時は、こんなことが実現できるなんて考えられないほどの組織でした。
当社はリーマン・ショックの影響で、2010年に創業以来初めての赤字を記録。そこで、経営の権限はすべて前社長に集約され、全社員の待遇を一律に引き下げるなど、とにかく数字的な観点での立て直しが図られていました。そこからなんとか復活できたものの、優秀な人材ほど辞めていってしまい、残された人で赤字にならないよう細々と仕事しているような状態で……。
入社してから驚いたことが2つあるんですよ。
ひとつは、「再生から成長へ」というスローガンが、10年間掲げ続けられていたこと。リーマン・ショックの危機から復活するためのものだったことは理解できます。ただ、再生はいつまで時間がかかるのか。再生を実現できたのであれば、次の挑戦のために新しいスローガンを掲げるべきです。でも、それがされていなかった。経営側も社員も違和感を覚えていなかった、もしくはそれを言い出せない状況だったということ。
そしてもうひとつ。私が2018年に入社する前、「社員数は200名だ」と聞いていたんです。ただ、実際に入社後に確認してみると169名しかいない。これは、時間をかけて少しずつ人がいなくなっていたから。経営陣もこれだけ人が少なくなっていることに気づいていなかったんです。短期間に退職者が続出すれば、緊急の課題として認識するでしょう。でも長い時間をかけて少しずつ人数が減っていたので、そこに対する危機感もなかったのだと思います。
当時の社員たちも、とにかく「受け身」でした。自発的に提案したり、アクションを起こしたりする人は、一人もいませんでした。とにかく言われた現場に行って、言われたことをやる。ただそれだけ。役員も、自分たちが「役員である」という自覚はなく、ただ現場の仕事をしているだけで……。
これらに気がついたとき、この会社は「茹でガエル」だと思いました。 すぐに死ぬのではなく、ゆっくりと時間をかけて、自分たちも気づかないうちに死んでいく のだと。
これは、会社の数字にも顕著に表れていました。売上は市場の波もあり増加していたものの、営業利益は年々減少傾向にありました。「このままでは、いけない」そう強く感じ、改革を決意。社長に就任した2020年から改革を推進し、冒頭で出てきた「3年で営業利益7倍」という結果に結びついています。
まだ道半ばではありますが、振り返ると、利益を生み出せる企業に変わっていった要因は 「組織に足りなかったもの」を与えられたから だと考えています。
――それは一体なんでしょうか?
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