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連載:第84回 成長企業 社長が考えていること

アメーバ経営で社員の意識が変わった。リーマンショックを乗り越えて稲盛経営者賞受賞に至る3年

BizHint 編集部 2024年3月22日(金)掲載
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1993年の創業以来、顧客満足度向上を第一に自動車開発やモノ作りの最前線で、技術を提供してきた原田車両設計株式会社。リーマンショックが起きる数年前。会社経営で悩みを抱えていたときに、偶然手にした稲盛和夫氏の著書。その言葉に触れて悩みが晴れた原田社長は、稲盛氏の思想を実践して組織作りをはじめ、それが大きなピンチを乗り越え、会社を躍進させるきっかけとなりました。

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原田車両設計株式会社
代表取締役 原田久光(はらだひさみつ)さん

1993年に原田車両設計を個人創業し、1998年に法人化。顧客満足度の向上を第一に掲げ、ハード・ソフト設計からモノ作りまでトータルな提案を実現する。2014年日経トップリーダーの「本当に稼げる中小企業ランキング」の運輸・サービス部門の第1位に選出されている。「つくれないものはない」がモットー。


悩みを一掃した『稲盛和夫の哲学』。その言葉の衝撃

――稲盛和夫さんとの出会いは、著書からのスタートだったとか?

原田久光さん(以下、原田): 20年くらい前でしょうか。当時私は自分の会社を経営することに、漠然とした不安を抱えていました。

というのも、2004年に取引先が合併した影響で弊社の請負単価が下がってしまいました。その影響で年間売上も落ち込んでしまい、会社の先行きに不安を感じていたのです。

不安を感じているときというのは良くないことばかり頭によぎるもので、「会社を存続させていくためにやりたくない仕事も引き受けざるを得ないかもしれない」「不正に近いことまで荷担させられるかもしれない。そういう事態になったらどうしよう」といったことを考えてしまっていました。

経営者としての経験が浅く、会社設立して初めてつまずいた出来事でしたので、特に不安が膨らんだのだと思います。

そんな不安を抱えながら、2005年に博多で弊社の会社説明会をした帰りのことです。駅ナカの書店で帰りに読む本を探していたときに『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』(PHP文庫)という本が目に入ってきまして。それが稲盛さんとの最初の出会いですね。

当時は、稲盛和夫という名経営者のお名前は存じていましたが、その考えや経営論については一切知りませんでした。ただ何気なく手に取ったのですが、

「正しい判断に基づいて経営をしているのなら、微塵も後ろめたさを持つ必要はない」「物事にはプラスとマイナスの面がある。起きてもいないマイナスに目を向けてはいけない。プラスの考えに目を向けよう」 という私の不安を見抜いたかのような一文に衝撃を受けました。

また、私は経営者として創業当時から「給与賞与の高い会社」「設備投資を惜しまない会社」「経営者が真面目に働く会社」「社員と経営者がつながっている会社」の4つが揃った会社を理想として、目指していました。ただ、当時の私はとにかく給与を上げたり、設備投資することしかできず、これでいいのだろうかという疑問を持っていました。

それを稲盛さんは著書の中で会社は 「全社員が物心両面の幸せになる場」 と一言で言い当てていた。その言葉に衝撃を受け、そこから稲盛さんの著書を読み込むようになりました。

――その後、2006年に稲盛さんの盛和塾に入られたんですね。そのきっかけは?

原田: 先述の出来事の直後、日本から何社かが集まり中国へ視察に行く機会があったのですが、偶然にもその経営者の中に「盛和塾」の塾生がいらっしゃいました。今考えると導かれていたんだなぁと思いますね。

その方と現地で意気投合し、後日、いただいた著書の中に盛和塾の案内が挟んでありました。それからは、月4、5回名古屋で開催される盛和塾の集まりには毎回出席しました。最初は敷居が高いと尻込みしていたのですが、中国、台湾で開催される塾長例会にも足を運ぶようになりました。

――盛和塾の塾生は皆非常に高いレベルを要求されると聞きました。

原田: ええ。私も何度も手厳しいアドバイスをいただきました。

塾生の中には、塾の先輩経営者から「何だ、この数字は!」とか、「ベンツを自慢してどうする」と言われた方もいるようです。清貧をよしとする気風があり、ボロボロの車に乗って塾会に来ていた方もいらっしゃいました。

実は私もこの話を聞いて、社用車を売り払って自家用車での通勤に代えています(笑)。

あとはソフトウェアの導入についてたしなめられたことがありました。我々が設計に使う「CAD」というソフトウェアがあるのですが、このソフトウェアなんと1アカウントあたり年間保守料が200万もかかるのです。そのアカウントが設計者分必要になるため、我々としては相当な出費になります。ただ、現在はアウトですが、当時は1アカウントで3人くらいで共用できるグレーな裏技を社員が見つけてしまい、さっそく私の正直さが試されました。

ただ、盛和塾の先輩に「原田さん、盛和塾に入ったのだからそれはやっては駄目。損得で判断するのはやめなさい」とたしなめられました。

それ以来、1人に1アカウントを用意しています。今では、CATIA39台、Solidworks10台と社員数100人の会社でこれだけの環境を整えている会社は少ないと思います。ただ、社内に十分にいきわたったことで新入社員が勉強のために触ったり、OJTで使い方を教えることができたりと、社員教育に貢献できていると思います。

――盛和塾での学びをどのように経営に生かされたのですか?

原田: 先ほどの社用車の件もそうですが、とにかくご指摘を受けたこと、アドバイスはその通りに実行しました。

また、社内向けの施策としては盛和塾入会後、塾長の「稲盛和夫の実学―経営と会計」(日本経済新聞出版)をテキストとして、幹部クラスの社員を数人集めて管理会計の仕組みなどをテーマに勉強会を開きました。

勉強会では、勘定科目や管理会計など、本に書かれている内容を読み合わせたり、それぞれの意見を述べたりして理解を深めることに力を入れていました。当初は「会計の勉強会はやめて欲しい」と泣きつく社員もいて、社長が妙なことを始めた。くらいにしか思われていなかったと思います。

ただ、学びの機会を全員に与えたいと考え、「京セラフィロソフィー」(サンマーク出版)をテキストに途中から幹部、課長、全社員とメンバーを増やして毎月一回の定例に変えました。

アメーバ経営でリーマンショックを乗り越える組織を作り上げた

――将来的には、アメーバ経営を導入しようと思われていたんですか?

原田: いえ。最初の2、3年は、とにかく稲盛さんの考えを吸収するのに精一杯。自分の勉強につきっきりでした。もちろん、アメーバ経営については盛和塾の先輩経営者も導入していたのでいつかは実現させたい目標の1つでした。

ですが、当時の社内では、「稲盛和夫の実学」を用いた勉強会もまだまだ理解されているとはいえず、アメーバ経営の導入はまだまだ先のことだなと思っていました。

そんなあるとき、私宛に営業の電話がかかってきたんです。

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